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異世界派遣社員とか正気ですか?!  作者: 二段熟カレー
2/5

2.事前打ち合わせ

 あ、えーと、俺の名前は安生健太。31歳。

 派遣会社の登録に来たら異世界転生して・・・あれ、どうなんだ、俺死んだっけ?死んでなくない?


 ええと、その、気付いたら異世界(多分)に転送か転移のどっちかをしてて、転職する為に初めて行った派遣会社で手渡された魔法おそらくの杖を使ってゴブリンの大軍を退けたところ。訳わかんないよね?俺もわからん。


 先週までは、みんな知ってる家電量販店でみんな知ってるインターネットメーカーの営業スタッフとして勧誘をしてた、普通の社会人だった。

 一応、店の中では成績はトップだったし、自社商品以外も売りまくってたので、店長にも気に入られ、ノルマが厳しい時なんかは『売り場の救世主』とか言われたりはしてたけども、異世界を救うとかは全然専門外!


 戦闘が終わったらレベルアップしたり女神が能力を授けに来たり、・・・せめて派遣会社の担当・・・確か須賀さん?が説明に現れたりくらいはするかと思ったが、何の変化もなかった。

強いて言うなら軽い耳鳴りにがする事に気付いたくらい? で、そのまま馬車に乗せられ、今は王城に向かっている途中である。

 幸い言葉は通じるみたいなので情報収集している。まさか能力が翻訳だけ、とかないよね?


 この世界はスヴァン・フィン。

 といっても兵士たちは世界の仕組みとかに詳しい訳じゃなくて、母なる大地くらいの意味で使われる言葉らしい。宇宙とか異世界とかを理解してる奴はいなくて、こいつらが知らないだけなのか本当に宇宙のない世界なのかはまだ不明。


 とりあえず、俺が現れたのは予定通りらしく、異邦騎士と勇者は別物で、勇者は勇者でいるらしいが詳しく知っている奴はいなかった。少し前にも異邦騎士はいたが、突然姿を消して、俺はその後釜ってことらしい。


 メーカー営業の立場で培ったトークスキル(異世界スキルじゃないのであしからず)で馬車の中の兵士達との距離を縮めて、彼らの事も聴き出した。

 右も左もわからない土地だから、味方は多いに越したことはないからね。


 大柄ないかにもファンタジーの兵士っぽいのが父を魔物に殺されて兵士になったガル・ダン。蜂蜜酒好き。

 頭の良さそうな、まだ10代のイケメンがボダダ・ユニ。少しだけ、おまじないに毛が生えたくらいの魔法が使えるらしい。

 そしてさっきから俺を気遣ってくれるかわいい女子がウルル・マバ。まだウブな感じの真面目な子だ。


 ステータスとかレベルとか属性とかについて聴いてみると、兵士達は概念自体知らないらしく、ちょっと不安になってきた。

 いきなり異世界に連れてこられて、チートどころか普通の兵士より体力のないまま戦わされて死んだりしないよな・・・変な耳鳴りも止まないし・・・あ、耳鳴り、でかくなってる。

 初めは意識しないとわからないくらいの『スーン』だったのが、どんどん大きくなって、もう『ヴィィイイイン!』くらいになってきている。


「ほら、城門が見えてきましたよ」


 そう教えてくれる可愛いウルルの声もフィルターがかかったようにくぐもってよく聞こえない。詰んだ・・・きっと転移の時に放射能かなんかを浴びたんだろう。俺死ぬんだ・・・

 あん・・・くん・・・

 ほら、幻聴まで・・・あんじょうくん・・・うるせえな・・・ん?


「派遣の・・・須賀さん?」

『派遣は君。派遣会社の須賀さんだよー』

「おい!これ一体」

『はい、ちょーっと落ち着こうかー?まわり見てみてー?』


 馬車の中の兵士達がぽかーんとした顔でこっちを見ている。もちろん須賀さんの姿はなくて、声もみんなには聴こえてないみたいだ。一人で叫んでしまった。恥ずかしい。


『大丈夫、テレパシーみたいなものだから考えるだけで双方向だから。やってみてごらん?』

『まじかこのクソビッチ』

『筒抜けなんですけーどー?』

『まじだこのクソ、いや、いきなりこんな状況に放り込まれたら怒るでしょ普通!』

『今アタシに見捨てられたら君この後どうするの?』

『うっ』


 意識を少しだけ押し出す感じで話すのはなんとなくわかって来たので、須賀さんとの念話は一回中断する。


「みんなごめん、俺の世界の上司・・・神からのメッセージが聞こえてきてつい」

「おお!今度の異邦騎士様は神に通じる力をお持ちなのか!」

「あ、いや、たまに一方的な指令が来るだけなんで特別な力はないんだけどね」


 なんとかその場はごまかす。神、という単語が効いたのか、兵士達のまなざしに少し尊敬の色が乗る。真面目なウルルなんかは感動を隠しきれない目で俺を見ていて、正直・・・興奮する。


『はいはーいアラサーのオッさーん?』


 クソビッチが。今度は意識の表層に出してないからわかるまい。


『表情と感情の色で大体わかるぞー!』

『派遣会社の美人担当須賀さん、なんのご用ですか?』

『説明が足りなかったのはごめん。』

「へっ?」


 一方的な印象しかなかった須賀さんの謝罪に思わず声が出てしまった。外を観ると丁度城門についたタイミングだ。


『今すぐに全部説明してる時間はないんだけど、とりあえずこの後は危険はないんで安心して』

『説明できないってそんな』

『この後すぐ王と面会なのよ。そこではアタシもホログラムみたいなやつでフォローできるから。』

『王っていきなり言われても・・・』

『戸惑うのはわかる。だから3つ約束する。

 一つ、これが終わったら一旦元の世界に戻す。

 二つ、その時に全部説明する。

 三つ、それで納得出来なかったら辞退してもいい。

 なので』


 表情はみえないが、真剣な態度は伝わってくる。

 間違いない、須賀さんは仕事モードだ。


『王との謁見だけ、大型クライアントの店舗顔合わせのつもりでやってくれないかな。顔合わせだけど時給は出す』


 給料が出るなら、それはプロの仕事だ。


『売り場の救世主におまかせあれ』


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