身勝手な甘さ
絶えず心を覆い尽くしている黒い感情。
一生背負っていくべき罪は、俺一人で抱えるべきもので、彼女にはなんの罪もないのに。
どうして、どうしてその体を傷つけなければならないほどの悲しみを背負わせてしまったんだろう。
俺しかいなかった彼女なのに。
どんな男が言い寄ってきても、気持ちを揺らす事なく愛情全てを俺に注いでくれていた彼女なのに。
結局、俺が彼女を裏切ってしまった。
言い訳にならない言い訳を探して、彼女を手放した事の正当性を自分自身に認めさせようとしたけれど。
何をどうあがいても、俺が招いた悲しみの未来。
彼女は体に大きな傷を負い、心には回復できないくらいの重荷を背負う事になった。
その原因は全て俺の身勝手な思いだ。
若さゆえだなんて言い訳、通じるわけもなく、周囲の喧騒から逃げたかったからなんて、ずるい理由は、彼女の命と引き換えにしていいものなんかじゃ、決してなくて。
俺の身勝手な行動が、生み出したものは。
彼女の生への執着からの離脱。つまり命を絶つ事。
そして、俺から永遠に消えてしまう事。
そんなの、許さない、そう思う事も、俺の身勝手な思い。
二度と会わずにいる事が、最大の思いやり。
そうわかっていても、彼女の体温を感じたくてたまらなかった。
彼女が生きていると感じたかった。
無理矢理抱いて、無理矢理側にいて。
彼女の気持ちも何もかもを無視して。
そして、再び彼女が帰ってきてくれた幸せを、俺は生涯感じながら生きていく。
今、俺の腕に包まれて眠る彼女の吐息や温かさを大切にしながら、こうして愛してくれる幸せに感謝しながら。
『愛してるよ、一生、大切にする……俺の奥さん』
毎晩呟いている。




