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プロローグ

 どこから話したものか。


 この大陸『ネフタリ』はかつて混沌のるつぼだった。あらゆる場所で戦火が巻き起こり、同種族、他種族を関係なく殺し合いが続いた。

惨憺たる時代。川は血で染まり、骸の山が至る所に積みあがった。

 だが、転機が訪れる。

 一人の英雄が現れたのだ。英雄は圧倒的な力を持ってすべての勢力を制圧し、大陸は一つの国家に統一された。

 帝国の誕生である。

 人間を中心としたこの国家が他種族から万全の信頼を得ていたわけではない。しかし、戦火が絶えなかったこの混沌の地において絶対的な力は一定の平和と安寧をもたらした。リンゴ一つと子供一人が交換されることもなくなり、パン一枚を巡っての殺し合いが起きなくなった。

 人間達は歓喜し他種族も――あの高飛車なエルフでさえも控えめな喜びに沸いた。英雄は賢人を全土より呼び寄せる。種族も地位も関係なく能力があるものは取り立てられ帝国は興隆しいった。

 理想的な治世。人々はこの繁栄が永遠のものだと錯覚した。


 変質しない理想はなく、腐敗しない権力は存在しない。


 英雄の死後、帝国は少しずつ、だが確実に腐敗していった。

 国家と民草を富ませるため特権を与えられた官吏達は己の私腹を肥やすために働くようになる。彼らはやがて貴族と呼ばれるようになった。

 人々が立ち上がることはなかった。どれだけ醜い権力闘争があろうとも自分たちとは無関係であるように思えたのだ。明日のパンには困らないし、高慢な兵士や貴族が街で威張り散らしても、自分より弱いものを見下し留飲を下げられるのだから。

 かつては自由だった職も多くが制度化された。職に就きたいものは帝国の定める学校へ通い免許を取る必要があった。魔物を退治する冒険者たちも自身らのギルドを作りその利権を守る。

 制度が出来てから免許を持たずに仕事を行うものは『モグリ』と呼ばれ蔑まれた。


 時は移り今から十五年前、帝都セントラルにてある事件が起こった。帝都の中央広場にて巨大なダンジョンが姿を現したのだ。帝都の中央にある魔物の巣を放置するなど威信に泥を塗るようなもの。


ダンジョンを踏破し魔物を一掃せよ。


皇帝の勅令が下る。さらには莫大な報奨金。貴族は功名心のため、冒険者は富のため迷宮に挑んだ。


 結果は、全滅。


 事態を重く見た帝国政府はダンジョンを封鎖。一定の力量がある者にのみ探索を許可する方針に変更。

 それから現在までダンジョンの踏破者は現れていない。

 やがて、帝国中である噂が流れ始める。

 ダンジョンの最深部にはあらゆる願いを叶える秘宝が隠されている。それこそが帝国政府が大金を出す理由だと。


 この物語は帝国の掃き溜め、港町『テベス・ベイ』から帝都『セントラル』へモグリの剣士が旅立つことにより始まりを告げる。

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