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ある男性のお見合い

作者: 山川 友秋

12月22日。どんよりとした冬の空に、北風がビュービューと吹き凍てつくような寒さだ。そんな天気の中、ビル街の歩道を歩く背広の男性、宮沢徹は足早に急いでいた。

今日は、人生で初めて女性と見合いをする日である。

目的地の到着予定時刻は午前9時30分頃。約束の時間は10時だからあと30分ぐらいあるが、宮沢のはやる気持ちがその時間を忘れさせる。

落ち着け、落ち着け。

俺は何を焦っているんだ。

相手の女性はそこまで自分に期待するはずがない。

彼は冷静になろうとして近くのコンビニのトイレに入り、トイレの鏡でもう一度自分の顔や髪形、服装を見た。

短髪で両側は綺麗に刈り上げ。背広も黒光りして真新しい。

彼はこの日のために前日散髪屋に行き、服も長年使っていた背広から買い換え新着にしたのだ。

「大丈夫よ。徹はハンサムだから。きっと相手も気に入ってくれるわ。」

家を出るとき母がそういって励ましてくれた。確かに自分でも鏡に映っている顔とスタイルだけなら並みより上と思うのだが・・・。

「わからないぜ。だって母さん、相手はまだ20代。凄く美人で、その上、職業はアナウンサーって聞くからさあ。俺なんか年はいっているし・・・。」

宮沢はもう年齢は30後半差し掛かっているのにもかかわらず、仕事は派遣だ。

彼が新卒のとき、就活に失敗してからはずっと今まで派遣職員。何度も正規職員になろうとし採用試験を受けたり、企業の説明会にも足を運んできたのだがことごとく落とされている。年齢や中途採用という条件を考えると当然の結果かもしれないが、そのことが彼の今の性格に影響を与えてしまったのも事実であった。

そんな弱気で不安そうな顔をする息子を母は「世の中はあんたが思っているほど、高学歴、高収入、高身長の男がいいというほど単純じゃないと思うけどね。」と笑った。


午前10時ちょうどから始まった見合いは10分から15分程度で終わった。宮沢は何をいったのか覚えていない。ただ相手の女性はハキハキとしゃべり、気が強い印象を感じた。目が細く、痩せてはいたが背が高く胸や腰など出るところは出ているような体型だった。そんな彼女が"敢えて宮沢のことをあまり聞かない"のを彼は直感的に感じた。彼女が自分に尋ねたことは「今日は顔色が優れないのですか。」と聞いたことぐらいである。宮沢は完全にこの女性に圧倒されてしまった。

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