『たこ焼き買いに行ったら世界が平和になっていた件』
「おっとっと、って。 え?」
道で石につまずいた瞬間、視界が白くなった。
「おー! 勇者召喚成功だ!」
ふと見渡せば、テレビで見たことある、いい感じのお城らしき室内。
しかし、完全武装の、なんともヤバげなお方たちに囲まれている。
その中の一人、尖った赤髪の男が俺を見てニヤついていた。
「よぉ、新入りちゃん、これでたこ焼き買ってこい」
渡されたのは、どう見てもたこ焼きの値段に足りないであろう小銭、いや金属片?
「え、これじゃ買えないんじゃ……」
「勇者なら気合でなんとかしろ! 修業だよ修業!」
なるほど、気合でどうにかなる異世界らしい。
とりあえず、北の街に屋台があるらしいので行ってみるか。
歩いていると、黒い霧が広がっていた。
「お、いい感じの煙? 焦げてる?
まあ、これは屋台が近いな。たこ焼きたこ焼きィ!」
けっこう煙かったので、手で払ったら、霧が悲鳴を上げて消えた。
近くの魔物?が震えている。
たこ焼き屋か?
「ひ、人間が結界を素手で破壊した……!」
「え、結界? 結界張るほどの人気店なのかぁ! そりゃ、楽しみだ!」
魔物?は土下座して逃げていった。
「え? 店は? 結界やぶりは迷惑行為だったかな」
なんか申し訳ない。
さらに進むと、巨大な黒い城があった。
「え、あれがたこ焼き屋? すげー、どんな利益率なの?」
たこ焼き屋の門をノックしたら、門が粉々になった。
「あ! え? ご、ごめん! 壊すつもりじゃなくて!
これはまずい! 出禁になってしまう」
中から巨大タコが飛び出してきた。
「なんと! たこ焼き屋から、タコが逃げだしたのか!」
「貴様ぁぁぁぁあああ!」
タコが触手を震わせて叫んだ。
「人間が……たこ焼きを買いに来た……!
それは我らタコ魔獣族への最大の宣戦布告ッ!!」
「え? え? やっぱり出禁ですか? ごめんなさい。
壊すつもりなんかなかったんです」
「黙れぇぇ!
我らの同族をぶつ切りにし、焼き、丸め、ソースをかけ、熱々のまま食うなどと……
我を討伐しに来たということだなっ!!」
「いや、討伐という表現は……、どうなんでしょうね」
タコは勝手に興奮し、触手を振り回し、
城壁を破壊し、暴れまわっている。
「ちょっと、落ち着こうよ、ね」
ちょっと肩?を叩いたら、タコはひしゃげて半分、地面にめり込んだ。
「ぐはぁ……。魔王である我を倒すとはぁ。
人間よ……世界の半分をくれてやろう……」
「え、世界?
いや、たこ焼きを買って帰らないと、いかれた先輩らしき奴がめんどうで……」
タコ(魔王)は震えた。
「まだ……たこ焼きを買うというのか……
なんという冷酷非情……
せ、世界は……お前のものだ……」
光の粒子になって、虚空に消えた。
代わりに、光の中から、えらそうなやつが現れた。
「ちょっと! あんた、魔王を倒したの?
何が望み? わたくし、女神なんですけど!
あんた、召喚の時、素通りしたでしょう!
挨拶なしなんて、もう!」
「いや、ほんとに、たこ焼きが、たこ焼きで……」
「はぁ、あんた、ぶぁかなの? もういい。
この世界の管理権あげるから、たこ焼きでも何でも好きにして!」
「え、そんな雑な……」
結局、北の街の屋台で、なんとか値切ってたこ焼きを買った。
熱々でおいしそうだ。正直、食べたい。腹が減っている!
我慢して、城に戻ると、人々が跪いていた。
「おお、勇者よ! 魔王討伐ありがとうございます!」
「え、俺、たのまれてたこ焼き買ってきただけなんですけど……」
尖った赤髪が、たこ焼きを受け取りながら言った。
「おっせえんだよ! たこ焼きが冷めてたら、おめえも凍らすとこだったぞ!」
「いや、あの、いろいろありまして……」
俺が、たこ焼きを買いに行ってた間に、世界が救われたらしい。
なんかもう、いろいろよくわからない。




