翠三葉は翠朋也で出来ている
今井からの倉庫への配達の仕事を三回こなした後、朋也はアキオと組まされて仕事をすることになった。顔見知りだということが今井に知れたからだと思う。
初めて倉庫で会った時からそのことを隠そうと思ったこともなかったが、自分たちの行動は監視されていて今井には筒抜けであることを確信する。
アキと組んでの仕事も内容には変わりはなかった。
中身の知れない荷物を運ぶだけだ。
初めの仕事に比べて積み荷は大きくなっていて、更に得体が知れない。
しかも積み荷を降ろすこともなく指定の倉庫に運ぶ、そして荷台を切り離す。そして別の荷台に繋ぎまたそれを別の場所まで運ぶ。そこでまた荷台を交換する。それを繰り返す。
今日もその仕事を終えたばかりだ。
朋也とアキは今井に指定されたホテルで最近は寝泊りしていた。
部屋に入る。
仕事中と変わらずくだらない会話をしながら、冷蔵庫からビールを取り出し、その縁をコツンと合わせた。
スピーカーからは、テレビのバラエティー番組の音と笑い声が聞こえている。
「何か変わった事はあったか?」
今井はスピーカーに張り付いている部下に声を掛けた。安田というこの男は組員だったころに命を救ったことで、神の様に今井を崇拝していた。
組を潰した後、安田だけを連れて今井は行動しており、唯一自分を裏切らない人間として信用している男だった。
「変わりないっすよ。テレビ見てくだらない話して、寝る。その繰り返しっす」
今井は答えず、スピーカーに耳を傾けている。
安田は黙ってその姿を見つめた。ゾッとするほど疑い深い、それが今井という男だ.
しばらく二人の会話を聞くと今井は、「続けろ」というように手を振った。
そのまま、部屋を出て行く。
「相変わらず、怖い怖い」
安田は呟くとビールを片手に自分の仕事に戻った。
ベッドに横になり朋也はアキの寝顔を見つめた。
一体何を調べているのか?
一緒に仕事をするようになって、すぐに気が付いた。アキは何かを探るためにこの仕事をしていると。アキの方も朋也にその事を隠す様子は一切なかった。
まったく声を出さず、または口では普通に会話をしながら、PCで何かを探っていたり、倉庫では監視カメラの死角を見つけてトラックに細工をしている。
その行為を初めて見せられた時は目を疑ったほどだ。
つまり、正体を知られているとは思わないが、アキも朋也をただのチンピラだと思っていないということだ。
朋也は今井が何かしているのではないか?と探っている。が、アキはその何かを知っていると思われる。
今井の悪行ではなく、証拠を探しているのだと。
自分の正体を明かして、何を知っているのか確かめようかという思いが朋也の脳裏に浮かぶが、すぐにそれを否定する。
警察だと知られてはいけない。
手掛かりがまったくない自分の焦る気持ちが、思考を鈍らせていると朋也は首を振って考えを改めた。
こうして一緒にいるのだ、その内にそれが何かは分かるはず。
アキがどういう考えで自分に手の内を晒しているのかは解らないが、いざとなったら巻き込まれるのは必須なのだ。
朋也も覚悟を決めて行動しなければならない、もう戻れるポイントはとっくに過ぎているのだから。




