3 サッカー少年
「M先生
僕は中学3年生の男です。最近ずっと悩んでいます。
小学校の頃からサッカーをやっていて、毎日2時間、今は3時間練習をしています。
部活もサッカー部に入りました。
中学校1年生の時に友達になったYが一緒の部活やジュニアクラブにも入ってくれて、毎日の練習も付き合ってくれています。すごく良い奴で、感謝しています。
Yは勉強も運動もできるので、僕と練習しているうちにすぐにサッカーも上達しました。僕の方がずっと前からやっているのに、今じゃ同じくらいのレベルです。
先週、ジュニアクラブで試合のメンバーが発表されたのですが、僕はスタメンに入れませんでした。すごくショックでした。なによりショックなのが、僕じゃなくYがスタメンに選ばれたことです。
どうしても納得できないし、悔しくてたまりません。
僕はどうしてもスタメンで出たいです。M先生、僕の悩みをどうにかしてください!
サッカー少年より」
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「 サッカー少年くんへ
やあやあ、今日もサッカーを頑張ってきたかな? もちろんM先生は君の味方だ。
悔しいだろう、悲しいだろう。
小学校から今の今まで頑張ってきたというのに、そんな大事なレギュラーの座を親友くんに取られるとは! 腸煮えくりかえってもおかしくないね!
そんな君にはこれを同封しよう!
魔界画鋲虫だ。これを君の親友……いやもう親友でもないね、Yくんの靴の中に入れたまえ!
この画鋲虫はすごいぞ。こんな一円玉サイズなのにYくんが靴に足を入れる。するとすぐさまぱっくりと口を開けて足を噛みちぎるんだ。
もちろん噛みちぎるから足は無くなる。Yくんはこれから一生車椅子の生活になるし、もちろん二度と君のレギュラーの座は奪われない。
Yくんの抜けた穴を君が埋め、悩み解決! 君はスタメンだ! やったね!
ちょっと思ったんだけど、スタメンとイケメンって似てるよね!
M先生より」
サッカー少年より「M先生、画鋲虫は使いませんでした。返送します。Yのその後を想像したら、どうせ嘘だろうと思っても靴に入れられませんでした。人を嫉んじゃいけないって教えようとしてくれたんですね。ありがとうございます」
「おい、部下ミドリ。ちょっとこの靴に足を突っ込んでみろ」
暇そうに外を見ていた娘は、魔王の差し出した靴を見ると顔を顰めた。
「足食われるじゃないですか、魔王様。暇だからって悪戯はやめてください」
「俺は暇ではないぞ。色々な相談にのっていて、大変忙しい!」
「はいはい」