翠三葉は翠朋也で出来ている
沢口たちは今井の組織について何も分かっていないのと同じ状態だったが、四葉たちは違った。
しかし、四葉たちも高額なお金で人身売買、臓器売買などを闇で取引している組織の存在は把握できたが、その組織の実態については始めはまったく手掛かりを掴むことが出来なかった。
末端の実行犯を捕まえることはできても、組織の全容、幹部やトップの人間については全く情報を得られなかった。
だが、粘り強く一人の買い手に張り付いていたおかげで、あるキーパーソンを見つけたのである。
それが、安田という男だ。
そして、この安田を徹底的にマークした。
その成果が実ってトップである今井に行きついた。分かってみれば、今井の作ったこの闇ルートは実に合理的機能的に出来ていた。今井と安田以外の人間はその場その場で雇われた切り捨てられる人間ばかりで、実にうまく機能するようにできていたのである。運も味方につけ安田を見つけられたことで組織のそのシンプルな全容を掴めたのだった。
沢口は今井の執拗なまでの周到さを知っている。
「手下とはいえその今井が唯一信用している安田という男のしっぽをよくつかめたな」
と称賛を込めて四葉に言った。
「三葉の能力のリミッターなんだと思う?」
急に変わった話題に沢口は少し考えてから、
「朋也、信じた人間にしか使えない」
と答えた。
「そうだ、三葉の能力は三葉がこの人を助けたいという感情に反応する。そして私たち四人は生まれた時からそういった愛情のような感情に疎い、それは遺伝的な要因が大きいと思うが、洗脳的要素もある。博士は一番初めに三葉が信用できると確信した相手にそのすべてをつぎ込むように仕向けた。だから、三葉の能力が100パーセント発揮できるのはその相手、トモヤだけだ。だが、三葉が信じた人間にはトモヤほどではなくても能力を発揮できるはずだ」
「そうなのか」
沢口は素直に感心する。
「そして、私のリミッターは人ではなく感覚だ。私は特定の音に100パーセント近くの能力を発揮できる。私たちの能力開発が一般的には使えないと分かった時、私も施設を出て自由を手に入れた。そして、三葉と違って私の能力には応用が利いたから、今の仕事をパートナーと立ち上げた。相手に発信機をつけることなく、私が一度その声を確認できれば、離れたところでの盗聴も可能なんだ」
「それは、本当にすごいな」
沢口は驚きを隠せなかった。
「そうはいっても初めはそう使えなかったんだが、ある程度の障害物や距離があってもそれが可能になるような、受信用の補助機器の開発に成功してね」
そう言って、後ろに控えたほとんど口を利かない男に微笑んだ。名前以外の紹介をされなかったが、この男がパートナーだと、沢口にも分かった。
「そんなわけで警戒されるような接触なく安田を監視することが出来た。だから、今井を確認することもできた」
沢口は今井の潜伏先のマンションの下で車を止めた。
安田には八木が張り付いている。
今井の監視網に発見され逃げられるのを警戒して、今井が自らマンションから出てきたところを確保する計画だ。
そして、今井が外に出てくるほどの事態、それを三葉と四葉がこれから起こすのだ。




