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婚約者がゴミですぐに誰かれかまわず好きだ好きだと言っていく奇病だから捨てたい〜証拠を集めて追い詰めると新規事業を立ち上げ子持ちから注文が殺到しました〜

作者: リーシャ

 うちの結んだ婚約者は、ゴミである。

 断言するまでにどれだけの時間を無駄にしただろうか。しかし、言語化できたのは幸いだ。


 前世では子供を過ぎていたというのに、この世界に転生してからは、いまだに十歳にも満たない幼女の姿だ。小さい。肉体は幼いが精神は成熟しきっている。大人の頭脳持ちだ。


 ゆえに、婚約者がいかに腐りきった男であるか、瞬時に見抜いてしまったのだ。

 婚約者、いや、元婚約者となるべき男の名はカッシュ・パラニマラは宰相の嫡男であり、美貌と才能を兼ね備えた絵に描いたような貴公子だと世間ではそう言われている。

 しかし、知っている。顔の下に隠された底なしの醜悪さを。よく知っている。


 カッシュはとにかく「好き」という言葉を安売りする男で、お茶会で会う侯爵令嬢には「君のような美しい瞳は見たことがない。好きだ」と囁き、舞踏会で手を取った伯爵令嬢には「君と踊る時間は至福だ。好きだ」と甘い言葉を投げかける。


 それを聞いた娘たちは皆、頬を赤く染めてはうっとりするのだ……おぞましい。

 もちろん、こちらにも同じような言葉を投げかけてきた。


 父が商才に長けているため新興の成金貴族と蔑まれているので、由緒あるパラニマラ侯爵家との婚約は大きな箔付けとなるはずだったから、婚約が決まったとき父も母も心から喜んでいる。


 カッシュが前に現れたのは、婚約が正式に決まった三ヶ月後のこと。


「レモリア、君は本当に可憐だ。咲いたばかりの朝顔のようだね。好きだよ」


 頭を優しく撫でた瞬間、前世の記憶を思い出した。そういえば、学生時代にも似たような男がいたなと。

 誰にでも親切で誰にでも好意的な態度を取り、全人類が恋人であるかのように振る舞う、根っからのナルシストは友人の心を弄んで、ズタズタにした。


 あの時感じた嫌悪感を思い出し、ゾッとなる。この男は家族を、婚約を何だと思っているのだろう。ただの箔付けに過ぎないのか?


 それとも、弄ぶためのおもちゃとでも?


 もし、この男が本当に誰にでも「好き」と告げているならそれは、れっきとした婚約者への裏切り行為だし、もしそれが真実なら婚約を破棄しなければならない。


 嫌だ嫌だ、この先一生をこんな男と過ごすなんて冗談じゃない。婚約の枠だけでも不愉快極まりないというのに。

 幸いなことに異世界転生者。前世で培った知識と経験があるので、まだ発達していない情報網がある。これを最大限に利用することにした。


 まず、カッシュの行動を徹底的に観察し始めようと思う。

 直接見聞きした情報だけではたかが知れている。そこで護衛である、執事のターミルに協力を仰いだ。彼ならば。


 ターミルは父が信頼を置く古くからの使用人で、年齢はずっと上だが異世界転生の事実を唯一知っている人物でもある。

 突拍子もない行動や発言にも彼は決して動じない人格者。


「ターミル、カッシュ様の社交界での動きを全て調べてください」


 唐突な依頼にターミルは眉一つ動かさずに頷いた。


「承知いたしました。しかし、何のために?」


 質問はしたい人らしい。


「婚約を白紙に戻すためです。カッシュ様は多くの令嬢に好きだ、と告げては心を弄んでいる。人格に問題があるので証拠を集めたいのです」


 ターミルは一瞬だけ目を見開いたが、すぐに元の無表情に戻った。気持ち悪いよね、気持ちはすごくわかる。


「かしこまりました。レモリア様のお望み通りに」


 ピシッとしている。

 数ヶ月、ターミルは密かに調査を進めて、持ってきた報告書は予想をはるかに上回るものだった。


 カッシュが「好きだ」と告げた令嬢のリストは五十人を超えており、その中にはすでに他の男性と婚約が決まっている令嬢もいれば、平民の娘も。相手の身分など全く気にしていない。


 ただ、自分の言葉で相手がうっとりする姿を見て快楽を得ているだけ。気持ち悪い。控えめに言わなくても、皆言うだろう。


 報告書にはカッシュと令嬢たちの会話の断片も記録されていた。ばっちり。


「君の髪は金色の糸のようだ。このままどこかへ連れ去ってしまいたい。好きだ」


「君の優しい声は、僕の心を癒してくれる。君のために、詩を書いてあげよう。好きだ」


「君の純粋な眼差しは僕を捕らえて離さない。君といると本当に心が安らぐんだ。好きだ」


 ポエマーか、こいつ?

 どの言葉も心がない。人形に話しかけているかのようだ。言葉を聞いた令嬢たちが、カッシュに夢中になっている様子も詳細に書かれていた。ポエマーのファンか?嬉しいとか、え?


「カッシュ様は私だけの特別だわ」


 特別なわけない。


「カッシュ様が私のことを一番愛してくださっている」


 酔うにはまだ手始めな段階だと思うけど?

 なんて、滑稽なのだろう。カッシュという蜘蛛の糸に絡めとられた哀れな蝶々に見えて、報告書を手に震えるほどの怒りを感じた。

 人の心を何だと思っているのだ。怒りが溜まる。心のままに次の計画を立てる。


「まだ足りない」


 報告書だけではまだ弱い。カッシュが「好き」と告げた令嬢たちに直接会って、話を聞く必要がある。

 もちろん、直接会うわけにはいかない。幼女がいきなり「あなたの婚約者から話を聞かせてください」なんて言っても怪しまれるだけなので、ターミルに次の指令を出した。


「ターミル。カッシュ様に好きと言われた令嬢たちにこっそり接触してください。カッシュ様から受け取ったプレゼントや手紙などを、可能な限り集めてくださいね」


 ターミルは今回も難なく任務をこなした。調査が進むにつれてどんどん顔つきが険しくなっていくのは、カッシュの非道な行いを目の当たりにしているからだろう。


 一ヶ月後、ターミルが部屋に持ってきたのは山のような手紙と、いくつもの小物。手紙にはどれもこれも同じような甘い言葉が並んでいた。紙束だけでも気持ち悪い。


「君のためにこの手紙を書く。僕の心を、君に全て捧げる」


「君のいない人生なんて、もはや考えられない。どうか、僕の隣にいてくれないか」


 ついに、ポエマーに転職したか。どの手紙にも同じようなことが書かれていて、手紙の最後には必ず「愛するカッシュより」と書かれていた。


 小物は宝石をあしらった髪飾りや香水の小瓶、可愛らしいハンカチなど様々。


「控えめに言わなくても、とんでもない男」


 どれもこれも同じデザインのものがいくつもあった。


「レモリア様、カッシュ様は、同じものを何人もの令嬢に贈っていたようです」


 ターミルが呆れている。


「こういうことをやる人、記憶力悪いんだよ。だから、話題が同じになるようにするんだけど、やることに変化なし。地獄で同じ釜の飯でも食べたのかな?」


 婚約者の光景を想像して寒気がした。工場で生産されたおもちゃのように、同じものを何人もの娘に与えている。


「同じに見えるくせに、何人も得ようとするなんて」


 カッシュにとってこの娘たちは、ただのおもちゃに過ぎない。


「自分こそ、超量産型乙女ゲーム金太郎飴なのに」


 これらの証拠を完璧に揃えたあと、両親にカッシュとの婚約を白紙に戻すよう懇願した。


「父上、母上、カッシュ様との婚約は白紙にしてください」


 突然の言葉に両親は驚きを隠せない。まあ、唐突だったかな?


「レモリア、一体どうしたのだ?カッシュ様はあんなにも素晴らしい方なのに」


 素晴らしい?節穴も大概にして。


「素晴らしいのは外面だけです。父上、母上、これを御覧ください」


 ターミルが集めてくれた手紙や小物の山を両親の前に広げた。

 カッシュが多くの令嬢に「好き」と告げ、心を弄んでいる事実を話す。


 父は最初は信じられないという表情だったが、手紙や小物を見てだんだんと顔が青ざめていく。母は愛の量産型の言葉に、さめざめと涙を流していた。


「なんてことだ!こんな男にお前を嫁がせるわけにはいかない!」


 父は怒りに震え、母は抱きしめ、何度も「ごめんなさい」と謝る。優しさに思わず涙がこぼれそうになった。家族を悲しませたやつに慈悲なんてやらないから。


 翌日、父はパラニマラ侯爵家へ出向き、カッシュとの婚約破棄を正式に申し入れた。当然の成り行き。

 カッシュはもちろん驚いたし、婚約破棄の理由が自分の浮気であることがわかると激怒した。


「レモリアがそのような嘘を申しているのか!彼女はまだ幼いのだ。何を勘違いしたのか、私に問うこともなく婚約破棄とは。直々に夫として躾けねば」


 カッシュは父の前でいかに子供じみているか、いかにこの婚約が彼にとって重要であったかを、熱弁したという。

 こちらを「純粋で可愛らしい無垢な天使」と表現したそうだ。

 だから、おぞましい。何度も言う。


 カッシュが自ら婚約者のことを「天使」と呼んだという話を聞いて鳥肌が立った。どこまで自分に酔いしれているのだ。バカに付ける薬はない。


「おい!」


 ついにカッシュがやってきた。彼は部屋に入るなり、優しく微笑みかけ。


「レモリア、君は僕のことを誤解しているようだね。君はまだ幼いから、色々なことに不安になるのだろう。でも、安心してほしい。僕は君のことしか見ていないよ。好きだ」


 出た〜〜!好きだ、出た〜〜!手を握り、甘い声で囁いた言葉に吐き気がした。


「カッシュ様、嘘はやめてください」


 静かに咎めればカッシュの顔から笑顔が消えた。


「どういうことだい、レモリア?」


「カッシュ様がどれだけの令嬢に好きと告げ、心を弄んできたか全て知っています。証拠も全て揃っていますよ」


 テーブルの上に積み上げられた手紙や小物を見せた。カッシュはそれを見て……顔色を変えた。


「これは!いったい、どこで!?」


「執事が、集めてくれました。あなたは多くの女性に同じ手紙を書き、同じ贈り物をしましたね。工場で生産されたおもちゃのように。あなたも同じことしか言えないおもちゃなのに」


 カッシュは言葉を失った。


「あなたにとって人は、ただの遊び道具に過ぎないのでしょう?多くの女性に好きと言って心を弄び、自分がどれだけ素晴らしい人間か、確認したいだけ。あなたは本当に卑劣な人間です。軽蔑いたします」


 目をまっすぐに見つめ、告げた。カッシュは何も反論できないらしい。


「こ……婚約破棄、受け入れます」


 カッシュは力なく頷いた。

 もう偽りの笑顔はなく、ただ、自らの非を認めざるを得ない醜い男の顔がある。こうして、漸く婚約は白紙に戻った。


 世間ではカッシュが心変わりをしたのだと噂され、多くの令嬢たちがカッシュに同情してこちらを非難する。底が浅い。


「レモリア様はまだ幼いのに、カッシュ様を振るなんて」


「きっと、カッシュ様を心変わりさせるほど魅力がなかったのね」


 なんて噂を耳にするたびに心の中で鼻で笑う。勝手に言わせておけばいい。どうせ、数ヶ月後には嘘に気づくだろう。

 その時、彼らは同じようにいや、それ以上に絶望を味わうことになるのだから。


 婚約が破棄された後も自分の人生を謳歌している。父は信頼できる人間と結婚できるようにと、私に多くの時間を与えてくれた。

 母は精神的な支えとなってくれ、自分の足で生きていこうと考える。


 知識を活かし、新しい事業を立ち上げ、情報収集を専門とする会社を設立。ターミルは会社のチーフとなった。

 この世界には情報が不足しているからこそ需要がある。

 事業を通して多くの人に真実を届けることにした。


 誰かの嘘に惑わされ、心を傷つけられる人がこれ以上増えないように、いつか会社が大きくなった暁にはカッシュのような人間を徹底的に追い詰めてやる、と。

 これ以上誰も傷つけられないように。幼女の体だが心は強い。人生を切り拓いていくのだ。


 婚約者はゴミだった。だが、そのおかげで本当に大切なものを見つけることができた。人生は己で決める。



 婚約破棄から一年が経った。

 あれから生活は大きく変わり、パラニマラ侯爵家との婚約破棄は社交界で大きな話題となったが、父の巧みな根回しと集めた確固たる証拠のおかげで不当に非難されることはない。


 カッシュ・パラニマラという男の素性が少しずつ明らかになり、弄ばれた令嬢たちが続々と名乗りを上げ始めたのだ。贈った手紙や小物が持っていたものと同じだとわかった時、カッシュへの非難の声は頂点に達した。


 社交界から姿を消し、今ではすっかり落ちぶれてしまったと聞いている。自業自得だからこそ、そんな男のことで止まっているわけではない。

 情報収集を専門とする会社を立ち上げたあとターミルは右腕として、会社の運営を支えてくれている。


 事業は順調で、すでにこの国の情報網をほぼ掌握しつつある。

 だが、この事業をただの復讐のためだけにやっているわけではない。誰かの嘘に惑わされ、心を傷つけられる人が、これ以上増えないように。それが最大の目的。


 そんな中、母の友人である子爵夫人のお宅を訪れた夫人には、少し年下の幼い赤ちゃんがいた。


「あら、レモリアちゃん。大きくなったわね」


 子爵夫人は優しく迎えてくれたそこで、信じられない光景を目にした。

 赤ちゃんが寝ているベッドは硬く、粗末なもの。おくるみもただの布切れ。

 赤ちゃんの口に運ばれる離乳食は見たこともないような、不衛生なもの。


 前の世界は、赤ちゃんのために様々な工夫が凝らされた道具があったのに。

 柔らかいベビーベッド、肌触りの良いおくるみ、栄養を考えられた離乳食、安全なおもちゃ。

 貴族でさえそのような道具は使っていなかった。


「子爵夫人、この離乳食は?」


 恐る恐る尋ねたら、子爵夫人は不思議そうな顔をして答えた。


「これが一番、安価で手に入りやすいものですから。でも、最近はなかなか食が細くて」


 胸が締め付けられる。子育てに関する知識や道具が、まだまだ未発達なのだとその日以来、頭の中は赤ちゃんのことでいっぱいになった。

 今の情報収集の事業は大切なものだ。だが、それとは別にもっと直接的に、誰かを助けられる事業がしたいと思ってターミルに相談してみる。


「ターミル、私、赤ちゃんの道具を作る事業を始めたいのです」


 突然の言葉にターミルは驚きを隠せない。


「レモリア様、それは?」


「命を守り、健やかに育てるための道具があまりにも少ない。だから、道具を作りたいのです」


 ターミルは真剣な目ですぐに頷いた。


「かしこまりました。私にできることがあれば何でもお申し付けください」


 それからは新たな挑戦をし始めて、まず赤ちゃんの道具の設計図を描き始めた。柔らかい素材で作られたベビーベッド。

 赤ちゃんの体を包み込み、安眠を促す肌触りの良い、通気性の良いおくるみ。

 デリケートな肌を守るための安全な素材で作られた、カラフルなおもちゃ。


 五感を刺激し、発達を促す。栄養バランスを考えた衛生的な離乳食のレシピ。どれもないものばかり。

 次にこれらの道具を作るための工房を探し始めた。まだ、職人の技術が未熟な部分が多いが最高の職人を探し、彼らを説得して工房に迎え入れた。


 最初はこちらの描く設計図に、職人たちは戸惑っていたが、やるのだ。やってもらうしない。


「こんな柔らかい素材、どうやって作れば」


「この離乳食、本当に赤ちゃんに安全なのか?」


 知識を一つずつ丁寧に説明した。試作品を作り、目で安全性を確かめてもらう。

 試行錯誤の末、ついに第一号の赤ちゃん道具が完成したのは、雲のように柔らかいベビーベッド。子爵夫人のお宅に持っていった。


「子爵夫人、もしよろしければ、これをお子様に使ってみていただけませんか?」


「っえ?これは」


 子爵夫人は恐る恐るそのベビーベッドに赤ちゃんを寝かせると、それまで夜泣きがひどかった赤ちゃんがその日はぐっすりと眠ったという。夫人は涙を流して感謝した。


「レモリアちゃん、ありがとう!この子がこんなに安らかに眠れたのは、初めてです」


 聞いて、心の底から嬉しかった。いつの間にかそのことが口コミで少しずつ広まる。


「レモリア様の作るベビーベッドは本当に魔法のようです!」


「離乳食を食べたら、うちの子の食欲が増しました!」


 最初は懐疑的だった貴族たちも、効果を目の当たりにして次々と商品を購入し始め、急いでこの事業にベビープラスという名前をつけた。


 赤ちゃんに、もう一つの幸せをという願いを込めて。ベビープラスは順調に成長していくと工房を拡大し、多くの職人を雇い、より多くの赤ちゃんのためにより良い道具を開発し続けた。


 ベビー服、ベビーカー、哺乳瓶、赤ちゃん用の絵本。どれも知識を活かしたものばかりだ。


 ある日、カッシュの母親であるパラニマラ侯爵夫人から手紙を受け取った。嫌な顔をしてしまう。


「レモリア様、どうか私に会っていただけないでしょうか?」


 少し迷ったが仕方なく会うことに。侯爵夫人は会社の工房を訪れ、赤ちゃん道具を見て驚きを隠せないようだった。


「レモリア様。まさかあなたがこのような素晴らしい事業を」


 急に涙を流した。涙を流されても困る。あんなモンスターを育てた人に。


「息子のことで、あなたにひどいことをしてしまった。本当に申し訳ありませんでした」


 侯爵夫人はこちらの父の元に何度も謝罪に来たらしいが、一度も会おうとしなかった。そんなの決まっている。

 気持ち悪い男の親も、気持ち悪い。ただその一点のみ。

 直接謝罪したかったのだとのこと。


「いいえ、もう過去のことです」


 静かに答えた。


「あなたの息子さんが多くの人を傷つけたのは事実です。ですが、そのおかげで本当にやりたいことを見つけることができました。だから、もう恨んでいません」


 侯爵夫人はさらに涙を流した。


「どうか。孫のためにあなたのベビーベッドを譲っていただけないでしょうか?孫が、どうしても夜泣きがひどくて」


 孫がいたのかと、静かに頷いた。


「かしこまりました。一つ、お作りいたします」


 特別なベビーベッドを作った。人生の転換点となった記念すべき第一号のベビーベッドと同じ、雲のような柔らかさを持ったものを。


 数日後、侯爵夫人から手紙が届く。


「レモリア様のおかげで、孫がぐっすり眠れるようになりました。本当に、ありがとうございました」


 手紙を読んでもうカッシュのことは、完全に過去のことになったのだと実感した。復讐のためにあるわけではない。多くの人を幸せにするためにあるのだ。


 新しい未来を創っていくために情報収集の事業は、これからも続けていく。だが、本業はベビープラス。

 赤ちゃんの道具を作り続け、生まれた全ての赤ちゃんが幸せに育っていくことを願う。

 いつか、作る道具が異なる世界の常識になるように。

ベビー用品は最強かも?と思った方も⭐︎の評価をしていただければ幸いです。

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