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『アテンション!』(※注意:アリア達の世界では)

台本風。

ア=「アリア」

ク=「クイド」

ヴ=「ヴェン」

カ=「カイル」

シ=「シスター」  です。






ーーーこれは、時守の森のある日の出来事。



ーーシーン 1ーー


ア「クイドさーん!」

ク「ん?どうした、嬢ちゃん」


 パタパタと音をたてながら、廊下の向こう側から向かってくるアリアに気付いたクイドは、その場で足を止めた。


ア「これ、差し入れです」


 クイドの元にたどり着いたアリアがクイドに差し出したのは、小袋に入れられた、綺麗な形をしたマドレーヌ。


ク「マドレーヌ…?」

ア「はい!シスター特製のマドレーヌです」


 とっても美味しいんですよ!と笑うアリアに、そりゃあ良い、と返したクイドは、ところで、と言葉を続ける。


ク「……なんで小袋が3つ…?」

ア「申し訳ないんですけど…。ヴェンさんとカイルさんに、これを届けてくれませんか?」


 申し訳なさそうに言うアリアの様子に笑みをこぼしたクイドは快諾し、冗談めかして言葉を続けた。


ク「しっかし、旨そうなマドレーヌだなぁ。いっそ、あいつらに渡さずに俺が全部食おうか…」

ア「!…“attention”!」

ク「ぐふっ!?」


 突然、クイドの鳩尾に肘うちしたアリア。

突然のことに避けきれなかったクイドは、まともに肘うちを喰らって息を詰まらせた。


ク「けほっ……。嬢ちゃん…?何だ、それ…?」

ア「もう。ちゃんと、ヴェンさん達に渡してくださいね。

 ーーあと、“attention”は外大陸(とおいくに)の言葉で、“覚悟しろ”っていう意味らしいですよ?」

(※注意:違います。)

ク「あぁ、ちゃんと渡す。

  ーーへぇ…。そんな言葉が…」

ア「では、私はこれで」

ク「あぁ。ありがとな、嬢ちゃん」



ーーシーン 2ーー


ク「ヴェン!」

ヴ「…クイドか。何の用だ」

ク「嬢ちゃんから、差し入れだ」


 クイドから渡された小袋に入っているマドレーヌ。

実は甘党のヴェンは、僅かに頬を緩めた。


ヴ「…感謝する。だが…何故、2袋…?」

ク「悪ぃが、カイルに渡してもらってもいいか?俺はちょっと湿布を探さないといけなくなってな……」


 ヴェンの問いに苦笑したクイドは、右手で鳩尾辺りを撫でながら答えた。


ヴ「…湿布……?」

ク「あー…。嬢ちゃんが、“attention!”って、こう、鳩尾に肘をガツンと、な…」


 首をかしげたヴェンに、遠い目をしたクイドが、事情を話す。


ヴ「…“attention”?」

ク「外大陸の言葉で、“覚悟しろ”だと」

(※注意:違います)

ヴ「……へぇ」


 考え込み始めたヴェンに気付かないクイドは、じゃあな、とその場を離れていった。


 残されたのはーー


ヴ「…“attention(かくごしろ)”、か……」


 不穏な空気を漂わせるヴェンだけだった…。

そのことに気付く者は、居なかった……



ーー悲劇(笑)まで、あと   ーー



ーーシーン 3ーー


ヴ「…カイル」

カ「ん?ヴェン、なんだ?」


 鳩尾辺りを庇いながら歩くクイドと別れたヴェンは、カイルの姿を見つけて声をかけた。


ヴ「…お嬢からの差し入れだ」

カ「お、美味そう!」


 カイルに差し出した、マドレーヌの入った小袋。

カイルは目を輝かせた。


カ「ん!いい匂い!シスターが作ったのか…?」

ヴ「…!カイル、それは俺の……!」


 目にも止まらぬ速さでヴェンから小袋を受け取ったカイルは、袋を開けて香りをかいだ。

 そして、ヴェンが自分の分の袋まで、カイルの手元にあると気付いた時には、カイルはもうマドレーヌを食べる寸前だった。


カ「いっただきまーす!」

ヴ「……ッ!」


 俺の分のマドレーヌまで、カイルに喰われる。

そう思ったヴェンに、悪魔は嗤っ(ささやい)た。


ーー『“    ”』


ヴ「…!」


 一瞬躊躇ったヴェンだが、カイルに食べられそうなマドレーヌを見て、覚悟を決めた。


ヴ「…ッ、『“attention(覚悟しろ!)”』!」

カ「ぐほぁああ!?」


 ヴェンの強烈な肘うちが、綺麗にカイル(の鳩尾)に決まった。

吹っ飛んでいったカイルの姿に冷めた目線を送るヴェン。

その目は絶対零度で、何の感情も浮かんでいなかった。


カ「っ、痛ってぇ…。何すんだ、よ……ヴェ、ン…?」

ヴ「ーーカイル、覚えておけ」

カ「ひっ。ど、どうした!ヴェン」


 文句を言おうとしてヴェンの顔を見てしまったカイル。

カイルは、ヴェンの声の低さと、尋常じゃないヴェンの様子に、ひきつった声を出した。


ーーそして、カイルは後悔した。

ヴェンの目には一切の光がなく、ハイライトを失っていた。

ニヤリ、と嗤ったヴェンは、カイルに視線を向けた。


ヴ「ーー食い物のうらみは、恐ろしいぞ」

カ「は、はいぃ…!すいませんでしたぁ!」


ア「

    ☆お・わ・り☆

                」


カ「いやいやいや、アリアちゃん!?」

ヴ「…“attention”!」

カ「がはっ……!?」


ヴ「…………(満足)」

ア「あ、ヴェンさん。“attention”、気に入った?」

ヴ「…あぁ」

カ「アリアちゃん、どういう意味!?」

「「…煩い(ですよ)、カイル(さん)。

  “attention”!」」

カ「ぐあぁあ!?」


ク「…………。俺は何も見ていない。俺は何も見ていない。俺は何も……」



シ「…………。この状況は、一体…?」


愉しむアリア&ヴェン、叫ぶカイル、現実逃避を続けるクイドの様子に、マドレーヌの感想を聞きにきたシスターは困惑したとか。


因みに。

『“attention”』=『注目』

       が正しい答えです。

そこ!間違えないように。テストに出ます。(多分)

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