1話 「ガルド王国到着」
「いらっしゃーい、らっしゃーい」
「おっそこの別嬪な嬢ちゃん焼きたてホカホカのパンはいらんかい」
たくさんの人が行き交いそれだけでこの国がどれだけ活気があるのかが分かる。
「じょ、嬢ちゃん...」
「ハハハッ、シュヴァルツしょうがないよ」
ブランとシュヴァルツは焼きたてのパンのいい匂いがする屋台に寄ることにした。シュヴァルツは1つ小さなため息をはく。
「はぁ、おじさん小麦のパンを2つ下さい」
「おう!まいどまいどっ嬢ちゃん綺麗だから1つおまけしとくよ。いやぁ本当に別嬪だ...」
「あ、ありがとうございます」
「ハハハッ、シュヴァルツちゃんシュヴァルツちゃん」
顔が隠れるほどに深いローブを被ったブランは面白がって小さな声でシュヴァルツをからかう。
「ブラン様やめてください」
「ごめんごめんっ、フフッ、いやどこに行っても間違えられるなっと思ってね、つい」
「はいよー、2つで銀貨3枚1つはおまけな、それより嬢ちゃん知ってるかい」
「ありがとうございます。知ってるって何をですか?」
「この国ガドルにも近頃フリーデンスがやってくるそうだよ。いやぁこれでしばらくはガドルも安泰だなぁ」
「そ、そうですか。フ、フリーデンスですか」
パン屋のおじさんは、安泰安泰とつぶやく。
「そうさフリーデンスさあいつらはよく拠点を移動させるらしいな、そんでもってあいつらがいる国はその間土地が潤い植物が良く育つそうだ。不思議だろ」
「そ、そうですね...」
「それに魔物の被害も減るし他の国から争いをふっかけられねぇそうだ。最近では、女性が美しくなるってのも噂で聞くなぁ」
「そ、それはいいですね...」
「まっ嬢ちゃん達、いい時期にこの国に来たなっ楽しんでいきな」
「は、はい ありがとうございました」
シュヴァルツは少し疲れた表情で石造りの道を歩きだす。ブランはたくさん並んでいるレンガの建物を見ながらシュヴァルツの横を歩く。
「シュヴァルツ、もう僕たちの情報が出回っているね」
「はい、そうですね」
「みんなはいつ頃着くのかな?」
「予定では、2日後です」
ブランは澄み渡る青い空を見上げる。
「なるほどね、ありがとシュヴァルツ」
その間何をしようかなぁと思いながらブランはシュヴァルツの頭を撫でる。
「なっ!ブ、ブラン様あ、頭を撫でるのはちょ、ちょっと。う、嬉しくないこはないって言うか嬉しいですけど ぼ、ぼくはこれでも男なので、いやっでも撫でられたくないってわけではなくてですね、、、はっ、ぼくはなんて事を言ってるんだっいやでもそうでもなくて、、、
そ、それよりブラン様!」
可愛らしく少女いや少年は頬を染めながら話を切り出す。
「ん?なんだい?」
「まずは、今日の宿をとりましょう」
「そうだね、そうしようか。シュヴァルツ頼めるかな?」
「喜んで」
シュヴァルツは、ブランに頼まれると行き交う人々を一人一人見つめる。
「わかりましたよブラン様、この国で1番人気の宿が」
「そこに行こうか」
そこは、国の中心街の人で賑わう宿泊街にある。
カランカラ〜ン
「いらっしゃいませ。お客さんすみませんが今日はもう部屋が空いておりませんので食事しか利用できません」
カランカラ〜ン
「すみません、またお越し下さい」
また1人赤茶色レンガの大きな宿からでてくる。
その宿に向かって2人の人影が近づいてくる。
「ここがミリヤの宿ガルドで1番人気の宿です。ブラン様」
「ここかぁ、この辺じゃ1番大きな建物だね。入り口も装飾されてあって綺麗だ」
「そうですね、入ってみましょうか」
カランカラ〜ン
「いらっしゃいませ。すみませんがお客さん今日はもう部屋が空いておりません」
入ると14くらいだろうか人懐っこそうな少女が笑顔で迎えてくれた。
「やっぱり人気があるね〜、シュヴァルツどうする?」
「ブラン様少々お待ちください。きみ、この宿の主人を呼んでくれるかな」
部屋が空いてないと言われたのにシュヴァルツは動じず平然と言う。
「え、えーと、」
「はやくしてくれないかな」
少女は少し困った顔をするがシュヴァルツの剣幕に少し慌てながら
「は、はい分かりました。お、お父さーん」
すると、厨房だと思われるところから1人の、口元に円を描くような髭をつけた太り気味の男性がでてきてこちらを見る。
「い、いかがいたしましたか?うちのミリヤが何かしたのでしょうか?」
「この宿に泊まりたいんだけどいいかな?」
「え、えーと今日はもう部屋が空いてないのですみませんが、」
「嘘をつくな、どの宿にも必ず1つ空きを作るというルールが宿泊系クラン連合で決まっているじゃないか」
「そうですが、それはですね、世界ランキング1位のクランの方だけが、、え」
シュヴァルツはズボンのポケットから1枚の勲章を取り出すと店主に見せる。
「わかったかな、それで2泊したいんだけど」
「は、はははい!すぐにお部屋の方に案内させて頂きます。ほらミリヤあの部屋に案内するんだ」
店主はそれを見るや慌てて娘に案内をさせる。
「こ、こちらです!」
みんなが来るまであまり目立つ行動はしたくないんだけどなぁと思いながら少女の後ろについて行くブランであった。