さかなー!!
カンガンカン
だいぶおっちゃんのトンカチの音がうるさくなってきた。こうなってくると、もうここでは寝られない。
さっさと退散だ。今の時間なら、近くの湖に漁に行く人たちがいる。今日はそれについて行こうっと。
空は白み初めている。置いていかれないようにしよう。
先ほど来た道を戻ると、数人の人だかりを発見。まにあった。
まあ、置いていかれても追いつけるけどね。
皆はまだ自分に気づいていないようす。
『!』
自分の顔がにた~っと笑ったのがわかった。
いいこと思いついた。
足音を立てないように、素早く、荷台に乗り込む。隠れやすい荷物の間に滑り込み、近くにあった布で上から見付からないようにする。
よし。
魚の運搬に使っている荷台から、ムワッと生魚の匂いがする。お肉の匂いには負けるが、まあ嫌いじゃない。
「じゃあ、出発するぜ。」
『!』
リーダーらしき男の合図に全員が軽い返事を返し、動き出す。荷台も誰かに引かれ、ゆっくりと動いた。
荷物の間は思いのほかジャストフィットで荷台の揺れが心地良…い…。
「うお。おちびがいるぜ。」
ビクッー
いつの間にかうとうとしてた。急に近くから聞こえた大きな声に、文字通り飛び跳ねる。
パニックになり、わたふたして荷台から落っこちそうになった。
『ッ!…ッ…!』
受け身をとることも忘れ、ギュッと目をつぶる。
『…!……。…?』
「…と。あぶねえなあ。」
何時までも来ない衝撃に、固く瞑った目をそろそろとひらく。視線がいつもよりずっと高い。お腹に硬い感触があり、視線を向けるとぶっとい腕が。抱き止めてくれたらしい。
ホッとして、こんどは真上を見上げる。
「お前いつの間に潜り込んでんだよ。」
大人のに一ちゃんだ。呆れたって顔をしている。悪戯成功。
けどまずはあいさつ。
『おはよー。』
満面の笑みを向けてあげた。
「しょうがねぇ奴だなぁ。危ない事はすんなよ。」
苦笑しながらもに一ちゃんは頭をなでてくれる。
に一ちゃんたちはささっと準備を済ませ、湖岸に置いてある舟を出し、漁へ行った。
自分は泳げないからお留守番。
けど岸の砂の中には貝がいっぱいいるので、全力で貝拾いをして遊んだ。
…まだ戻って来ない。
あきた。
桟橋から水面へ手を伸ばす。ギリギリ水面に届いた。嬉しい。
『大きくなってる‼おおきくなった。』
前に手を伸ばした時は届かなかった。成長した。
パシャパシャ遊んでいたら、黒い影ができてきた。どんどんどんどん大きくなって
「キシャー」
手を引っ込めたとほぼ同時にでっかい魚が飛び出して来た。
『さかなー!』
反射的に風で魚を岸にうち上げる。魔法はイメージだ。って誰かが言ってた。
大きい魚が捕れた。嬉しい。
『わーい。さっかな~。さっかなー。』
大きいな。大きいな。に一ちゃんより大きいかも。魚のくせに肉食かな。ギザギザの歯がいっぱい生えてる。
「うっわ。なんだこれ!ドテラシャークじゃねえか。」
声がした方を振り返ったら、に一ちゃんたちが帰って来てた。
に一ちゃんたちも大量の魚を舟に積んでいる。
『に一ちゃんおかえりー。』
「…ちび。おまえか。」
『あのねー。パチャパチャしてたらねー、ギャーってきてブワーってやったら捕れたのー。』
テンション高く、身振り手振りで説明する。
に一ちゃんたちは神妙な顔で話を聞いてくれてる。
「…なるほどな。全く分からん。」
聞いてなかったみたいだ。けど気にしない。
に一ちゃんたちはさっさと捕った魚や貝。シャークを荷台につみこみ、帰途についた。
荷台の上は捕れた獲物でいっぱいだからか、に一ちゃんの抱っこで帰った。らくちん。
今日のご飯は魚かな。




