藤掛永勝 三蔵戦記 第三話
本能寺の変が起た。織田信長の死で柱石を失った織田家は衰退していく。そして代わりに歴史の表舞台に立つのは羽柴家であった。その変遷の中で吉勝は悲しい別れをすることになる。
信長横死の報を知った秀吉の動きは迅速を極めた。毛利との講和をいち早く締結させるとすぐさま引き返す。そして近畿にいる織田家の兵を集めあっという間に光秀との決戦に臨んだのである。そして兵力差で上回るうえ、主君の敵討ちという大義名分がある秀吉軍は快勝した。
この光秀との決戦。俗にいう山崎の戦いにおいては秀勝の実兄の信孝も参戦した。だが秀勝と再会した信孝の態度は冷たい。そしてろくに会話もせずに帰っていった。
戦いの後、様々な仕事をこなす秀勝を吉勝は補佐していた。しかし仕事をしている秀勝に元気がない。実父の仇を討ったとは思えない様子である。
「若様」
「ああ。なんだ」
「信孝様と何かありましたか? 」
吉勝はずばり指摘する。その指摘に秀勝の顔が曇った。だがすぐに笑顔を作って言う。
「何もないよ」
心配はいらない、そんなふうに言う秀勝。だがその顔立ちに精彩が無いことに気付かぬ吉勝ではない。
吉勝は仕事を勧めながら思案する。とは言えこのタイミングで秀勝と信孝と何かあるとすれば一つしかない。後継者問題だ。
「(信忠さまも亡くなられているからな)」
現状織田家にとっては後継者である信忠も死んでいるというのが致命的だった。この場合織田家としては迅速に跡継ぎを決めねばならない。だが、現状候補が複数いるのがネックである。
「(順当にいけば信雄様か。だが信孝様も声望は高い…… )」
織田信長の次男が信雄で次いで三男が信孝、四男が秀勝ある。長男が死去した以上順当にいけば次男の信雄が最有力だろう。しかし信雄は先年大きな失敗をしてしまい声望を失っている。その上、山崎の戦いにも参戦できていない。
一方の信孝は比較的評判かよかった。しかも山崎の戦いにも参戦し一応は父の仇を討ったことになる。こうしたこともあり信孝が家督を継ぐこともありえる話であった。
「(本来若様は候補には入らないはずなのだがな)」
秀勝は羽柴家の養子になっているので後継者候補からは自動的に外れる。だが信長の敵討ちを主導したのは秀吉であった。これを世間がどう評するかわからないが織田家の中で声望を高めた秀吉が、自分の養子である秀勝を押すのではないかと考えるものもいるのだろう。
おそらく信孝は信長の後継者として名乗り出るのだろう。それに周りの誰かが担ぎ上げる決まっている。それを信孝は受け入れるだろうが、そうなると秀勝を疎ましく思っても仕方あるまい。
「(まあ、私が考えても仕方ないか)」
吉勝はいろいろと考えるが詮無いことである。何がどうなろうと吉勝は秀勝を支えるだけだ。
不安そうに仕事を進める秀勝を横目で眺めながら吉勝は決意を新たにするのだった。
山崎の戦いから数日たった。織田家の重臣たちが清州に集まって会議が開かれることになる。議題は織田家の家督を誰に継がせるかという事と領地の分配問題であった。
この会議に秀勝は参加を許されなかった。つまりそれは秀勝が後継に推されるわけではないという事である。これには秀勝、吉勝主従も一安心した。
一応秀勝は清州にはいっているが、吉勝は長浜で待機していた。まだいろいろ仕事が残っているためである。尤も秀勝も立派に成人しているのでいつまでも吉勝が付き従っているわけにもいかないということもあるが。
吉勝はともに残ったものと事務仕事に精を出す。とは言えそこまで量が多いわけではないので早いうちに終わった。
吉勝は仕事が終わったものを先に返した。数日前に秀勝は出発し今頃は会議も終わって、長浜に向かっている頃だろう。残っていれば情報が入るかもしれないし秀勝自身も帰ってくるかもしれない。
一人残る吉勝。ふと、こんなことをつぶやいた。
「市様はどうしていなさるか…… 」
吉勝が気にしているのは市の事だった。最後に顔を合わせたのはだいぶ前になる。だがその時のことは鮮明に覚えている。
「(市様は夫だけではなく兄をも失うことになったのか)」
そう考えると市のことが不憫でならなかった。市の扱いは会議の中でも議題に上るだろう。そこで小谷城から落ちのびるときのこと、秀吉と初めて出会ったことを思い出した。
「(秀吉さまは市様に随分と執心だったな)」
その時の秀吉の姿にはさすがに尋常ではないものを覚えたものだった。
「(まさか自分が市様を引き取るとか言い出さないだろうな)」
秀吉には寧々という妻がいる。立場上よく顔を合わせるがかなり好感の持てる女性であった。秀吉とも仲睦まじい夫婦である。
「大丈夫、だろうな」
大丈夫、そう自分に言い聞かせる吉勝。だが心の中にはいまだ不安が残っていた。
しばらく日が経ち秀勝が帰還した。出立の時は不安そうだった秀勝だが今は晴れやかな顔をしている。
そんな様子の秀勝に吉勝は問いかけた。
「よい答えが出たようですな」
「ああ。その通りだ」
秀勝は笑って答える。吉勝も安心したようだった。
「家督は三法師様が継ぐことになった」
三法師とは信忠の嫡男である。本能寺の変の折には家臣に預けられ難を逃れていた。
「それを兄上たちはその後見をするようだ。ともかく角の立たない結果になったのは良かった」
朗らかに笑う秀勝。だが吉勝は何か引っかかるものを感じた。
「秀勝さま」
「なんだ」
「三法師様を擁立したのは」
「父上だが」
それを聞いて吉勝は眉を顰める。そんな吉勝の様子に秀勝はキョトンとした顔をした。
「どうした? 吉勝」
「いえ。それでその決定にほかの方々は? 」
「筋の通る話だし異論は出なかったぞ。ただ柴田殿は不服そうだったが」
「信雄様と信孝様は」
「納得していたぞ」
「そうですか…… 」
何処か不安そうな様子の吉勝。そんな吉勝を不思議に思う秀勝。
「何か不満なのか」
「いえ、私の思い過ごしでしょう」
そう言って吉勝はいつも通りの表情に戻った。
「それで、ほかに何かありましたか? 」
「ああ。父上は河内と山城が加増された。だが長浜は柴田殿に譲り渡すことになったらしい」
「そうですか…… 」
それを聞いて吉勝は少し気落ちした。近江は少年期を過ごした地でありいろいろ思い出深い。秀勝に付き再び近江に入ったときには運命的なものを感じたほどだった。
秀勝も吉勝が気落ちしたのに気づいた。それを慰めるように秀勝は続ける。
「私にも丹波が与えられた。これで私も大身だな」
少し大仰に言う秀勝。どうにか吉勝を慰めようという気持ちがにじんでいた。
そんな秀勝の心遣いが分かったのか、吉勝は気を取り直す。
「これから忙しくなりましょうな」
「ああ、そうだな。これからもよろしく頼む。吉勝」
「かしこまりました、若様。いや、殿」
珍しく茶化すように吉勝は言った。その言い草に思わず秀勝も噴き出した。笑いあう主従。
こうして秀勝は丹波の大名となった。それに伴い吉勝も地位も上昇する。だがこの時に芽生えた吉勝の不安は消えることはなかった。そしてそれは清須会議から四ヶ月後の信長の葬儀で顕在化する。
天正十年の十月。信長の葬儀が行われることになった。信長が本能寺で横死してから実に四ヶ月近くたっている。この葬儀の喪主は秀吉だった。
もちろん秀勝も参加するし吉勝はそれを補佐する。だが吉勝にとっては諸々の仕事より秀勝が気落ちしていることの方が心配だった。
「秀勝さま……」
「大丈夫だ。しかし兄上たちは何を考えているのだ…… 」
秀勝が気落ちしているのは信雄、信孝の二人が葬儀に参加していないためであった。秀勝は二人に手紙を送って参加するよう頼んだが聞き入れられなかった。
一方の吉勝はその理由がよく分かった。この葬儀の喪主が秀吉だからである。
「(お二人にはそれが不服なのだろうな)」
喪主になるということは死んだ人間の跡を継ぐものだということを、内外に示すことになった。そして葬儀に参加すればそれを認めることになる。織田家の主に納まりたい二人には受け入れがたいことであろう。だから信雄と信孝は出席を拒否したのである。さらに宿老である柴田勝家も参加しなかった。
「(市様はどう考えているのだろう)」
このころ、市は柴田勝家のもとに嫁いでいた。それについてどのような経緯があったのか吉勝は知らない。だが三人の娘ともども今は越前北ノ庄で暮らしているはずであった。当然市もこの葬儀には参加していない。
そういうわけでこの葬儀には主要な近親者が参加していなかった。この時点でもう織田家の分裂は決定的になっている。
「何のための葬儀なんだ」
何のためかはわかっている。秀吉のプロパガンダだ。だが吉勝は思わずつぶやいてしまう。それほどに虚しさを感じていた。
「吉勝…… 」
秀勝は悲しそうな目で吉勝を見る。どうやら同じ気持ちらしい。そんな秀勝を見て吉勝はますますやるせない気持ちになった。
「殿。心中お察しします」
「すまないな」
吉勝の優しい言葉に秀勝の表情が少し良くなった。それだけが吉勝にとっての救いであった。
信長の葬儀は滞りなく終わった。そして事態は吉勝の懸念した方に向かっていく。
秀吉は丹羽長秀や池田恒興などの宿老、そして信雄と手を組んで信孝を攻撃し始めた。これに対し信孝も柴田勝家と組んで対抗する。この戦いに当然秀勝も動員された。
丹波から出陣する秀勝だが顔色が悪い。とても戦ができるような姿には見えない。
「殿、無理はいけません」
「大丈夫だ」
さすがにいけないと吉勝は諌めるが、秀勝は強い口調で吐き捨てた。だが吉勝も引き下がらない。
「信孝様との戦がお辛いのならば名代として私が」
「私は羽柴秀吉の息子だ」
秀勝は吉勝の言葉を遮る。さすがの吉勝もこれには黙ってしまう。
「私はやらなければならないのだ…… 」
秀勝は悲痛な表情で言う。吉勝はそれを黙って聞いていた。秀勝の言葉にはあまりにも悲壮な決意が宿っていた。
これ以上できることはない。そう考えた吉勝は静かに口を開く。
「分かりました殿」
「吉勝…… 」
「ですが御身を大事にすることを忘れないでください。皆悲しみます」
「ああ、そうだな。すまない」
秀勝は悲痛な表情のまま言った。吉勝はそれに黙ってうなずく。
吉勝は秀勝を止められないと理解した。ならば全力で助けるのが自分の仕事だと覚悟する。
こうして秀勝主従は丹波を出て秀吉と合流した。秀吉の軍勢は勝家、信孝を各個撃破する。これで織田家内部の敵はいなくなり秀吉は天下統一に大きく近づいたのであった。しかし実兄を死に追いやった秀勝の心には重いものがのしかかるのであった。そして吉勝にも悲しい知らせが届く。
戦いが終わり丹波に戻ったところで吉勝はその知らせを聞いた。
「そうか…… 市様が…… 」
それは市が勝家と共に自害したというものだった。吉勝にそれを知らせてくれたのは浅井家にいた頃から市に仕えていた女中だった。
吉勝は落ち着いた様子で女中に尋ねる。
「市様と勝家さまの仲はどうだったのか」
「それは…… とても仲睦まじゅうございました」
「そうか」
「市様のご息女は皆逃げ延びることができました」
「そうか」
「それと、その」
女中は急に口ごもった。
「どうした? 」
「いえ、その。市様は「こんどは夫と共に逝くことができる」とおっしゃられていました…… 」
女中は悲壮な表情で言った。一方吉勝の顔は変わらない。
「そう、か」
「それでは私は」
「ああ。すまなかったな」
「いえ。それでは」
そう言って女中はその場を去った。一人残された吉勝はおもむろに目を瞑る。そうするとなんだかあの頃のことが鮮やかに思い出されるようだった。
「市様…… 」
一人つぶやく吉勝。その眼からは涙が一筋流れていた。
信孝を倒したのち秀吉の勢力はさらに拡大していく。しかしそれとは反対に秀勝の体は弱っていった。
もともと秀勝は体が強い方ではない。そしてこのところは心も弱っていた。やはり自らの手で実の兄を討ったというのが堪えているらしい。このところは吉勝が名代として出向くことも多くなった。これを見て多くの人は
「もはやだれが主君かわからんな」
とか言ったが吉勝はそんな陰口は気にせず秀勝のために奮闘した。しかし信孝を討ってから一年後またも秀勝を苦しめるような事態が起きる。
信孝が討たれた後の実質的な織田家の当主は信雄となった。だがこのころになると織田家と羽柴家の力関係は逆転している。したがって秀吉は信雄をないがしろにし始めた。
この状況に信雄は怒った。そして父信長の盟友、徳川家康と組み秀吉に対抗しはじめる。それに対し秀吉は怒った。やがて両勢力は尾張を中心に各地で戦闘を始める。のちに言う小牧・長久手の戦いの始まりだった。
この戦いにも秀勝は出陣する。二度目の実の兄との戦いに赴く秀勝の表情は暗いものだった。
ともに出陣する吉勝は秀勝を止めなかった。いや、止められなかった。今秀勝は羽柴秀吉の息子という使命感だけで動いている。そこをも否定すれば秀勝の精神は持たないだろう。そう吉勝考えていた。
さて小牧・長久手の戦いがいよいよ始まるが、戦況は秀吉の思うようにはいかなかった。尾張で秀吉と対峙した徳川家康はよく戦い秀吉を翻弄した。さらに秀吉の甥の秀次率いる軍勢を散々に打ち倒し秀吉軍に痛手を与えた。
この秀次のあまりの惨敗に秀吉は怒った。秀吉の甥ともなれば後継者の有力候補でもある。そういう立場の人間が失態をすると言うのは羽柴家の将来に不安を残すことになる。
そんな中で吉勝はよくこんなことを耳にした。それは羽柴家やそれに仕える大名家の家臣たちの話である。
「秀次さまのあの失態はひどいな」
「ああ。池田殿や森殿まで討ち取られるとは」
「しかしこのような様で羽柴家は大丈夫なのか? 」
「確かにそうだな…… 」
ここまでならまだよかった。だがさすがに次の話は聞き捨てならないものである。
「しかも秀勝さまはこの頃お身体がすぐれないらしい」
「ああ。なんでも先は長くないと聞いているぞ」
「そうらしいな。だから藤懸殿は秀勝さまが亡くなられた後のために顔を売っているそうだ」
この物言いに秀勝は怒りそうになる、だが何とか耐えた。
「まあ仕方るまい。あんな薄弱は主君では見限りたくもなる」
「その通りだ。しかし信長様のご子息はろくなものがおらんな」
「ああ。羽柴家にとってかわられるのも時間の問題よ」
「しかしそれだと跡継ぎが心配だな。何せあの秀次さまと薄弱の秀勝さまではな」
「ははは。そうだな」
ここまで聞いて吉勝は我慢できなくなった。吉勝は二人の前に出ていく。
「貴殿たち」
声をかけられた二人の顔が蒼くなった。何せさっきまで陰口をたたいていた人間が現れたのだから。
「ふ、藤懸殿」
「…… 下らぬことを話している暇があったら己の仕事をなされよ」
吉勝は静かに、だがすさまじい怒りを込めていった。話をしていた二人は吉勝の剣幕に怯え、立ち去っていった。
二人が立ち去った後、吉勝は大きなため息をつく。
「あのようなものばかりではないと信じたいが…… 」
吉勝は羽柴家の未来に言い知れぬ不安を感じるのであった。
小牧・長久手の戦いは局地的な戦闘が続くものの、次第に膠着状態になっていった。天下を狙う秀吉としてはこれ以上この状況が続くのは看過できない。そこで秀吉はまず信雄と講和した。これにより秀吉と戦う大義を失った家康も矛を収めて秀吉と講和する。
この戦いで秀吉は家康を完全に屈服させることができなかった。これが後に災いとなるのだがそれはまだ誰も予期できていない。吉勝もそうである。吉勝にとっては重要なのは羽柴家と徳川家の関係ではなく秀勝の体調であった。
秀勝の体調は日を追うごとに悪化していく。一応信雄との講和が成った際には少しだけ持ち直したのだが、また体調は悪化していった。それはまるで弱体化していく織田家と連動しているかのようである。
弱っていく秀勝を助け吉勝は愚直に仕事をこなす。しかし秀勝の体調は一向に良くならない。やがて秀勝は自分で寝床から立ち上がれないくらいに弱ってしまった。もはや医者も見放している。
ある日、吉勝は秀勝に呼び出された。いやな予感を感じながら吉勝は秀勝の所に向かう。
部屋の入り口で吉勝は平伏する。
「藤懸吉勝。参りました」
「吉勝か。すまないこっちに来てくれ」
秀勝は寝たまま応えた。吉勝はすぐに秀勝の枕元に向かう。
吉勝が枕元に来たところで秀勝は体を起こそうとする。
「殿。無理はいけません」
吉勝は静かに諭した。秀勝は微笑みながら頷くと身体を横にする。
「吉勝には世話をかけてばかりだな…… 」
「お気にすることはありません。これが私の仕事です。それに」
「それに? 」
「命ある限り仕えると言いました」
相変わらずの表情で言う吉勝。そんな姿に秀勝は苦笑するとともに内心感激していた。
「(そんな昔に言ったことを覚えているのか)」
吉勝はずっと変わらない。ただひたすら秀勝を支え、奮闘してきた。
秀勝は黙る。ここで口を開けば何か女々しいことを言ってしまいそうだったからだ。吉勝も黙っていた。この主従はそれだけで心が通じ合う。
しばらく二人は沈黙していた。やがて秀勝が口を開く。
「私はもう長くはない」
断定的にそう言った。吉勝は黙っている。だが少し震えていた。こうした話だとは予測していたが、いざ本人の口から言われると辛いものがある。
無言で震えている吉勝に秀勝は微笑んだ。
「今まで本当に世話をかけた。ありがとう」
「いえ、私は私の仕事をしたまでです」
「そうだな。だがそれがほんとに有難かった」
「殿…… 」
吉勝は必死で涙をこらえる。膝に置いた拳は血が出るほど握りしめられ、歯は砕けんばかりに噛みしめられていた。
「吉勝」
「はい」
「羽柴家の行く末を見届けてくれ」
秀勝はそう言った。羽柴家を頼むではなく見届けてくれと。吉勝には意味がなんとなく分かるような気がした。
「……はい」
吉勝は頷いた。秀勝はそれをみて満足そうに笑った。
天正一三年(一五八五)一二月。領地の丹波で羽柴秀勝は死んだ。享年一八歳。若すぎる死だった。しかしその死に顔は安らかであったという。
秀勝の死を前にしても吉勝は泣かなかった。その胸には主君から託された最後の言葉が残っている。
この話の中で吉勝は大切な人間を二人失うことになりました。その一方であるお市の方は有名ですが秀勝は無名と言っても過言ではありません。それは早すぎる死のせいでもあるのでしょうが、もう少し長生きしていればかなり際立った存在になったのだと思われます。そんな秀勝の知名度が少しでも上がったのならば幸いです。
さて、秀勝が死んだあとももちろん吉勝の物語は続きます。彼の人生がどうゆうふうに終わるのか、それはまだ先の話ですが。
最後に、誤字脱字などがありましたら連絡よろしくお願いします。
 




