3章 絶体絶命
前回までのあらすじ
俺、尾崎 大介。一番の戦友、雪村 篤。同じく戦友で仲間想いの山口 有志。
そして、自衛隊隊長の室谷 晃久隊長。(室谷隊長)
俺達はロシアからの緊急連絡によりロシアへと旅立った。
だがしかし、いきなり謎の建造物から襲撃。
俺達はバラバラにはぐれてしまった。
そんな時、爆音が聞こえて大介は第一部隊が謎の生物と戦っている所を目撃。
大介は隊長達のもとへと急ぐのだった。
2012年 2月 13日 5:32
隊長。無事でいて下さい!
大介は瓦礫に囲まれた地面の中隊長達のもとへ走っていた。
大介は第一部隊のヘリの炎上した煙を頼りに走っていた。
呼吸が苦しい。
肺が今にも張り裂けそうだ。
だが休んでいる暇はない。
急いで隊長達の下へいかなければ、あの謎の黄色い生物に全員殺されてしまう。
くそ!嫌な予感がする。急げ!
「撃て!奴らをこちらに近づけるな!」
隊長達は戦っていた。
だが、状況は最悪だった。
向こうはまるでこちらの考えが解っているかの様に戦闘パターンを変えてくる。
さらに、奴らの使っている銃。
弾も速く、当たったら一瞬で体に一個の穴が空く。
そこから大量出血させて殺されてしまう。
とても恐ろしい銃だ。
あれさえ手に入ればまだ勝てるかも知れない。
だがこちらは、一人いや一匹も殺してはいない。
戦えば戦うほど、撃てば撃つほど、こちらの人数が減っていく。
しかも、弾は確実にあたってはいるが、あたった場所がまるで嘘のように塞がっていく。
そして、また立ち上がってくる。
ちくしょう!奴ら化け物に弱点はないのか?
ふざけやがって!
「隊長!弾がもうありません!」
「全部か?」隊長が答える。
「はい!もう何も…残りのマガジンも使い果たしてしまいました!」
「くそっ!仲間の死体から一発でもいい!探せ!仲間の死を無駄にするな!」
みんな出来るだけ隊員の死体に近づく。隊長も一人の死体にちかづいた。
その隊員は顔に血を浴び、目は上を向いていた。
しかし、手だけは銃を離さずにいた。
隊長はその隊員に敬礼し、急いで銃を取り弾数を数えた。
弾はたったの三発しかなかった。
だが…無駄にはしない!
マガジンに装填してスライドをひいた。
弾は三発。
化け物は撃っても回復する。
狙うなら…アタマだ!
室谷隊長は壁から身を出し、シグP228のトリガーをひいた。
バンッ!
一発撃った。だがあたったのは肩だった。
化け物はひるむ。
バンッ!
二発目。
あたらなかった。あと一発。
化け物は体勢を立て直してきていた。
最後の一発。
よく狙いトリガーを引いた。
バンッ!と音とともに、最後の鉛弾が銃口から飛び出す。
グチャと音がした。
見ると化け物は頭を抑えていた。苦しそうに倒れていった。
やった!ついにダメージをあたえた。
奴らの弱点は頭だ!
「みんな聞け!化け物の弱点は頭だ!残りの弾を全部ぶちこんでやれ!」
それを聞いた隊員達が残りの弾を全て化け物の頭に撃ちこむ。
だが、ハンドガンでダメージが少ないのかすぐに立ち上がる。
くそ!攻撃はくらっているのに!
もっと強い武器があれば…!
まていやあるぞ!奴らの銃だ!
あれさえあれば…まだ希望はある。
だが弾はない。さっきの指示でほぼみんな弾を使い果たしてしまったはずだ。
化け物は少しずつ立ち上がり体勢を立て直してきていた。
もっと早くに気づいていれば…
…くっ、俺の…ミスだ。
室谷隊長は隊員達のほうをゆっくり見た。
隊員は何かと思い隊長のほうを見る。
「みんなすまん。俺の命令のせいで…」
「隊長…何いってるんですか!弾はなくなりましたけどまだ…」
「いや、私のミスだ。私があんなことを言わなければ…」
「隊長!諦めるのまだは早いです!なんとか体勢を立て直して作戦を…」
「作戦だが…みんなこの命令は…最後と思ってくれ」
「隊長…何を…」
「私は奴らの銃を奪い攻撃をする、そしてその間にお前らは逃げろ」
隊長は続ける。
「本田、林あとは任せたぞ。隊員達を無事に…」
「隊長…」
みんな悔しそうに泣きはじめた。
室谷隊長は少し笑いそしてゆっくり隊員達に敬礼をした。
そして「今までご苦労だったな」隊長は寂しそうに言った。
隊長はそう告げると、手で合図し行くように指示を下した。
隊員達は行った。
これで思い残すことはない。
ただ…一つだけ…。
室谷隊長は懐から一枚の写真をだした。
そこには、可愛らしい赤ん坊が写っていた。
まだ生まれたての新しい命。
もう一度…。もう一度家族に会いたい。
だが…それも叶わぬ願いか。
室谷晃久はフッと笑い、弾が無くなったシグP228を捨てた。
そして視線を化け物に向けた。
「さてと、御祈りも済んだし化け物退治としましょうか」
室谷隊長はすぐさま一体の化け物に目をつけた。
そして全速力で走り、化け物に体当たりをくらわした。
さすがの化け物もひるみ銃を落とした。
室谷隊長はすぐさま銃を拾い物陰に隠れた。
化け物達も隊長の姿に気づき銃を乱射してきた。
銃弾が後ろから飛んでくる。
カンカンッ、物に銃弾があたっているのがわかる。
怖い。
俺もあの化け物に、今俺が手にしている奴らの銃で殺されてしまうのか?
いや、死なない。俺には帰る場所があるから。
妻。そして新しい命のために!
俺は…俺は!!生きて、生きて帰る!家族の下へ。必ず帰ってみせる!
だから、こんな場所で…!!
「死んでたまるかー!!」室谷は叫び銃を乱射する。
一体、二体、三体次々に化け物が倒れていく。
いける!俺は生きて帰る!!
絶対に!?
急に体が傾いた。
肩が焼けるように熱い。二発の銃弾が体を貫通したのだ。
がはっ!口から血を出し、肩を抑えて室谷晃久は倒れた。
意識が盲ろうとする。
あと少しだったてのに…もうダメなのか?
すまん。俺は俺は情けない男だったよ。
約束の一つも守れないなんてな…
“必ず無事に帰る”
電話で妻と交わした約束が蘇ってくる。
もう…意識が…続かな…
隊長がまぶたを閉じようとした。
しかし、おかしかった。
いつまでたっても化け物が俺を殺しにこないのだ。
銃声は聞こえているのに…。
ハッ、感覚までおかしくなっちまってら。
どうやらもう死は近いらしい。
だが、どこかで聞いたことのある声に目が覚めた。
誰かが戦っている?
本田か?それとも林?いやそれはない。あいつらは他の隊員を連れて逃げたはずだ。
じゃあ誰だ?
室谷隊長はまぶたを開けた。
そこには、見た事がある姿。しかも何人も。
誰かが俺に話しかける。
「隊長!しっかり!良かった!息はしてるぞ!!」
そこには、本田の姿があった。
なんでだ…逃げたはずだろ?
本田だけじゃない。林も…逃げた隊員達も…。
そして、シグP228を片手に持ってこちらに近づいてきていたのは…
尾崎。尾崎大介だった。
「隊長。随分また派手にやられましたね」尾崎が優しく声をかける。
「ボロボロのお前に言われたくはないがな」そう言い返すと隊長はニッと笑った。
大介も無傷ではなかった。
顔には、弾がかすった後、服に弾が貫通しているのか赤色に染まっていた。
大介もニッと笑みを返し、そして隊長のそばの敵の銃をとった。
「大介!こっちは片付いた!後は頼む!」
「ああ、任せろ!」
隊長が大介に言った。
「奴らの弱点は頭だ!大介!」
大介は頷いて、その場を離れた。
「大介!」と言って近づいて来たのは山口有志だった。
大介が第一部隊のヘリに近づいている途中、山口と出会ったのだ。
どうやら山口も第一部隊のヘリを目指していたらしい。
「有志!これを使え!」
そう言って俺は奴らの銃を渡した。
「使い方は?」
「なーにアサルトライフルと一緒だ」
山口はフッと笑いマガジンを入れた。
「さ、行きますかね!」
そう言って俺達は、化け物に狙いを定め銃を撃った。
2012年 2月 13日
人類敗北の日まであと3日。
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