166-170
166スフィンクス
赤ちゃんは四つ足で立っている
大人は二つの足で
老人は三つの足で
詩人は言葉の足で
椅子は四つ足で
昆虫は六つの足で
ムカデはたくさんの足で
スフィンクスは答えを求める
足で立つとはなんぞや
167考古学者
鍵をかけても
開いてしまうドア
開いた先に見えるのは
何の変哲もない哲学
誰かの脱ぎ捨てた靴が
言葉を化石化して
考古学者に発掘されるまで
放置される
放置されている言葉は
じっと耐えている
化石になりゆく自分を見つめながら
168フォーク
フォークで
皿のスープを
掬う
掬えない
救えない
フォークは
スープを
救えない
それでも
一滴分の
スープを
掬っている
スープのために
フォークはある
169クジラ
小さな音楽が
オルゴールに仕舞われて
小さな文が
ハガキに仕舞われて
夏になり厚手の服が
仕舞われて
少女が少年の中に
仕舞われて
日差しが影に仕舞われて
世界がクジラの喉に仕舞われて
つっかえている
170シャア
青い男性
赤い女性
トイレである
赤い男性
青い女性
トイレではない
が
トイレじゃないともいいきれない
ちなみに
赤い男性は
シャア・アズナブル