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男爵や子爵クラスの下位貴族であれば、公爵と社交界で会ったり話す機会はないといえるが、伯爵であれば高位貴族が集まるパーティー等で顔を合わせる機会は多い。ましてや、公爵令息と婚約を結ぶことが許される伯爵令嬢であれば、高位貴族の集まりにはすべて呼ばれると言っても過言ではない。つまり、話すどころが会うこともないと言いきることはフローラが今後社交することはないと宣言したことと同じである。
辺境の伯爵家や貧乏な伯爵家であれば一切社交を行わない場合もまれにあるが、鉱石がふんだんにとれる鉱山を複数もつ裕福なラピスラズリ家でそれはありえない。ラピスラズリ家は貴族では珍しい恋愛結婚のため、家族仲がよくフローラを両親や兄が溺愛しているとはいえ、社交をしないなんてことは許されるはずがない。
「話すどころが会うことさえないなんて、そんなこと・・・」
今まで呼ばれたらすべての社交界に顔を出し、テオドールの幼なじみの公爵令嬢の悪口を言いふらしたフローラが社交界に出ないなんてことが信じられず、テオドールは苦笑いを浮かべた。