プロローグ
作り途中でプロローグだけ置いておきます。
申し訳ないですが、異世界転生も超能力もバトルもありません。
あまり長くないので、是非。
今の時代、実家で親のスネをかじり「ワンチャンス」掴みたくて燻ってるなんて珍しくない。
伸びもしない登録者、増えることの無い視聴回数、いつか来るはずのバズりへのゴールデンチケットを夢見て生きているはずだった。
アイツを殺してしまった。目の前の現状を拒む脳内は、引っかかれた頬が現実だと騒ぎ、ヘリの音が救助しようと近づいてくる。
「違う」「どうして」「俺のせいじゃない」、否定と疑問を呟き、自らが起こした証拠を1つ1つと消していくチグハグな作業を着実にこなしていた。
作業は救助が到着する頃には終わっていた。
幸いにも気づいていない様だ。
安堵し俺は救急のヘリに乗り救助された。
明日の朝、俺はテレビに出ていた。
遭難から2週間、生死不明の遭難者が見つかったと言うだけでも奇跡なのに、「1人で」サバイバルをしていたという点も評価され、俺の手にはゴールデンチケットが握らされていた。
テレビには引っ張りだこ、いつも見ていた人からはコラボ依頼、登録者はうなぎ上り。
テレビにラジオ、大手チャンネルに引く手あまたの俺は、視聴者から演者へと一夜にして変貌した。
唯一残った頬の傷を、獣との戦いの武勇伝へと変え、カサブタのように犯した罪に蓋をしていた。
夢にまで見た画面の向こう。
自らに向けられた尊敬の眼差し。
出る度に厚みを増す給料袋。
そんな日々を過ごす中でも、消えぬ「過ち」。
消したはずの死体が見つかったら。
頬へ傷を付けた爪からDMAが発見されたら。
消し忘れた証拠が、見つけ忘れたミスが、殺したアイツが、あの時殺めた俺の手同様喉を締め付ける。
満たされた日々を殺すため、首にかけられた罪悪感の縄は、武勇伝を語る度に喉を精神を締め上げていく。
心の安寧のため新聞を見漁り、安心して眠るためアイツの名前を検索し、遭難者を助けるという口実で取材に協力し最新の情報を取り入れ、アイツが見つかっていないことを確認する。
「バレていない」「バレるわけが無い」と言い聞かせ、今日も身体を布団にうずめる。
「明日は自白しよう。」そんな戯言を言い今日も眠る。
日々の忙しさの中、傷跡の痛みと共に薄れていく罪悪感はカサブタと主に剥がれ落ちた。
いつも通り新聞を読み、片手間に名前を検索し、日々の安寧を確かめる。
「明日こそは」と意気込み寝ていた布団も、今日にはゴミと共に捨てられる。
そんな安らかなる日常も、1本の電話で崩れる。
「私、知っています。」
「この山での出来事も、あなたがしたことも。」
俺が支払ったゴールデンチケットのコストは、輝き続ける自らの生活を糧に、膨らみ続けた利子を払えと電話越しの女は語りかけた。
真っ白になった頭が捻り出した答えは
「今どこにいる。会って話そう。」
初めて書き物をしているので、誤字脱字誤用など多くあると思いますが、お目こぼしをお願い致します。




