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第2話 『まさかの箱で』

 ここは?

 俺はあのときあの場所であの段ボールを開けた後、目の前が真っ暗になった。いや、真っ暗になる直前までは真っ白だったような…。だめだ。何が起こったのかあまり覚えていない。どれくらい時間がたっただろう。何も見えない状態からやっと解放されたと思うと俺は、狭い洞窟の中に閉じ込められていた。

 もしかしてと思い回りを確認してみるとやっぱり雰囲気はそうだ。俺は異世界転生ものの小説や漫画をよく読む。こんな展開はそれらの本によくあると思われがちだが意外とないやつで、これも何回か読んだことがある。


「異世界転生か。つまり俺は死んだと。そういうことだな。俺、何かしたっけ?」


 おかしな話だ。段ボールにはソッキョーっていう風にロゴが入ったシールが貼られていた。つまり段ボールはソッキョーアニメーションのものだと思われる。開けただけで死んだってことは中に即死する変なガスでも入ってたのかと考えたいことは山ほどあったが、それも何も放棄した。今俺は異世界にいるのだ。夢みたいだ。


「お目覚めになられましたか。」


 誰だ!どこにいる!と言いたくなったが、いろいろあったからか疲れがたまっていて大きな声を出すことはできなかった。

とても細い声で


「だれですか?」


そういうと、


「私はこの世界でのあなたを助けることが役目となっております、ガイドです。簡単に申しますと、あなたの“ナビ”のようなものでございます。

とある人物からの命令で、ここにいる人の手助けをしてくれ、と頼まれた所存でございます。」


 “この世界での”という言葉を聞いた瞬間、俺が思ったことは正しかったのだと改めて実感した。やっぱりここは何かの異世界なのである。

 俺は、今思ったが好奇心旺盛なのかもしれない。


「とある人物って誰ですか?」


「そのことについてですが、私は何も申し上げられることはございません。」


「話は変わりますが、今からこの世界を過ごすにあたって使うことになるあなた様の名前を決めていただきます。」——名前?


どうやら俺がもともといた世界で使っていた名前をこの世界で使うことはできないらしい。


「じゃあ…。アレンで。」


なぜだかわからないが、異世界転生っぽくカタカナの名前にしたいと思い、咄嗟に思い付いた名前がそれだった。


「素晴らしいネーミングセンスをお持ちようですね。かしこまりました。」


めちゃくちゃ棒だった。俺は煽られているようにしか感じ取れなかった。


「では、終わりです。“あなた様が私を利用できる時間”が、です。」——は?


 この世界、いやどの世界でも難しい言葉はある。ガイドの最後の言葉だって難しい言葉が連なっている“語彙山脈”だったから理解できない…と思いたかった。でも、そのままガイドは消えてしまった。

 補足をしておくと、“語彙山脈”とは現実世界にいてまだ学生だった頃学校で流行っていた言葉だ。基本的には国語の授業で文章を読むとき、わからない言葉がたくさん出てきて文自体の意味もまるごと意味不明という状態のとき用いられる言葉だ。

 俺はガイドが消えたとたんガイドに相談したいことが水の沸騰の如くボコボコと頭に浮かんできた。

 いろいろ考え事をしているとき、慌ててガイドが戻ってきた。


「忘れていました。私がいなくなるとあなた様は何もできませんから、ただいまからあなた様に私の“ガイドの能力”を付与致します。加えて、“セーブ”致します。」


 俺だってRPGゲームは小学生のときからずっとやってきた。だからセーブしないと今までの記録が残らない事くらい当然のことながら認知している。でも、この状況下でのセーブは全く理解できない。それと微妙にガイドが敬語をうまく使い分けられてないことが少し気になる。

 今度こそガイドは消えていった。

 俺は何もすることが出来ない。“ガイドの能力”とかいう意味分かんない能力を付与されても使い方がわからない。

 せっかく異世界転生的なことをしたのに俺はこのまま狭い密閉された洞窟に引きこもっていなければいけないのか、その上この世界での友達を作ってすらいない。

 さっき決めた俺の名前は一体何に使われるのかと疑問に思いながらも疲れを振り切って無理やり叫んだ。

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