感謝
無理な事だって分かってるんだ。
だって、向こうに相手がいる事くらい知ってるんだから。
俺はジョッキを傾け、口を尖らせた。
彼女は頭が良くて話が上手で、笑顔が可愛い。まさにうちの部署ではマドンナだ。
そんな彼女に彼氏がいる事を知らない人なんて、いない。
それでも何度も目が合う度、何度も笑い合う度、意識してしまうのはどうしてだろう。なんて俺は愚かなんだろう。彼女の結婚の話題がいつ出るか怯えたり、いやいやもうすぐ別れるんじゃないかって期待したり、なんて俺は馬鹿なんだろう。彼女は誰にでも優しいのに、俺だけ特別優しいような気がしたり、一体何を期待してるのだろう。
それでも、これだけは言える。
確かに彼女が別れればいいなんて、自己中心的な考えしかできないけど、でも、それでも、今の俺をこんなにも喜ばせて、笑顔にしてくれるあなたに俺は感謝しています。