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『たこ焼き買いに行ったら世界が平和になっていた件』

作者: achi-omoikane
掲載日:2026/07/13


「おっとっと、って。 え?」

 道で石につまずいた瞬間、視界が白くなった。



「おー! 勇者召喚成功だ!」


 ふと見渡せば、テレビで見たことある、いい感じのお城らしき室内。

しかし、完全武装の、なんともヤバげなお方たちに囲まれている。

その中の一人、尖った赤髪の男が俺を見てニヤついていた。


「よぉ、新入りちゃん、これでたこ焼き買ってこい」


 渡されたのは、どう見てもたこ焼きの値段に足りないであろう小銭、いや金属片?


「え、これじゃ買えないんじゃ……」


「勇者なら気合でなんとかしろ! 修業だよ修業!」


 なるほど、気合でどうにかなる異世界らしい。

 とりあえず、北の街に屋台があるらしいので行ってみるか。



 歩いていると、黒い霧が広がっていた。


「お、いい感じの煙? 焦げてる?

 まあ、これは屋台が近いな。たこ焼きたこ焼きィ!」


 けっこう煙かったので、手で払ったら、霧が悲鳴を上げて消えた。

 近くの魔物?が震えている。

 たこ焼き屋か?


「ひ、人間が結界を素手で破壊した……!」


「え、結界? 結界張るほどの人気店なのかぁ! そりゃ、楽しみだ!」


 魔物?は土下座して逃げていった。

「え? 店は? 結界やぶりは迷惑行為だったかな」

 なんか申し訳ない。



 さらに進むと、巨大な黒い城があった。


「え、あれがたこ焼き屋? すげー、どんな利益率なの?」


 たこ焼き屋の門をノックしたら、門が粉々になった。


「あ! え? ご、ごめん! 壊すつもりじゃなくて!

 これはまずい! 出禁になってしまう」


 中から巨大タコが飛び出してきた。


「なんと! たこ焼き屋から、タコが逃げだしたのか!」


「貴様ぁぁぁぁあああ!」


 タコが触手を震わせて叫んだ。


「人間が……たこ焼きを買いに来た……!

 それは我らタコ魔獣族への最大の宣戦布告ッ!!」


「え? え? やっぱり出禁ですか? ごめんなさい。

 壊すつもりなんかなかったんです」


「黙れぇぇ!

 我らの同族をぶつ切りにし、焼き、丸め、ソースをかけ、熱々のまま食うなどと……

 我を討伐しに来たということだなっ!!」


「いや、討伐という表現は……、どうなんでしょうね」


 タコは勝手に興奮し、触手を振り回し、

 城壁を破壊し、暴れまわっている。


「ちょっと、落ち着こうよ、ね」


 ちょっと肩?を叩いたら、タコはひしゃげて半分、地面にめり込んだ。


「ぐはぁ……。魔王である我を倒すとはぁ。

 人間よ……世界の半分をくれてやろう……」


「え、世界?

 いや、たこ焼きを買って帰らないと、いかれた先輩らしき奴がめんどうで……」


 タコ(魔王)は震えた。


「まだ……たこ焼きを買うというのか……

 なんという冷酷非情……

 せ、世界は……お前のものだ……」


 光の粒子になって、虚空に消えた。


 代わりに、光の中から、えらそうなやつが現れた。


「ちょっと! あんた、魔王を倒したの?

 何が望み? わたくし、女神なんですけど!

 あんた、召喚の時、素通りしたでしょう!

 挨拶なしなんて、もう!」


「いや、ほんとに、たこ焼きが、たこ焼きで……」


「はぁ、あんた、ぶぁかなの? もういい。

 この世界の管理権あげるから、たこ焼きでも何でも好きにして!」


「え、そんな雑な……」



 結局、北の街の屋台で、なんとか値切ってたこ焼きを買った。

 熱々でおいしそうだ。正直、食べたい。腹が減っている!


 我慢して、城に戻ると、人々が跪いていた。

「おお、勇者よ! 魔王討伐ありがとうございます!」


「え、俺、たのまれてたこ焼き買ってきただけなんですけど……」



 尖った赤髪が、たこ焼きを受け取りながら言った。

「おっせえんだよ! たこ焼きが冷めてたら、おめえも凍らすとこだったぞ!」


「いや、あの、いろいろありまして……」


 俺が、たこ焼きを買いに行ってた間に、世界が救われたらしい。

 なんかもう、いろいろよくわからない。




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