ザコすぎる焼きもち彼女
なんでこうなるのだろうか…。
うーん…。
『みなさん!見てください。この綺麗な白!これが今流行りの雪国の白パーカーですね~。可愛いです~。後ろにはうさみみがついているんですね!』
自宅に帰る途中、電車の中ではなんかの商品紹介をしている。疲れているし、この女性の声がうるさくてしかたがない。黙れ!買うかっ!こんなもん!
駅をおりて、約10分俺の家はすぐ見える。一軒家ではあるが小さめ、ローンは山のように残っている。
「ただいまー」
帰ってきた時間は夜9時だった。やばい遅くなったな…。
中学校勤務という、重労働?から解放され、嫁…いや間違えた、愛する彼女のもとに帰ってきた俺は、家の玄関を開け、いつも通り「飛び付きハグ」を待っていた。変だろ?俺もそう思う。
でも、実際、玄関を開けた瞬間、扉やらテーブルやらに足をぶつけながら転んででも飛んでくるんだよ。
けど今日は…。
「…ん?。来ないな」
寝てるんだろうか。いや、俺がいなくても寝れるのか?。
「まぁ、いいか。」
ガチャリ。扉を閉め靴を脱ぐ。
「………。」
視線は靴を脱ぎ右足を出した入り口の隅に向かっていた。
うーん…スリッパがひっくり返っている。これは、また『あれ』ってことなんだろうな…。
スリッパを戻し、リビングに入ると真ん中のテーブルにまだ温かい料理が7品も並んでいた。
なぜこんな量が。まぁ、十中八九、『あれ』だとは思うけど。
「ゆきー。起きてるんだろー?。話聞くから出ておいで。」
そう言うと、小さくガタッと和室の方で音がした。そして、ゆっくりとふすまがほんの少し開き、睨むように少女がこちらを見ていた。
「起きてますけど…。なんです。早く、ご飯食べればいいじゃないですか」
うーん。やっぱ怒ってる…。
「とりあえず、こっちおいで。俺が、悪いことしちゃったんだよね?。ちゃんと謝りたいから話聞かせて?」
そういうとゆっくりと、だが無言で、
俺が座っているソファにちょこんと座ってきた。
この、はたから見たら16歳くらいの少女は、25歳の俺の彼女である(結婚はしていない)。そして今、俺の横で毛をさかだててるかのようにプルプル震えながら座っているのは俺に怒っているわけじゃない。『あること』で怒っていたのは確かだが、俺が帰ってきた喜びで半分くらいふっとんで、今は多分、『抱きつきたいけど怒りたい、抱きつきたいけど怒らないと』みたいに欲と葛藤してるんだろう。
「ゆき?こっち向いて?」
後ろ向きに座っていたゆきはこっち向きに座り直した。うん…だめだ…笑。
「ぶっ笑。」
「わ、笑わないでください!!」
向き直したゆきはニヤつくのを我慢しながらこっちを睨んでいた。それはもう…とっても可愛い笑。
「あっははは!」
「だから、笑わないでくださいってー!!」
後ろに倒れて笑うと、上にゆきが乗ってきた。笑うな!と怒ってるゆきはもう完全に笑っている。笑いながら、笑うなー!と言ってる。無理!。
「はぁー…もうきっつ…笑。」
「笑いすぎです…。」
ひとしきり笑い、ソファをおりて二人で正座するとゆきはむっと音が出てきそうなくらい眉に力を入れてこちらを見てきた。
「私はですね、怒っているんです!なぜかわかりますか?!」
「うん。『浮気』したって思ってるんでしょ?」
俺が真顔でそういうと、わかっていたのですか!とゆきはハッとした顔をした。そもそもゆきが怒ることは焼きもちというか他の女性といた時だけなのだ。でも…思い当たる節がない。そもそも中学校勤務ということで、ほとんどは生徒が近くにいたし、いたとしても女性と二人きりなんてことはなかった。休日?。いや、特になかった気がするけど。
「12月16日午後3時23分!私はにくじゃがの材料を買うため少し遠くの激安スーパーに行ってます!。そこで、大変驚くことがあったんです!」
「と言うと?」
なぜか熱烈に話すゆきはちょっと上を向いて選挙の人のようにマイク(テレビのリモコン)を握りしめている。
楽しそうだな。
「あなたが!ついに浮気をしていたんです!!。私はこのお目目ではっきり見ましたよ!。綺麗な女の人と女性服のお店に入っていくのを!!」
あー…合点がいった。あのときか。あれはたまたま上司に出会い少し聞きたいことがあってたずねてただけなんだが、まあ、そんなことはどうでもいい。今はそのあとを見られていないかだ。
「あー…あれな。あれ上司だから。あれだったら、電話して話してみる?」
そう言うとゆきはちょっと涙ぐんで、これまで以上に睨んできた。
「そんなんわかってます!!はるさんはそんなことする人じゃないって!。でも、妬くのはしょうがないじゃないですか…。信じてるから電話はいりません…。けど…」
しゅんとするゆきは子猫が親猫に怒られ、静かに丸まってるようだ。
この様子だと『準備』には気づいてないっぽいな。よかった。
ゆきの頭を優しく撫でるとゆきは俺の顔を涙ぐんだ目で見てきた。それに無言で微笑むとゆきはまたむっとして、しかし、怒りではなく、ずるいっ!というようなそんな感じで見てきた。
「ゆき、ハッピークリスマス!」
「え…?」
「ゆきさ。気づいてないようだから答え合わせするけど。あの日は何日?」
「12月16日です。」
「そうだな。その日はクリスマス近くの日曜日だ。そして俺が入ったのは女性服店。」
そこまで言うとゆきは、あっ!と何かに気づいたように、でも俺が話してるため気遣い話しそうになったところを慌てて両手で口をふさいだ。
「ふぶげてくらはい(訳:つづけてください)」
「う、うん笑。だから…『特別な日』だからさ。…はい。」
俺は今までゆきに見つかる可能性があったためバッグに隠していた『雪国の白パーカー』を出しゆきに手渡した。
………。
うるさいなっ!そうだよ買ったよ!文句あるかっ!笑。
「え、これ私が欲しいって言ってたやつじゃないですか。」
照れながらそして驚きがなら言うゆきの声はかすかにトーンが上がっていて嬉しいという気持ちがこっちまで伝わってきた。
「いや、そりゃ、大好きな彼女がほしいって言ったら買うしかないでしょ(あと、着ているのを見たかったんだけど…笑)」
「あ、ありがとうございますっ!✨」
目を輝かせて服を見るゆきは完全に少女にしか見えなかった。ゆきは言ってたのだ。クリスマスでは何歳になっても少女に戻って幸せになりたいと…。
うん。完全に少女だな笑。
ゆきは、しばらくこっちを全く見なかったが。数分、見つめたまま無言でいると、ゆきは「へ?」と変な声を出した。
「なんでそんな今日は気持ち悪いくらい優しく微笑むんです?!。ちょっと怖いんですけど!」
酷いな。ちょっと傷つく…笑。
そして何も言わずさらに数秒。ちょっと心の準備…。必要だからさ。
「ゆき。いや小雪。今日は特別な日って言ったでしょ。これ、貰って。」
驚くゆきに出したのは指輪。綺麗なダイヤがシンプルに飾りでついている可愛い指輪。
「は?!?!?!、え?!ど、どどどど、どういうことですか?!!。」
「だから、特別な日って言ったでしょ?笑」
驚くとかそんなん序の口にでも思えるようにゆきは慌てふためいていた。いやどっちかというと、キョドってる笑。
そして俺は『え?え?』と口をぱくぱくしてるゆきに追い討ちをかけるように……
「結婚してください。」
そう言った。
答えは
「はい…。」
このあとは俺たちが、なにをしたかはあえて言わないことにする。ヒントを言うなら俺は泣いてるゆきをお姫様だっこで寝室につれていって…。
……うぇーいみたいな笑。
なんですか…その大学生のパーティーみたいなのは。
あれ?いたの?
その感じだと丸わかりですっ!
もっとこう…ないんですか?!かっこよくしめてくださいよ!
んー…。せっ…。
ぶん殴りますよ?
あ、あれ!ゲームしたな?笑
しましたけど…それ。要ります…?
ゆき…この世には需要と供給というものがあるんだよ…。だから、もう少し読者に情報を与えるべきだ。そのあと終わり。
え…。はぁ…なるほど。
おっほん…。あのあと俺たちはゲームをした。
そうー、野球券。
こらぁぁぁーー!!
ゆき…めっちゃ弱くて俺一枚も脱いでないのにほぼ全r…
ちょっと黙っててください!
あーもうっ…!あの人絶対にあとでいじわるしてやりますっ!
あ、すみません。それでですね。
あのあとは寝室に隠してあったもう一つのプレゼントを貰ったんです。なので、実はまだ少し続くのですが、それはまた別の話ですね……。
少し続くよー(補足)↓
あ、やっと寝た。なんか、凄い怒ってたな…笑。
寝てるから小さい声で話すね?
補足なんだけど、このタイトルの『ザコすぎる焼きもち彼女』ってのは怒ってるときの嫌がらせがザコすぎるからなんだ…笑。気づいてる人はもう気づいてると思うけど。
1.スリッパをひっくりかえす嫌がらせ
2.七品という謎に多い料理←少なくは絶対しない。
3.絶頂に怒っているはずの16日の肉じゃがはいつも通り(いや、むしろいつも以上に美味しかった。それで気づいてほしかったんだと思うけど)。普通は怒って作らないとか、あえてまずく作るとかだよね。
でも、うちの彼女はザコすぎる…っていうかなんていうか…。
あと、この話はこんな感じの小説なので『わけがわからん』とか『本編以外で話しすぎ』とか色々あると思いますが、短編集ということもあり、作者が荒れています…笑。なので多目に見ていただけるとありがたいです。
ほんと…すみませーん…笑。
『ザコすぎる焼きもち彼女』×
NEXT!→『ザコすぎる焼きもち嫁』
自分でもかなり破天荒な書き方だと思ってます。
それを込みで楽しんで貰えると嬉しいです。
また、今回のは初投稿というのもあり、不安とその他もろもろでもう泣きそうです笑。
これからもこのような作品、またもっと笑えるor面白い作品を出していくのでよろしくお願いします。