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フローラは二度と会うことがないと思われる大好きな婚約者だったテオドールが乗った馬車を見ても胸が痛まないことを確認すると、自身の屋敷へと戻っていった。
テオドールが今日フローラの屋敷へ訪れた理由を察している使用人は、無言で自身の部屋へ戻るフローラにただ頭を下げてフローラへの労いを示した。
疲れを感じているものの、軽快な足取りで自身の部屋へ戻ったフローラは部屋の扉を開けると先客の姿に固まった。
「あら。思ったよりも早かったのね、フローラ。お邪魔しているわよ。」
使用人が1人もいないフローラの部屋を我が物顔で陣取ったアルテミス・エリザベート公爵令嬢はアルテミス家に代々受け継がれる顎までしかない短い深紅の髪とルピーの瞳を輝かせながら部屋の主人であるフローラを出迎えた。
「エリー。またテレポートで勝手にやってきたのね・・・?今回は珍しく2人分のティーセットまで用意してるみたいだけど。」
「なんたって今日はお祝い+激励の日ですもの!我がアルテミス家一押しのお菓子と紅茶を用意したわ!!さあ!思う存分食べなさい!ラピスラズリ伯爵と夫人には今日のディナーはかる目に用意してもらうよう言伝も頼んでいるから遠慮しないで!!」
食べなければ魔法で口元までケーキや紅茶をつっこむ勢いのエリザベートの勢いに負けたフローラは渋々席へ座りケーキを口にいれた。