第7話
あけましておめでとうございます
新年初更新です
「え?イナリ?」
「む?社か、にしてもお主また変なのに巻き込まれたのう」
イナリがパンッ、と柏手を打つともともと何もなかったかのように鳥居が消え失せる。
「社。儂はちと、奴に話があるからの」
イナリがルースフィリアに向き直ると、その雰囲気がガラッと変わる。
その眼光は相手を見定めるかのように鋭く、見るものを畏怖させる風格があった。
「して、異界が神よ。我が御子を攫うとはどういう用件かの?
事と次第によっては争うことも躊躇わない所存ぞ」
イナリの物言いにルースフィリアの顔も先程までとはうってかわり強ばっている。
「そのお怒りは最もだと思いますが、まずは話をお聞きください。
まず私は貴方が御子を呼びし世界の女神。ルースフィリアです。
貴方のご尊名をお聞きしても?」
「よい許す。社、教えてやるのじゃ」
え?ここで俺に振るか⋯⋯
まぁ、それが普通なのか?
「では。
此処に居られますは我が神社にて奉りし主祭神、宇迦之御魂神様でございます」
こう見えて神職としてしごかれているし、奉納の舞とかをする機会があったので人前で堂々とするのには慣れている。
ていうか、イナリの付き添い?で神在月の出雲大社に行った時の方が酷かった。
神々の集まりなのに何故か俺まで連れて行かれたのだ。
鳥居を潜ったと思ったら別の空間に居て、急に大勢の神様と合わされ、その神様たちの前で舞を踊らされた。他にも色々あったが今は割愛させて貰おう。
その時に比べれば高々1柱の女神の前で名乗りをあげるぐらい朝飯前だ。
⋯⋯まぁ、もう一度やりたいとは思わないが。
「つまり我が御子を狙って攫ったのでは無く、その勇者召喚とやらに巻き込まれただけ、と」
「ええ、外の世界の神と関係のある者が呼び出されるのは初めてのケースですので、私も対処が遅れてしまいました。
本来なら私の方から出向くべきでしょうが其方から来ていただき申し訳ございません」
俺が現実逃避をしているうちにいつの間に話が進んでいたようだ。
「まぁ、よい。過ぎたこと言っても仕方が無かろう。お主に悪意がなかったことは、ようわかった」
「寛大なお言葉ありがとうございます」
なんかいい感じに収まりそうだな。
「ふむ、社。ではどうする?」
「え?どうするって、なにを?」
「このまま儂と帰るか、その世界に行くか、じゃ」
ああ、そういうことか。でも、それなら俺の返事はもう決まっている。
「ごめん、イナリ。俺、その世界に行くよ」
こんな機会二度と訪れないだろう。
それに雄介と未里を放っておくことも出来ない。
「はあ、しょうがないのう。なら儂も一緒に行くかの。
別に問題はなかろう?ルースフィリアよ」
「ええ。それでは社様には召喚魔法のスキルを贈らせていただきます。召喚魔法で呼びだしたことにすれば不審がられないでしょう」
なんかトントン拍子に話が進んでいくが、つまり⋯⋯
「イナリも一緒に来てくれるの?」
「社は見ていて危なっかしいからの。それに着いて行った方が面白そうじゃ」
「話はまとまったようですし、そろそろ異世界へ転移を行なってもよろしいですか?」
おお、遂に異世界か緊張してきたな
「じゃあ、イナリ。あとで呼ぶから」
「うむ、できるだけ早くのう」
「では、貴方の異世界での歩みに幸の多からんことを」
そして光に包まれ、異世界へと旅立った。