3.クライアント顔合わせ
城は、それなりに城というか・・・形はちゃんとファンタジーの城なんだけど、サイズ感がちょっとと・・・なんというか地方にあるラブホみたいだ。(個人の感想です)
少し驚いたのは、水圧か油圧かわからないけど原始的なエレベーターがあったこと。(ただしむっちゃ遅い)魔法の応用って感じでもなさそうで、なんだか世界観がわからなくなって来たぞ。
五分くらいかけてエレベーターは最上階の大広間の扉の前に着いた。
広間はちょっとした体育館くらいの広めな空間で、高価そうな床や壁の石材に、よく見ると小さな宝石がところどころ埋め込まれている。
中心には深緑のカーペットが一直線に敷かれ、その先に十段程の高さの玉座が一つだけ、そこに王様がいた。王座の一段下には大臣とか神官?あと王女っぽい女の子がいる。
「そなたが新しい異邦騎士か。」
「はい、国王陛下。」
俺は深々と礼をする。
この世界の常識や礼儀はまだわからないが、王様と目線を合わしても大丈夫かとか、立ち方とか、周囲の大臣クラスと兵士の立ち方の差異なんかから振る舞いにあたりをつける。
俺についてきた三人の兵士は俺の後ろで膝立ちだが、俺はかしずかない。須賀さんが後でわざわざ姿を現すという以上おそらく交渉の主役は菅さんだ。敬意は示しつつも、須賀さんが来るまでは必要以上に立場を下げないことにする。
別に貴族とかファンタジー世界の礼儀を知ってる訳じゃない。見えない相手のルールを探りながら交渉に有利な印象を与える。新規クライアントと顔を合わせるときと同じだ。仕事としてやるからには派遣暦12年、いろんな現場で実績を出してきたプライドがある。観察力や空気読みのスキル、交渉術を総動員して成功させて見やる。
神官が何やら呪文を唱えると、俺の前の床の宝石がいくつか光り出し、魔方陣になって須賀さんのホログラムみたいなものが現れる。
「召喚に応じ推参した。第3異邦の半神、パライフェル・スガである」
表面上は真面目な顔で、内心大爆笑した。感情を見せない、これも販売の現場でクレーマーや迷惑客に対応し続け身につけたスキルだ。
『半神(笑)!パライフェル(笑)!』
『うるせー黙れ』
須賀さんも表情を崩さない。流石半神(笑)である。
それからしばらくは王と須賀さんで話が進んだ。1時間くらい王と須賀さん、たまに神官と大臣で話が進んだので簡単にまとめると、この国はダルハデルリ。王政で男社会、だから女王はこの場にいなくて、王女がいるのはこの後役目があるんだって。
異邦騎士について詳細な情報は得られなかったけど、この世界からアクセス出来る別の世界の神に願いが認められると、その使いとして送られてくるらしい。え、パライフェル(笑)須賀さんってマジ神なの?本当に?
今回の願いはこの国を脅かす謎の魔の存在がいるらしく、それを見つけて解決して欲しいとのこと。その手下の通称北の魔女が国の北側に砦を築いていて、あまりに強力な魔力で誰も近づけないため、それを退治するところから頼みたいそうだ。まぁ、この接見が終わったら元の世界に戻って降りてもいいって話だから、俺にはあんまり関係ないかもね。
儀礼的な事と国王からの依頼内容などがまとまると、ようやく俺に話が振られはじめた。
堂々と自己紹介や聞かれたことへの返答を、礼儀なども相手に合わせてそつなくこなす俺を見て王や大臣たちも今までの異邦騎士よりも頼れそうだ、などと期待を口にする。世界を救った経験などを尋ねられたので、「戦士としての力が特に高いわけではないですが」と前置きしてから、「知恵と交渉力、時に一団を率いる統率力で小さな世界は幾つか救いました」と答えるとどよめきが起きた。売り場の救世主的な意味では嘘は言っていないのでセーフである。
俺に興味を持った王たちが質問を続けようとしたが須賀さんが遮った。
「十分でしょう。私は騎士を派遣するだけの理由を認めた。王よ、あなたはこの者を足るものとして認めた。この者を繋ぎ止める贄と式を。さあ」
「よかろう。モララ、前へ」
王の言葉で王女が俺の前へ進んできた。須賀さんは念話で短く
『童貞じゃないよね?』
と聞いて来た。
『彼女もいるアラサーですが?』
『じゃぁ照れないで、堂々としてて』
何を?と返す間もなく王女がキスをしてきた。思わず身を引きそうになったが、須賀さんの言葉の意味を理解しそのまま受け入れる。柔らかくて、甘いキス。そういや彼女としばらくキスしてないな・・・などと思っていたところで王女が身を引くと、俺の足元の宝石達が光り出し、須賀さんのとは別の魔方陣が一瞬表れ、そして消えた。悔しそうな感情を隠しきれない王女・・・モララの顔が脳裏に焼きつく。
同時に何か力漲るのを感じ、須賀さんに説明してもらおうと念話を飛ばそうとしたその瞬間それどころでない事態が起きる。突然俺達と王の中間くらいの位置に黒い煙のようなものが湧き出すと、ものの3秒程で直径2メートルくらいの球体になり、すぐ消える。その後にはさっきまでいなかった黒ずくめの老婆が一人立っている。
王が叫んだ。
「北の魔女・・・!」
更新遅めで申し訳ありません。週1から、遅くとも2週に1回くらい投稿できればと考えています。
次回で物語のカラーをはっきりお見せできると思います。その後もきちんと「家電店のメーカー派遣」を活かした展開を考えて先は決めてありますので気長にお付き合いください!




