1章 出発
たまたま落ちていたをラジオをつけた。
つながった。良かった。まだ、ラジオ局は無事なようだ。
雑音がながれたと思うと、ラジオは語りだした。
人類の敗北を。キメラの勝利を。
2012年 2月 12日 AM 5:37
人類敗北の4日前
日本 自衛隊屯所
俺、尾崎大介はさっき家に電話をしたばかりだった。
もうすぐに、新しい命が生まれるからだ。
そんな感動している時に、ドタバタやってきたヤツがいた。
なんだよ…いい時に。
「おい、これを見たか?」と現れたのは雪村だった。
「雪村 篤」 俺の戦友で訓練所で共に成長してきた一番の友人だ。
「何だよ、この新聞の記事がどうかしたのか?」
雪村が持ってきたのは1枚の新聞の記事だった。
「いいから見ろって!」少し慌てているので、俺だけじゃなく他の仲間もその記事に注目した。
そこには大きい字でこう書いてあった。
『ロシアの村、町消える。ロシアの新たな兵器開発が原因か。』
「これがどうかしたのか?」
「実は、さっきたまたま室谷隊長の話聞いちゃったんだよ。例の極秘実験のこと。」
『例の極秘実験。』隊員達の中では少し噂にはなっていた。
なんだっけ…生化学実験とかなんとか…まあ噂だけど。
「で、それがこれとどういう関係なんだよ。」
「よく聞けよ。ここからがその問題点なんだ。」
雪村は一唾飲み込んでから言った。
「その極秘実験をおこなった場所がロシアなんだ。」
それを聞いた全員がいっせいに黙り込んだ。
「まさか…」
「いやいやないないって…」
「可能性はあるよ。あとそれともう一つ重要なのが…」
と、雪村が続きを言おうとした瞬間放送が鳴り響いた。
『今から緊急会議を開く。すぐ隊員達は会隊議室に集合せよ。くりかえす…』
「雪村。もしかして…」
「これかもね。」
そういって雪村は例の記事を片手で、わざとらしくヒラヒラゆらした。
2012年 2月 12日 AM 6:12
「多分、みんなこの記事を見てないやつはいないと思う。」
室谷隊長がしゃべりだした。いつもは冷静沈着な隊長だが今回は違った。
落ち着きがない。少し慌てているようだった。
それほど、何かヤバイ事がおこったにちがいない。
たぶん、『例の極秘実験』が、関係しているとは思うが…
「おまえらも、少しは耳にしていると思うが…」
隊長は、少しためらいそして、強い口調で言った。
「例の極秘実験のことだ」
やっぱり。俺は、わざと雪村の顔の方を見た。
雪村も「やっぱりな」という顔をしていた。
宝くじなど予想していたことが当たるのは嬉しいがこういうのは、はずれていてほしい。
隊長が話し出す。
「さっき政府(内閣総理大臣)から自衛隊出動要請があった。」
隊員達が騒ぎだした。
「何がおこったんですか?」と質問したのが、自衛隊第二突撃部隊の「山口 有志」であった。
山口とは以前、イラクでの物資支援で行動が一緒になり、その時に知り合った。
頭がキレて、戦場でケガした仲間をおいていけないとても友情に熱い男だ。
俺も、そんな山口が大好きだった。
その山口の質問に対して隊長は…
「詳しいことはわからん。ただロシアから『緊急事態だから、応援をよこしてくれとのことだ。」
それに対し、山口が反発した。
「それじゃ、わけがわからないじゃないですか!」
「私にいわれてもしょうがない、上からそう言われたんだ。」
隊員達は、また騒ぎだした。
さらに山口だけじゃなく、他の隊員達も質問をあびせる。
あたりまえだ。緊急事態と言われても、説明がたりなさすぎだ。
緊急事態?応援をくれ?ふざけるな‼
俺も怒りに満ちて、質問をあびせる。質問どころか、抗議になっていた。
それに、室谷隊長が机を叩いた。いや叩いたよりどついたと言ったほうがわかりやすいか。
「いい加減にしろ!」
隊員達は静かになった。隊長がここまで怒ったのは初めて見た。
「今はこんなことを言っている場合ではないんだ!とんでもない事になるかもしれないんだ!」
「…とんでもないこと?」俺が隊長に静かゆっくり聞いた。
「この記事を見ただろう、ここに書いてある事が…例の極秘実験が関係している可能生がでてきた。この極秘実験は国が絡んでいることもだ」
「…国がですか⁉」
「そうだ。さらに、その極秘実験には日本人の学者も数名いるそうだ。」
「じゃあ…」
「そう。他人事じゃない。国が絡んでいるし、その学者の安否も心配だ。」
すると、今まで黙っていた雪村が。
「その、ロシアの応援要請は日本だけなんですか?」
「いや、ほぼその極秘実験にかかわっている全ての国がそうだ。」
「それに…」
隊長が少し言いかけた。
「もう新聞にまで載っているんだ。マスコミが騒ぐのも時間の問題だ。いいか、時間の有余はない!このことは極秘任務とし、すぐにでもロシアに飛び立つ!心の準備をしておけ!以上!」
室谷隊長が言ったと同時に「イエッサー!」と返事をした。
隊員達は、すぐに準備をした。
こうして人類の存亡をかけた闘いが始まろうとしていた。
人類の敗北とは知らずに…
2012年 2月 12日 AM 9:17
ロシアへと旅立つヘリが空にまっていった。
俺もヘリにへと乗り込み、俺が乗ったヘリも空にまった。
風が冷たい、冬だもんな…
俺はロシアに旅立つ前に、妻に電話をした。
もちろん、極秘実験の事は内緒で。たとえ妻でも、そのことは話はしなかった。
ただ、すぐ帰ると。
「おい、尾崎!窓閉めてくれ寒いよ。」
「ワルい!今閉める。」
少し、会話で盛り上がっていたが、ロシアに近づくにつれ黙りこんでいった。
俺らがロシアにつくころには学者達を捜しているどころじゃなくなっていた。
なぜなら、もうすでにロシアはれっきとした戦場と化していたからだ。
だが、俺らはそんな情報は知らされていないし、知るよしもなかった。
2012年 2月 13日 PM 4:57
ロシア上陸
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