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第17話 うどん作り、という名のお気持ち表明

作者的にはここから2章というイメージです。

地上との関わりが大部分配信ばかりになって、主人公は一人楽しく冒険をします。

地上の様子は掲示板、及び地上の人物に焦点をあてた話で時々書いていきます。


「んじゃ、今日は角付ウサギの肉と地上で買ってきた小麦粉でうどん作るよ」


 “いきなり飯テロ配信始まった”

 “なんて???”

 “探索系チャンネルじゃなかったのか”

 “角付うさぎってなんぞ”

 

「あー角付うさぎは今度現物見せるよ。多分深層レベルのモンスターだな」


 地上にかなた嬢と茜嬢を送り届けてからしばらく。深界の先、今の俺の住まいに帰還してからは3日ほどがたった。


 この3日間、ほとんど配信することが出来ていない。元々俺は特に配信のためにこったことをする、というつもりが無かったので、むしろ普段からドローンを展開してドキュメンタリー的な配信にしようと思っていたのだが、ここ数日は流石にそれもはばかられる内容だったので配信していなかったのである。


 そして久しぶりの配信、せっかくなので料理配信というやつでもしてみようかと、その様子を撮ってみることにしたのだ。


「料理配信はあれだな。正直配信すると言っても俺がどんな配信したいかがあんまり掴めてないから、取り敢えず色々撮ってみようと思って」


“初手が料理?”

“そう言われれば、普通の配信はしそうにないな”

“むしろ映像記録的な感じですか?”


「あーそう、映像記録が近い。ドキュメンタリーってやつ? もうある程度垂れ流しで良いかなって。まあその辺はおいおい話すとして、取り敢えずうどんづくり始めるわ。しながら雑談って感じで」


 俺の配信は、俺が世界一先に進んでいるということもあってか、チャンネルを見つけることが出来た10名前後はほとんど来てくれているようだ。俺も向こうのアカウント名を覚えてしまった。そんな中で料理配信というのは期待を裏切っているかもしれないが、まあ雑談もするので許してほしい。


「今日作るのは肉うどんね。大体牛だと思うけど、牛、というかバイソンが生息しているのが結構離れたところで今ストックが無いんだよね。ハムとかベーコンはあるけどそれはうどんにはなんか違う気がするから、今日は近場で取れたウサギ肉で」


 そう言ってすでに皮を剥いで内臓を取り、ある程度切り分けたウサギ肉と、肉や筋など食べない部分を別々にまな板として使っている木の板の上に並べたものを見せる。


「WeTubeってさ、動物の解体動画とかいけんの? 今日はちょっとそれがわからなかったので先に解体と血抜きとかはしてるんだけど」


 “WeTubeはダメだけどダンジョン配信は緩い”

 “ダンジョン系の配信、動画は基本レーティングがR-15以上、場合によってはR-18 まあ子供見てるけど”

 “ダンジョン配信だから大丈夫”

 “ダンジョン配信だと普通に血とか出るからな”


「ああ、それもそうか。じゃあ次からはそのあたりももう配信で垂れ流すわ」


 確かに、よく考えればダンジョンの配信って冒険っぽいところもあるが基本的にはモンスターとの戦闘である。モンスターを切り裂くこともあれば、逆に探索者が怪我を負うこともある。ダンジョン配信を予めレーティング制限をかけることで、そのあたりも配信できるようにしているのだろう。

 

 さて、それがわかったところで早速料理である。今日は、というか、ダンジョンの下の世界には顆粒だしなんて便利なものは基本無い。加えて、鰹節なんかも今回地上で買い込んだが、自分で作るのはかなりの手間がかかる。だからこそ、あるもので、加工が簡単なもので食事を作る。それが今の俺の生活だ。視聴者の皆には、それを知っておいてもらいたい。


「だしはこれな。鰹節とか顆粒だしも地上で買い込んできたけど、今回はせっかくなので普段俺がどうやって飯作ってたか配信って感じで」


 出汁を取るのは昼に刺し身にして醤油で食った川魚の骨や頭と、今解体したばかりの角付ウサギの骨だ。魚の方は良いとして、まずはウサギの骨から余計な部分、後々アクになるような血合いや内臓を取るために川に向かう。


「ちなみにダンジョン内だと水源は川の水な。俺はレベルとか探索者化で体が強くなってることを信頼してそのまま使ったり飲んだりしてる」


 “ダメなの?”

 “ダンジョンの先の世界だったら自然も綺麗そうだけどな”

 “キャンプで普通に川の水飲んでるけどあかんのか?”


「一応自然にも細菌はいるって話。だから地上だとミネラルウォーターでも自然の水まんまじゃないしな。俺は気にしないけど、気にしたい人は気をつけてねってことだ。まあでも、俺みたいに一人とか少数で過ごす限りはそういうのも厳しいけどな」


 これでも、一人でダンジョン奥の世界で生活するにあたって、色んなことを諦めたり後回しにしたりしてきている。そのあたりも、せっかくなので話しておこうと思う。


「一人で生活してるとさ、現代社会の凄さってわかるよ。例えば農業とかもそう」


 拠点すぐ近くを流れている川で洗ってきたウサギの骨と、先に汚れを除いておいた魚の骨を鍋に突っ込んで火にかけながら話す。


「俺がさ、野菜食いたいって思っても、一人で農業なんてとてもじゃないけど効率が悪いんだよね。野菜づくりとかしたいけど探索もしたい。しかも行き先によっては数日とか一月以上ここを離れることもあるわけだし。畜産とかも同じく無理だよね」


 畑は、始めてかなり早期の段階で諦めた。ついでに言えば、地上から持ってきた野菜なんかはダンジョン世界の他の植物より繁殖力が弱く、普通に雑草に負けたりもした。結局今はダンジョン世界の植物の種を適当にまいて後は勝手に育つにまかせている。これでも旬にはそれなりに育ったりするのだから不思議だ。


「後は、例えばそれこそ鰹節とかも作ってみたいってつもりで来たんだけど今はやってない。ベーコンとかハムぐらいなら行けたけど、鰹節はちょっと時間がかかり過ぎたわ。炭作りとかも同じで、結局探索で出歩くのが多いからあんまりやってないな」


 サバイバル生活、というよりは、色々なことを自分の手で機械なしにする生活に憧れを持ってダンジョンを潜った。けれど、それは俺のリソースがすることを許さなかった。分身スキルを持っているとはいえ俺の『劣化(インフェリア)』スキルでは一人が限度だし、能力も高くないので大きな労働力にはなり得ない。一人で出来ることには、いくらレベルが上がって魔法が使えても限度がある。


 現代社会は、超大人数で社会を形成することで役割分担を極端にしている。流通を担うものはそれだけで飯が食えるし、魚を獲っているものはそれだけで肉も野菜も食える。それが社会の強みだ。


 沸騰したら竈から薪を抜いて火を弱め、アクを取ってコトコト煮込む。


「まあそういうわけで、一人の生活をしてはいるけど、集団でしか出来ないものってのも結構あるわけ。このザルとかボウルだって地上から買ってきたものだしな。こういうのも作ってみてはいるけど、それよりは探索に出かける時間の方が多いからあんまり進んでないし」


 出汁のアクが出なくなってきたところで、今度はうどんを練る。小麦粉をふるいにかけて、そこに塩水を入れながら揉み込んで。


 “料理配信ってよりは雑談配信やな”

 “料理の方も普通に面白そう”

 “まーあ一人じゃ出来ることには限りがあるわな”

 “農業とか村単位だな”


「だからさ、俺は人と付き合うのがあんまり得意じゃないけど、じゃあ完全に一人で良いかと言われるとそうではないんよ。大きな街、都市があって、そこから離れたところに10人20人の小さな村があって。そして俺は、その村を拠点にして探索に出る。大真面目な話それぐらいが理想ではある」


 別に人間がいなければいいのに、とかは思わないのだ。ただ中世の村や都市のように、人は集まっても100人いなくて、でも人がそれなりにいるから色んな仕事を分担してやっていて。


 そして更に田舎の離れたところに10人ぐらいの村があって、そこの住人が街に取引にやってくる。自然は自然のままで、人が支配する狭いエリアのすぐとなりに広大な自然が広がっている。


 割とまじめに、中世ぐらいの生活が俺の理想なんじゃないかなと勝手に思ったりしている。


「まあ何が言いたいかっていうと、みんな頑張って追いついてくれよって話」


 少々語りすぎたかな。そう思ったが、案外視聴者は優しく受け止めてくれているようだ。


 “頑張ります”

 “時間相当かかるでそれ”

 “てことは探索者以外もそこに来てほしい感じですか?”

 “それ探索者だけじゃ成り立たなくない?”

 

「そう! それは常々思っててさ。俺の考えだと、探索者が安全を確保したところに鍛冶師とか商人がいる前線拠点みたいなのを作れないかなって。そんで更に先に前線拠点が出来たら、そこは完全居住用の村みたいにすんの。ダンジョンを開拓していく感じ」

 

 “そら出来たらそうしたいやろうな”

 “出来るかあ?”

 “なかなか難しいと思うぞ”

 “ぶっちゃけ命が危険に晒されることに探索者ですら慣れてないからな”


 そこなのである。安全な世界に住んでいる地上の人たちにとって、脅威が身近にある生活は慣れないものなのだ。そこに踏み込める人は少ない。


「だよなあ……まあ長い目で見るよ。さて、後はうどん寝かして出汁が出来るのまつだけだな」

 

 “結局料理の話してねえ!”

 “あー腹減ってきた”

 “後でうどん食ってこよ”

 

 確かに、料理配信と言いつつ俺が一方的に語るだけになってしまったな。


「じゃあ、待ってる間薪割りしつつ質問会でもする?」


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