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第3話 『特殊能力に目覚めたい』

 俺、そして俺が立つ場所に広がる大自然。とても景色が良い。そんな景色は俺には全く似合わないがこのままずっと眺めていたい。

 あのとき、俺は


「早くここから出たい!」


そう叫んだ。三秒後、洞窟にこの小山に続く大きな穴が開いた。

 もしかしたら、そのいわば洞窟からの“脱出”こそが“ガイドの能力”だったのかもしれない。

 ふと、自身の手や足を見たとき、変な感じがした。その原因には一瞬で気づいた。十五歳くらいに若返っていたのだ。なぜそんなピンポイントで年齢を予測出来たかって?単純だ。十五歳と言えば俺の中では思春期全盛の期間だった。そのためそれなりに記憶に残っている。

 そして俺は異世界転生系の作品の主人公的な、異世界に入ってきたときの驚きとやらはそんなになかった。驚きを正直楽しみたかった部分もあったからか、この先本をあまり読まないようにしようと決意した。

 綺麗な景色を長い時間俯瞰していたが、せっかく異世界に来たのだから友達を作って特殊能力を手に入れて、壮大な冒険を繰り広げながら困っている人を助けたいと思ったため、とりあえず今俺のはいているズボンのポケットや周辺を何かないかと改めて見直してみた。

 ポケットの中にはいつも家で使っている持ち運び用の鏡が、近くには沢山枝分かれしている小さな川。そして生い茂った木々や草。別に人がいるわけでもないし、建物が建っているわけでもない。この状況で何かを救えと言われたら、救えるのはせいぜい荒れた俺の前髪くらいだろう。

 

 ということで、夢のような場所から少し遠い場所まで歩いた。ギリギリ遠くに町のようなものが見えるくらいの場所だ。町まで行かずにそこで止まってしまったのは、情けない体力だったこと以外にも理由がある。ポツンと一つの家があったからだ。

 人がいるかもしれないと思った俺はその家の前まで来た。そして戸を叩こうとしたとき、中から同い年くらいの少年が出てきた。

 お互いに顔を見合い、少年は驚いたような表情でこちらを見つめていた。

あまりにも急かもしれないが、俺は名前を聞くよりも先に今気になっている事を聞こうとした。


「いきなりなんですけど…」

「待て、僕との会話で敬語を使うのは禁止だ。」

「あ、はい、すいませんでし、すまない。」


 面倒くさいタイプだ。初対面の相手だし敬語を使いたかった。この慣れない状態のまま、会話は続いたのである。


「まず、ここはなんなんだ?」

「おっと、この世界ついてあんまり知らないってことは新入りかな?」

「そうだな。今日この世界に来たばかりだからな。」

「それは申し訳ないな。いきなりあんな態度でしゃべって。まあ、そんなことは置いておいて、この世界についてだったよね?もうわかっているかもしれないけどこの世界は実は“パシフィックブルーフィン”っていう名前の異世界なんだ。そしてパシフィックブルーフィンは現実世界の支えの役目を担っているんだ。あ、そういえばまだ名前を聞いてなかったね。僕はソウタ。君は?」

「俺は…アレン。」

「このまま君についていくよ。おそらく君は少し先にある町に行こうとしているんだろう?新入りを一人にはしづらいし、いろいろ教えないといけないことがあるからね。」

「わかった。」


 俺はソウタと共に近くの町、レイスタウンに着いた。

 その町は、俺がもともと住んでいた東京と比べるとはるかに小さくすべての建物が木造だった。どこからも木の匂いが感じられる、にぎやかな場所だ。

 ソウタは俺に教えたいことがたくさんあって全部伝えるために時間がかかるから、といって二人はその町のカフェに入った。


「まず、これから君がやる事を説明するね。君にはこの町を救ってもらう。」

「救う?ってなにもおかしなところがあるようには見えないけど。」

「まあ、確かにな。ただ、この世界で異変が起こると、現実世界でも異変が起こるっていうことがポイントだな。」

「現実世界でも?」

「さっきも言ったと思うが、パシフィックブルーフィンが現実世界を支えていることが原因だ。」


 実は、パシフィックブルーフィンと現実世界では損害やダメージなどがリンクしているらしい。簡単に言うと、とても高く積んである積み木(現実世界)を支えている地面パシフィックブルーフィンが地震などの何らかの振動によって揺れると地面パシフィックブルーフィンはもちろん、その上に積んである積み木(現実世界)も崩れることがある、ということだ。


「この町は最近まで紛争を行っていてまだ建物などが崩壊している場所があるんだ。そして、現実世界にも影響がでている。」

「それなら、この世界と現実世界の両方で業者の人を呼んで建造物を修理してもらわないとね。」

「だめだ。この世界と現実世界で情報を伝え合うことはこの世界の法律で禁止されているからその方法は難しい。」

「ああ、この世界にも法律があるんだ…。じゃあ、どうするの?」

「“ヒーラー”の力を借りるんだ。そうすればけがをした人などの動物や壊れた建造物を世界をまたいで元通りにすることができる。」

「“ヒーラー”?」

「あ!まだ“アビリティ”の話をしてなかったね。」


 この世界には、“アビリティ”が存在する。“アビリティ”とはパシフィックブルーフィンにいる誰もがここに来た瞬間から持っている特殊能力のことである。

 ここで重要なのは誰もが“アビリティ”を持っていることだ。よって、俺は何かの特殊能力を持ち合わせていることになる。

 こんなことは夢にも思わなかった。たった一つのクリックで特殊能力を手に入れられるなんて。俺の中の厨二心がくすぐられ、くすぐられ、くすぐられ…ついにやってしまった。


「ウフ…ウフフフフ…アハ!アハ!アハハハハハ!ヒャッホー!」


…兎にも角にも、気が狂ったのである。

 何とかソウタの力も借りて心を抑えることができた。

 今までの話を踏まえて、好奇心に満ち溢れた俺はまたもや質問をした。


「あの、俺この世界に来る前にガイドっていうやつに会って、いろいろあって“ガイドの能力”っていうのを手に入れたんだ。それとアビリティっていうのは別なの?」


俺がそういうと、ソウタは目を皿にした。


「ガイドって!まさか!…もしかして現実世界にいるときに誰かから段ボールと白い手紙を受け取らなかった?」

「うん、受け取ったね。」

「その宅急便の送り主は僕だ!運命的だな!広いこの世界で異世界に突然やってきたお前に会えるなんて!…まあ、こっちもいろいろあってさ。君は必要な人材なんだ。

あ、そういえばまだ質問に答えてなかったね。“ガイドの能力”っていうのはガイドから意図的に付与されたものだろう?だから異世界に来た瞬間から持っているはずのアビリティと

は別のものだと考えていいね。」

「そうなのか…。じゃあ、俺の持ってるアビリティって何?」

「それがわかったら苦労しないな。大体の人は“バグ”との接触を繰り返すことで自身のアビリティを見つけるけどね。一般人は“バグ”に怖くてなかなか近づけないんだ。」

「バグ?」

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