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翠三葉(あおいみつは) は 翠朋也(あおいともや) で出来ている  作者: 椛こま


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翠三葉は翠朋也で出来ている 


朋也とアキは一旦仕事から解放された。

だが、朋也は家には帰らなかった。

今井に間をおかず次の仕事があることをほのめかされたからだ。

そして、その仕事は本当にすぐに入った。

指示された場所で待っているといつもの迎えがやって来た。そして耳栓を入れられ目隠しをされ車に乗せられた。

車が1時間走った後、朋也は車から乱暴に下ろされそのまま放置された。

何も見えず聞こえない、この状況に訓練を受けているが恐怖を覚えた。

車に乗せられてからずっと秒を刻み続けていた、暗闇で放置され30分ぐらい経った後でやっと目隠しと耳栓を外された。

目の前には同じく解放されたアキと初めて見る男が立っていた。

「こっちだ」

男は顔で方向を示す。

二人は男の後を付いていった。

薄暗い部屋に連れていかれた。その部屋には段ボール紙で覆われた筒のような形態の物が六つ並んでいた。

「筒の中身を出して、こっちの箱に移せ」

それだけ言うと男は去って行った。

朋也はアキと顔を見合わせた。

「何これ?」

アキにも答えられないと分かっているが聞いてしまう。

「さあ」

アキは首を傾げる。

「そうだよね」

朋也は笑った。

「ちい、こっち持って」

アキはすぐにも作業に移った。

「はーい」

朋也も気持ちを切り替える。

置いてあったカッターナイフを手に筒の両端に移動した二人は同じと思われる位置に切れ目を入れた。

そして、そこから真っすぐ切り裂きながら横に移動した。

筒の縦幅は2メートルぐらいか、二人は真ん中で背中を合わせた。

二人の切れ目が合い、包んでいた段ボール紙が割れる。中から緩衝材に包まれた白いものが現れた。

箱に移すために二人はまた両端に別れた。

「何だこれ?」

移動した朋也の口から驚きが漏れる。

その声の切迫感にアキが駆け寄った。

「!」

アキも息を飲む。

全体を不透明な緩衝材に包まれていたその物だったが先端部の一部が半透明になっていたのだ。そして、その下に透けて見えたは人の鼻と口だった。

そこだけ、通気性があり呼吸ができる様になっていたのだ。

二人は黙ってそれを見つめた。

人身売買。

朋也の頭の中でその言葉が走り回る。

生きてはいる、薬で眠らされているのか?

朋也はしゃがみ込んで耳を近づけた。

呼吸音を聞くまでには至らないが、生きている、そう確信する。

アキを振り返る。

アキの表情はいつも通りに戻っていた。

「運ぼう」

アキは自分の位置に戻る。

「・・・ああ」

朋也も自分を立て直した。

両端を持って棺桶のような箱に運び入れ直す。

二人は黙々と作業に没頭した。

6体の身体を詰め終わった時には朋也は労働力に伴わない疲労を感じた。

何だこれは?

想像もしていなかった。

今井は組織的に人身売買をしているのか?

事の事態に考えが追い付かなかった。

「はーい。お疲れ」

作業が終わったのをどこかで見ていたのだろう案内の男がまた現れた。

「今日の作業はこれで終わりだ」

ポンポンと朋也の肩を叩く。

「随分疲れているようだけど。まっ、ゆっくり休んで体力回復しておけ」

男は口元を歪めると、また先に立って歩き出した。

「付いてこい、部屋に案内するから」

案内された部屋は簡素なホテルといった仕様だった。ベット2つと簡単な机、トイレ、バス、お湯が沸かせるように電気ポットが置いてあるが食べ物はなかった。

着くなり朋也はベッドに仰向けで倒れ込んだ。顔を両手で覆い天井を見上げる。

「知っていたのか?」

アキに問うた。

アキもばったりとベッドに倒れ込む。枕に阻まれくぐもった声が聞こえる。

「ああ」

朋也は顔を覆っていた手を丸めた。暫くそうして動かなかった。

「人を追ってここまで来た。ちいは?」

また手で顔を覆う。

「俺は今井に張り付いていただけだ」

「そうか」

アキはうつ伏せたまま話す。

「ここ監視されてないと思った?」

「どうだろうな、ここまで見せたんだもう帰すつもりはないだろう。死んでも誰も気づかない人間だと分かったら、ここに連れてこられたんだろうし。カメラはついてるとは思うけど」

「だね、僕もそう思うよ」

「これからどうするつもりだ?」

「ここに辿り着く事しか考えてなかった」

「はあ?」

朋也は起き上がった。

「アハハ、随分口調が違うね。」

「そうか?」

「竜さんが、刑事かもって言ってた。本当かどうか、僕は半信半疑だった。よかった、本当に刑事さんなんだ。じゃここから逃げれるよね?」

アキは枕から顔を上げて起き上がった。

お互いベッドに座って向き合った。アキの瞳は真剣そのものだ。朋也は苦笑いで答えた。

「そうならいいが、俺にも分からん」

「そんな頼りないな」

二人は力なく笑った。

「まだ、ここに居ると思うか?」

「ううん」

朋也は初めてアキに会った日の事を思い出した。2年近く前だ。その子の命があったとしてももうこの国にいるとは限らない、国内にいたとしても無事とは限らないそういうことだろう。アキはまたベッドに倒れ込んで枕に顔を埋める。

「僕らが以前やった仕事、あの荷物運び、あれを前にやったことのある男を捕まえて聞いたんだ。その男、偶然積み荷を見たんだよ。四角い箱にぎっちり人間が詰まってたって言ったよ」

「よく聞けたな」

「話した方がいいって思いさせたから。痛みに詳しいんだよ、僕」

朋也は枕で顔が見えないアキの後頭部を黙って見つめた。

「これから、どうするかだな」

朋也もまたベッドに横たわり枕を抱え込む。

「外と連絡は取れてるの?」

「ここに来る前に連絡はしたがそれだけだ。ただ、身体に発信機が入っている。でも、感度は狭い範囲だ。こんな場所でどこまで有効かは分からない」

たぶん、三葉のほうが優れている、そう朋也は思っている。

「ここの構造と、他にも積み荷があるのか知りたいな」

アキの呟きに朋也は頷くと仰向けになって枕を放り投げた。

「いったい、何なんだよここはよぉ」

叫んだ声は壁に吸い込まれるように消えた。


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