表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

フレ

作者: 片生真陸

 私法律家を生業としてまして、法律相談事務所なるものをやっております。

依頼内容は概ね離婚訴訟の相談、慰謝料請求等が殆どであります。

まあ大体どれも似たようなものでして、誰がどの案件だったかとかあまり記憶に残らないものなんですが、こないだ受けた件はかなり変わった内容でした。


 岩井紗季子(29)。とある上場企業の社長秘書を務める、まさに才色兼備な方でした。

相談内容は、お付き合いされてる彼氏に女の影がちらつくとか。

しかし、別れる気は毛頭無いとの事で、本当に他に女がいるのならどうにか別れさせて、彼に二度と近づかないよう法的処置をしてほしいというものでした。


 まあ仕事柄、案件内容の真偽を確かめるため、探偵まがいの事はよくしているので、裏を取る事はできますが、本当に他の女性がいたとして、その女性と彼氏を法的に引き離すことは難しいだろうと、そういうお話しをさせていただきました。

 例えば、彼自身がもう二度とその女とは会わないと言っているにも関わらず、その女が一般常識から極端に外れる程のストーカー行為をし続けたのであれば、それは法的な処置を取る事はできますがねと。

 とにかく彼にあなたの想いを伝えて、どうするつもりなのかを問いただすのが先だとお話ししたところ、彼女はこの件が決着するまで彼には会いたくないと、なので私一人で行って話をつけてほしいとの事でした。


 そこで私はほぼ一か月間彼の身辺調査をし、そして彼と会う事となったのです。


渡航司(21)某有名大学理工学部の3年生。なんとあの女、年下のしかも学生と付き合っていたのです!本当はあの女の方が悪いんじゃないのかと、初めは少しディスってみましたが、すぐに反省して調査を進めてきました。


 大学近くのアパート暮らし。1DKの彼の部屋は物は殆どなく男の一人暮らしにしてはかなり小ぎれいな部屋でした。

 こういう話しはあまり他人に聞かれたくはないでしょうから、話し合いの場は彼の部屋にしたのです。

 私の事務所というパターンもありますが、それでは彼が警戒をしてしまい、あまり有意義な話し合いが出来ないのです。アウェーですから。だから彼のまさにホームで話し合った方がこちらとしても相手の本心を引き出しやすいんで良いわけです。


 「三原愛香(19)。この子知ってるよね。」

 「ああ・・はい。」

 「同じサークルの。」

 「・・はい。」

 「どういう関係?」

 「ん?・・・後輩ですけど・・・」

 「それだけ?」

 「なんなんです!?」

 「一昨日の午後11時頃、この子この部屋に入れたでしょ。二人きりで何をしてたの?」

 「見てたんですか・・・?」

 「依頼なんでね。張り込ませてもらったよ。」

 「そんな事が許されるんですか!?」

 「まあまあ、君にやましい事がなければ別に問題ないじゃないの。それで紗季子さんが納得すれば君にとっても良いわけでしょ?で、何をしてたの?」

 「・・・話してただけです・・・」

 「ずっと?」

 「飲み会の帰りだったんで、うちにあったお菓子とかジュースとか飲んだりしながら・・・酔いを醒ます為に・・・」

 「朝の8時まで?」

 「・・・・・」

 「さっきも言ったけど張り込んでるんでね、そこはわかってるんだよ。で、どうなの?」

 「・・・寝ましたよ・・・」

 「二人とも?」

 「ええ。」

 「この部屋で?」

 「ええ。」

 「別々の布団で?」

 「いえ、うちには布団は1つしかないんで。」

 「じゃあ、君は布団無しで寝たんだ?」

 「いえ、一緒の布団で。」

 「ほお~、認めたね。浮気してた事を。」

 「浮気なんてそんな・・!!」

 「誰だってそう言うんだよねぇ~一夜の過ちだとか言って。でも君、これ初めてじゃないでしょ。毎週2回、火金で朝まで泊まっているよね彼女。」

 「んん・・・大体・・そうかも・・・」

 「ほら浮気じゃない!」

 「浮気じゃないですって!!」

 「紗季子さんというものがありながら他の女性と定期的に不貞行為を働けば、それは立派な浮気でしょ!!」

 「だから、不貞行為なんてしてませんて。」

 「そんな言い訳通用しないよ。じゃあ何か?君は女性と一緒の布団で寝ておきながら、彼女には何もしてないっていうのかい?」

 「はい。」

 「朝まで?」

 「はい。」

 「だから、そんな言い訳通用しないって・・・」

 「ソフレなんで。」

 「!!?ソ・フレ??」

 「添い寝フレンド。知りませんか?ググればわかりますよ。携帯持ってますよね?」

馬鹿にすんな!!と怒るのをグッと抑えてググって見れば、出ましたソフレ!出てくる出てくる!!


 ソフレ=添い寝フレンド。異性同士が一緒の布団で寝るが、SEXまではしない。ただ一緒に寝るだけ。お互いに彼氏彼女がいるケースが多い。とか!今まで何人ものソフレがいたという男の体験談まで出てきた!!なんてこった!!!


 「・・・本当に何もしてないの?・・」

 「はい。」

 「本当に・・!?」

 「はい。」

 「・・・指一本・・その・・・相手の・・体に・・・直接・・ていうか・・・そのお・・・・」

 「いやらしいですねぇ、言い方。」

 「!!!・・・じゃあ、何で紗季子さんに言わないんだ!やましくないんだったら・・言えばいいじゃないか!!!」

 「子供みたいですね。だって言うと怒るじゃないですか?だから言わなかったんですよ。」

 「!!!ほら見ろ!!!そうだ、そりゃそうだ!!やっぱり問題じゃないか!!!」

 「でも浮気をしてるつもりはないですよ。どっちかっていうと、そこはしっかり守ってるつもりです。だって、僕にとって紗季子はとても重要な役割を担っている人なんですから!」

 「担っているって?!・・そんな言い方・・・じゃあ、何でこんな事をしてるんだ!?」

 「だって、彼女に毎日会える訳じゃないじゃないですか。彼女忙しいし。僕としては毎日紗季子とそういう事ができればソフレなんていらないんですよ。でも、現実そうはいかない。だから、その空いた心を埋める為にソフレが必要だった訳です。わかりましたか?」


 私は頭がグルグルしてきました。齢36になって、でも気持ちとしてはまだまだ若いつもりでいて、どちらかと言えば今の若い奴の考え方にはついていけてるつもりでした。しかし、今の話しにはちっとも現実感がわかない。だって、一緒の布団に寝て何にもしてないなんて、考えられないんですもん!!!


 でも、色んな立場の色んな人の相談を受ける仕事をしてる以上、簡単に相手の言っている事を否定してはいけない!という思いにもかられ、とりあえずでも納得しなきゃいけないんじゃないのかと。そういう気になりかけた時、私はある事を思い出したのです。一枚の写真です。


 「!!!!」

 私は携帯のカメラで撮った画像を彼に見せました。

そこに写っているのは、夜の繁華街で髪の長いスレンダーな女性とキスをしている彼の姿です。


 「相川麗佳(25)君のアルバイト先で一緒に働いているんだよね。この写真はちょうど一か月前・・正確に言えば32日前かな?私がちょうど紗季子さんからこの依頼を受けて調べ始めた時だったかなあ。だから最初、この子が紗季子さんが心配している浮気相手かと思ったんだけどね。この後このまま別れたし、これ以降は会ってないみたいだったんで候補から外してたんだけど。で、どうなの?本当の浮気相手は実はこの子なんじゃないの!?」


 「ああ・・・確かにこれは痛いですね・・・」

 「じゃあ認めるんだね、浮気を!!」

 「いいえ、浮気じゃありません。」

 「しかし、こうして写真もあるわけだし。してることしちゃってるじゃない!・・・」

 「キスだけですよ。」

 「!!キスだけって!!そこまでする仲って事はそれ相応の・・・」

 「彼女はキスフレなんです。」

 !!!!!!なあにいぃぃぃぃーーーー!!!!!???

 「キスまでしかしない。それ以上はしない友達なんです。だから、浮気じゃありません。」


 何だ!?何だ!!?何なんだ!!???

ググってみればたくさん出てくる!!キスフレンド!!!しかも、ソフレよりもこっちの方が先だったみたい!!

あああ!!もおおお!!!どうなってんだ!!?現代の世の中って!!!????


 しかし、私はすぐに強引に気持ちを切り替えました。

この感情は私の個人的な感情であって、これは他人の問題。本来この件を話し合うのは当事者同士であって、だから私の考えなどどうでもいいのです。なので私は速やかに次の段階に入りました。


 「・・・とにかく紗季子さんは、あなたが他の女性と付き合っている事を快く思っていません。どうです?その女性達と別れる気はありませんか?」

 「友達付き合いがいけないんでしょうか?」

 「友達って!!あんたねぇ!!!!」


 これ以上話してもらちがあかないと思い、紗季子さんと話し合う日を作り、今回の事をあなたの口からちゃんと説明しようと、私も立ち会いますからと、そういう話しをしました。

それで紗季子さんがどう判断するのかという事です。まあ、慰謝料請求まではいかないでしょうが、最悪なパターンもあり得るとは思いますが。


 「・・・・はあ・・そうですか・・・・・・・・・・」

さすがに青い顔をしだした彼。まあ、そうでしょう。

でも、そんな彼を見てたら少しだけ同情心がわいてきまして、だから気を軽くしてやろうと思って言ったんです。


 「しかし、羨ましいですね。私なんて、ソフレやキスフレなんてどんなに頑張っても出来やしない。もしかして、セフレもいたりして。」

 「ええ、いますよ。」

 「!!!!!!!!!イヤイヤイヤ!!!!!!!それはダメでしょ!!!!!セフレって!!!!問題ですよ!!!!大問題!!!!!SEXフレンドでしょ!!!!いくらフレンドったって、それが事実だったら場合によっちゃあ慰謝料請求だってあり得ますよ!!!!!」

 「問題じゃあないですよ。」

 「何をいってるんだ!!!いくら世の中が変わったって、最後までやっちゃったらダメでしょう!!!!」

 「だから、問題ではないですって。」

 「だから、そんな言い訳をしたって・・・・」

 「だって、セフレは紗季子ですから。」


おしまい。


 

 

はじめて小説なるものを書いてみました。星新一的なものを目指してみましたが、まあこんなものです。(苦笑)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ