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「おそらくご存じだと思いますが、もう婚約者ではないのですから、私がをヘルメス公爵令息と呼ぶように、貴方様は私のことをラピスラズリ伯爵令嬢と呼んでくださいね。まあ、呼ぶ機会があるとは思いませんけど。」
そっして扉が閉まって酷く傷ついた顔をした顔をしたテオドールとその従者を乗せた馬車は、御者が馬を走らせたことでフローラの視界から消えることになった。
馬車の姿がなくなった後、フローラは晴れやかな笑顔を浮かべて誰にも聞かれないほど小さな声で、絶望した10歳のときから今までの苦労を思い出してつぶやいた。
「よくがんばったわ、フローラ。」