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戦国塵芥武将伝  作者: 高部和尚
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戦国塵芥武将伝 特別編 その五

 年末恒例特別編。いつも通りの内容です。

村井貞勝 (生年不詳~1582)

関わった出来事 本能寺の変

来歴 生年、出身地は不明。近江の生まれといわれている。早いうちから織田信長に仕えて主に政務などに携わった。また信長の弟の信行が謀反を起こした際は和睦の交渉を担当している。信長が足利義昭を奉じて上洛したとは京に残り様々な実務を担当した。のちに義昭が追放されて室町幕府が崩壊すると京都所司代となる。所司代としては朝廷との折衝、京の街の治安維持、御所など重要施設の普請、他もろもろの実務を担当し、京の行政の一切を取り仕切った。本能寺の変の際には京の自邸におり明智光秀の本能寺の変の際には信長嫡男の信忠と合流。自身が普請した二条新御所に信忠とともに立てこもる。しかし兵力差は圧倒的であり信忠や息子の清次とともに討ち死にしている。

作者の一言 織田家の縁の下の力持ち。信長から京の一切の行政を任されていることからも信頼や能力の高さがうかがえます。しかし任されすぎて忙しかったうえにさらに別の業務も任されることもあったので過労で床につくとこもあったそうです。朝廷との折衝などでの精神的な重圧も相当だったでしょうから本当に苦労された方なのでしょう。武将たちの影に隠れていますがこうした優秀な吏僚の存在はもう少し知られてもいいのになぁと思います。

木沢長政 (1493~1542)

関わった出来事 飯森城の戦い、天文の錯乱、太平寺の戦い

来歴 畠山家の家臣である木沢家の出身。だが当時分裂していた畠山家から出奔し細川晴元に仕えた。晴元が権力を確立し始めると細川家の功臣である三好元長を抹殺。さらに旧主である畠山義尭も自害に追い込んだ。そして分裂していた畠山家を掌握し絶大な権力を得る。しかしその後元長の子の長慶の台頭により細川家での権勢を失う。畠山家でも長政への反発から失脚した。最終的には主家に逆らう逆賊として長慶らと戦い戦死する。

作者の一言 謀略を駆使しライバルを蹴落とし主家も裏切る野心家というある意味戦国武将らしい人物です。しかしそこまでのことができるのはある意味優秀ということでしょう。まあ最終的にはすべての権力を失い無残に敗死していくのは因果応報というほかありません。この末路も戦国武将らしいともいえます。

長宗我部国親 (1504~1560)

関わった出来事 長浜の戦い

来歴 土佐の国人の長宗我部兼序の嫡男として生まれる。幼いころに父の兼序は本山氏などに攻められて敗死。一時長宗我部家は滅亡した。まだ幼かった国親は土佐一条家のもとに逃れそこで成長する。のちに一条家の支援で旧領に復帰して長宗我部家を再興させた。その後は家臣の吉田孝頼が考案した一両具足を率いて勢力を拡大。仇敵である本山家を長浜の戦いで追いつめるも勝利の直後に病死する。あとは嫡男の元親が継いだ。

作者の一言 例外もあるものの著名な戦国大名の多くはその基盤を先代が作り出しています。長宗我部家はやはり元親が著名ですが、その活躍の基礎を作り出したのは国親でしょう。しかも国親は一度家を滅ぼされてからのスタートです。有力者である土佐一条家の後援があったとはいえその苦労は大変なものであったと思います。国親もまた英傑の一人と言えるでしょう。

稲葉貞通(1546~1603)

関わった出来事 本能寺の変、賤ケ岳の戦い、小田原征伐、文禄の役、関ヶ原の戦い

来歴 斎藤家家臣の稲葉良通の嫡男に生まれる。父貞通が織田家に降伏するとともに降り各地を転戦した。本能寺の変の際には京にいたものの脱出し父と合流する。その後は羽柴秀吉に従い各地を転戦した。秀吉の死後に起きた関ヶ原の戦いでは当初西軍に属するも途中で東軍に寝返る。寝返った後は西軍の城攻めなどで功があり、戦後は豊後に領地を賜った。そして豊後臼杵藩の藩祖となる。

作者の一言 頑固一徹の語源ともいわれる稲葉一鉄こと良通の子です。頑固であったといわれる良通と比べると良くも悪くも柔軟であったと感じる人生です。ただことごとく勝ち馬に乗り領地を少しずつ大きくしていったのは事実です。これも一つの才能でしょう。

伊東祐兵(1559~1600)

関わった出来事 耳川の戦い、島津征伐、文禄、慶長の役、関ヶ原の戦い

来歴 日向の戦国大名伊東義祐の三男に生まれる。幼くして日向の飫肥城の城主となり兄が早世したので後継ぎとなった。その後島津家の侵攻を受け父や家臣たちとともに豊後の大友宗麟を頼る。しかし宗麟も島津家に敗れると九州を離れた。やがて縁があり羽柴秀吉に仕える。秀吉が天下統一のために島津家を攻めた時従軍し、この功により飫肥城の城主に復帰し伊東家を再興させた。そのあとも秀吉に仕え文禄、慶長の役に従軍する。関ヶ原の戦いのときは病で動けなかったが息子を東軍に参戦させて領地を守った。そしてその同年中に死去する。

作者の一言 九州の戦国大名と言えば島津家が一番著名で次に大友、龍造寺、という印象を受けます。伊東家は名前を知っていてもどうした人々だったのかはよく知りませんでした。ただいざ調べてみるとなかなかに波乱万丈で思いがけない展開も見受けられます。特に秀吉に仕えるようになった経緯は奇跡的としか言えません。ですがそうした奇跡を引き付けるものがあったからこそ家を再興し存続させることができたのだろうとも思います。

小笠原貞慶(1546~1595)

関わった出来事 本圀寺の変、天正壬午の乱、小田原征伐

来歴 信濃守護の小笠原長時の三男。父が武田信玄に敗れて領地を失うとともに他国に逃れた。やがて京で三好長慶の庇護を受ける。長慶死後の動乱を経て織田信長に仕える。しかし信長が死ぬと徳川家康に仕えて旧領に復帰した。だが寄親である石川数正が羽柴秀吉に寝返るとこれに従う。その後は秀吉に仕えていたが構われ者の尾藤知宣を庇護していたことが発覚すると秀吉の怒りを買い所領を没収された。その後は家督を息子の秀政に譲り家康に仕えて生涯を終える。

作者の一言 家督を継いだ三男。強敵に敗れ幼いころに領地を追われる。その後有力者に仕えて旧領復帰、など前の話の伊東祐兵とどこか共通点があります。一方で三好長慶死後の混乱での行動や尾藤知宣の庇護などどこか粗忽な行動も見られます。こうした点が祐兵との結末での差になったのかもしれません。なお小笠原家の旧領復帰は息子の秀政が成し遂げています。

北条氏邦(1548~1597)

関わった出来事 三増峠の戦い、御館の乱、神流川の戦い、小田原征伐

来歴 関東の大名北条氏康の五男に生まれる。幼いころに武蔵の有力な武将である藤田康邦の養子になった。藤田家の家督を継いだ後は主に北条家の上野方面での軍事行動を担当する。三増峠の戦い、神流川の戦いなどで主力として戦い活躍した猛将。小田原征伐の際は積極的な野戦策が受け入れられず自身の居城の鉢形城にこもる。しかし前田利家率いる軍勢に降伏し自身の命と引き換えに将兵の助命嘆願を行った。結局氏邦は利家に仕えることになり鉢形城は無血で開城している。その後は利家の領地の金沢で死去。

作者の一言 信長の野望等では三男ということになっていますが、これは長男が夭折している(つまり氏政は次男で全員下にずれる)ことや近年の研究で弟だと思われていた氏規が兄だったことの判明などにより実際は五男だったのではないかと言われています。さて氏邦が担当した北武蔵や上野は武田家や上杉家と領地を隣接している重要な地です。そこを任され続けたというだけでも父や兄から信頼されていたといえます。ですが家臣の猪俣邦憲のやらかし、さらにこれを氏邦が命令していた説もあって北条家滅亡のきっかけともみられています。そんな彼が兄たちより長生きしてしまったのは何とも皮肉な話だと思います。ちなみに武闘派の印象がありますが内政もしっかりしていたようです。


 時が経つのは早いもんで一年の終わりを迎えようとしております。世間はいろいろと騒がしい割にはいい方に向かってるとも思えません。さりとて世の中をいい方に帰ることを期待できる人もいなければ自分自身も何もできないわけですが。ともかくこれからも誰もが苦労していくのでしょうが、生きていれば何とかなるの精神で進んでいきたいと思います。そして自分や周囲の人々を少しでも助けられるように生きていきたいと思います。それは戦国武将の方々から学んだことでもあります。

 さて今年の投稿はこれで最後となります。新年の投稿は一日からとなります。お楽しみに。

 最後に誤字脱字等がありましたらご連絡を。では、よいお年を

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