8 マルコメ太郎
「M先生へ
フィギュア集めが趣味のマルコメ太郎です。最近等身大のものすごく可愛い女の子のフィギュアを手に入れてほくほくです。あ、原作はアニメなのですが(以下便箋十枚ほどその女の子についての説明)……という感じです。
今ギリギリ三十代ですが、年齢=彼女いない歴です。
最近自分は一生独身で生きていくのかと思うと、いてもたってもいられません。でも見知らぬ女の子と仲良く出来る気はしないし、職場の女は大体彼氏持ちか、顔がタイプではないんです。
毎日美少女を愛でながらこれでいいのかと自問しました。
『どんな悩みでも解決する』と書いてあったので、無理だと思うのですがお願いします。
ミチヨ(仮名:等身大フィギュア)を人間にしてくれませんか!?
彼女となら結婚できる、というかしたい! ミチヨは俺の嫁!
どうかお願いします!
マルコメ太郎」
* * * * * * * * * *
「マルコメ太郎くん、こんばんは! M先生も彼女いない歴=年齢だよ! もう千年単位だけどね! AHAHA!
マルコメ太郎くんの気持ちは良く分かるよ。M先生も流行にのって『ミドリは俺の嫁!』って言ったら部下にマジギレされたよ、冗談なのに!
ところでマルコメ太郎くんのミチヨちゃんを人間に……! それは確かに難しいね、具体的に難しい処を説明すると人間じゃなくて魔人だったら出来るんだけどそれでもいいかな? いいよね? うん良かった、ありがとう! 返事は聞こえてないけどM先生の魂にOKの返事が届いたよ!
君の望みは明日、クリスマスイブの夜に叶うよ。
そんな訳でM先生からのプレゼント、楽しみにしていてね!
やばい、こんな時期に大活躍したら、M先生サンタクロースって呼ばれちゃうかも!」
マルコメ太郎より「女は二次元か、喋らないに限るということがよく分かりました。現実的な夢をありがとうございました……」
「ミドリ」
魔王は彼女に髪の毛を一本手渡した。あまり長くない黒髪はおそらく魔王のものではない。部下のミドリのものだった。
怪訝そうな顔で見上げてくる部下に、魔王は慈愛に満ちた笑顔を向けた。
「ミドリの魂をコピーして嫁にやったら返品された。やはり女子力が足りぬのだな、ミドリには」
「……」
三日後、部下が「実家に帰らせて頂きます」という書き置きと共に姿を消した。
魔王は東京銘菓と書かれた手土産を手に、謝りにいくことになるのであった。