表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
翠三葉(あおいみつは) は 翠朋也(あおいともや) で出来ている  作者: 椛こま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/44

翠三葉は翠朋也で出来ている 



凜にはある目算があった。

その目算が外れていればどんな悲劇が待っているか分からないが、それでもその賭けに勝つ自信があった。

わざと空き家を用意して孤独な若者を誘い、攫っている者が組織的な悪党ならば、その目的は金という事になる。

勿論、人身売買で売られえる人間の使い道は色々あると思うが、性的な目的以外なら臓器売買ももちろんしていると睨んだのだ。

そして、自分はそういった意味でレアな血液を持つ商品となり得た。

稀血。

凜の血液型はそう区分されるものだった。


「お疲れ」

薄ら笑いを顔に張り付けて今日も男はやって来た。

「今日で最後のお仕事だ。さあ行こうか」

そこは初日と同じ場所だった。

そして初日に見たような長い筒状のものが置かれていた。

男がその筒に手を置いて優しく撫でた。

「今日のこれ、お宝だから、丁寧に扱えよ。出して、身体を清拭して、着替えさせて、あの箱に移動だ。とにかく丁寧扱え。かすり傷一つつけるなよ」

男は念を押して出て行った。

三日間水しか飲んでいない、朋也もアキも倒れはしないが身体に力が入らなかった。初日と同じくカッターを使い筒を切り開いた。

カツッと刃が何かに当たる。

「堅い」

初日の中身は緩衝材に包まれていた。

でも今回は違う。二人はゆっくり慎重に段ボールを切り開いていく。端まで行くと真ん中から毟るように段ボールを剥す。

中から透明な楕円上のカプセルのようなものが出てきた。SF小説の中に出てくるような冷凍カプセル、その中に女性が一人横たわっている。

「凜さん・・・?」

カプセルに向かって朋也が呟いた。

「リン?この人を知ってるのか?」

朋也の声に反応しながらアキはカプセルに近づいた。

中央側面についた窪みに手を入れカプセルを開く。

カプセルは音もなく開いた。

顔を確かめようと朋也も近づく。

「やっぱり、凜さんだ」

髪の毛を剃られていたので人違いかとも思ったがそれは凜だった。

朋也は息を呑んだ。

「なんで?」

情況が把握できない。

ふとアキを見ると、アキは顔を覗き込むよう近づいたまま固まっていた。

「あきお?」

朋也は呼びかけた。アキはピクリとも動かない。

「どうした?」

朋也が肩に手を置いた瞬間、アキはバネ仕掛けのようにその手を掴んだ。

「なんて言った?」

「はっ?」

朋也には状況が掴めない。

「名前、言っただろう?」

アキの声音が変わった。

「あっ、ああ。凜、野坂凜っていう人なんだよ」

ぐるんと首だけ動かしてアキは朋也を見つめた。

「のさかりん?」

「ああ、知り合いだ」

「知り合い?」

アキは自分の頭の中を整理するように朋也の言葉を繰り返した。

朋也はアキの手を振りほどいた。

情況は分からないが、このままではまずい。そう直観した。

「あきお、動け。体を風呂に運ぶぞ」

そうアキの耳元で強く命令した。

その言葉にアキも反応してゆっくりとではあるが足元に回った。二人はバスルームまで凜を運ぶと、朋也が凜の身体を洗った。

アキは凜を運び入れる方の箱を開けに行く。長方形の木箱の蓋をあけると、やはり透明のカプセルが出てきた。そこにはマットレスが引き詰められていて、簡易ベッドのようになっている。

そこに着替え一式が置いてあった。

真っ白な手術着のような上下とシャツとオムツ。

アキはそれらを掴むと朋也の所まで戻る。バスタオルで包んだ凜を床に置き、朋也は丁寧に腕を拭いていた。そして、凜の脇の下にベルトのバックルの裏から剥したテープで発信機を張り付けた。

アキから着替えを受け取り二人で素早く服を着せる。

二人は新しいカプセルに凜を運び、寝かし、箱の蓋を閉めた。

そして、その場にしゃがみこんだ。

「あきおも凜さんを知っているのか?」

朋也の口は全く開いていないが声が言葉になった。

「うん」

アキはそれだけ答えた。自分は朋也のような技は使えない。

でもその瞬間だった急に眠気が襲ってきた。「ヤバい」本能的にそれがわかったがもうどうしよもなかった。

薄れゆく意識で朋也を見る。

朋也も同じようにアキを見つめていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ