5
桐谷はドローンをクルーザーに戻そうとしてやめた。
それは危険だ。
桐谷はドローンを島の上に置き去りにして、その場を後にした。
必要なものは二つだ。
カメラ付きの大型ドローン。
そしてもう一つ。
大型ドローンはすぐに買えた。
もう一つは少しばかり時間がかかったが、手に入れることができた。
準備は整った。
――明日だな。
桐谷はそのまま眠りについた。
次の日の早朝、桐谷はクルーザーを走らせた。
目的地はわかっている。
一直線に向かう。
お昼前には島に着いた。
さっそくカメラ付き大型ドローンを飛ばす。
ドローンの下には箱がぶら下げてある。
その箱がごそごそと動いている。
映像を見ながら蛇を探した。
見つけた。
小さいがこの島で唯一動くものだ。
見つけることはたやすい。
ドローンをいったん蛇の前に下す。
すると箱が開いた。
地面に接すると箱が開く仕掛けなのだ。
箱から一匹の動物が飛び出した。
イタチだ。
イタチは最初、きょろきょろとあたりを見回していたが、やがて蛇に目を停めた。
真っすぐ蛇に向かう。
ドローンでその後を追った。
イタチは蛇にたどり着くと、そのまま噛みついた。
――やはりな。
桐谷は確信を持った。
あの蛇はバジリスクなのだ。
ギリシャ語で小さな王と言う意味だ。
蛇型の怪物で、その身体から猛毒をまき散らしている。
それはバジリスクの上を飛ぶ鳥ですら死に、地に落ちると言う。
バジリスクを馬上から槍で指した男は、猛毒が瞬時に槍をつたい、死んでしまったと言う。
乗っていた馬ともども。
そしてバジリスクが見たものは、石と化すそうだ。
さくやの恋人の友樹が石になっていたのは、バジリスクに見られたからだろう。
さくやの死体がないのは、石になる前に猛毒に侵され力尽き、そのまま海に落ちてしまったと思われる。
最初の漁船の男もそうだろう。
そしてイタチだ。
全ての動植物の命を絶つと言われるバジリスクの毒だが、なぜかイタチにはいっさい効かないと言う。
そしてイタチはバジリスクを捕食するのだそうだ。
現に桐谷が見ている前で、バジリスクはイタチに喰いつくされてしまった。
なんで神話に出てくるような怪物がここにいるのかはまるでわからないが、あれがバジリスクであったことは間違いがないだろう。
桐谷はすでに毒に侵されているであろうドローンを島の上に捨てた。
そして島に向かって手を合わせた。
――さくや、お前の仇は取ったぞ。
と。
終




