自称・天才くんは今日も天才的にポーカーフェイスで先生を論破する(注意:できてませんw)
オレは天才だ。
ものすごく天才だ。
もしかしたらIQ300はいってるかもしれない。
はかったことはないが、たぶんそれぐらいだろう。
もしかしたらもっといってるかもしれない。
なぜならオレは天才だからだ。
そんなオレは今日も放課後に一人残されて担任の教師から相談を受けている。
「だからさ、早川くん。早く高校卒業後の進路を決めてくれないかな? まだ進路を決めてないの君だけなんだよ?」
「ふ。何度も言ってるじゃないですか、郷田先生。オレの道はオレが決めると!」
「だからその道を聞いてるんだけど……」
「ふう、やれやれ」
と、オレは両手を広げて首を振った。
「郷田先生。チェスって知ってますか?」
「チェス? ああ、やったことはないが知ってるぞ」
「チェスってね、奥が深いんですよ。相手の駒がどう動くかを見極めて、自分がどう動けばキングを詰めるか。そればっかりを考えるんです」
「……うん、そうか」
「予期せぬ行動で自分のキングがいつの間にか詰まされている、そんなこともあるんです」
「……うん、そうか」
「相手に悟られないようにチェックメイトをかける、それがチェスです」
「格好つけてもっともらしいことを言ってるけど、言ってる内容は普通だぞお前」
「ふう、やれやれ」
と、オレはまたも両手を広げて首を振った。
「わかってないですね、先生。つまりオレの人生はチェスということです」
「言ってる意味がわからないんだけど……」
「ふ、これだから凡人は」
「君、軽くオレをバカにしてるだろ」
「今のオレは時代の先の先まで読んで自分がどう動くか、そればっかりを考えてるんですよ」
「だからその『自分がどう動くか』を早く教えてくれと言ってんだよ!」
郷田先生は頭を抱えながら「なんでこんなヤツがオレのクラスに……」とぼやき始めた。
嘆くな、先生よ。
これもオレが天才に生まれたからいけないのだ。
恨むならオレに『天才』というギフトを与えた天を恨むんだな。
「つまりなんだ。早川は高校を卒業したらどこにも進学しないし就職もしないということか?」
「天才のオレがそんな先のことまで考えてると思いますか?」
「考えろよ! がっつり考えろよ! なんなら今すぐ考えろよ!」
「そんなに生き急いでたら早死にしますよ、先生」
「オレはお前のせいで早死にしそうだわ!」
「そんなに言うなら決めました、先生」
「お、決めてくれたか?」
「オレ、小説家になります」
「頼むから現実を見ろー!!」
芥川賞作家となる日も近い。
お読みいただきありがとうございました。
こちらはラジオ大賞4応募作品です。
テーマ:天才、チェックメイト、若干ポーカーフェイス含む




