第13話
イナリside
はぅ⋯
やはり社はブラッシングが上手いのう。
でも話題の変え方がちょっと強引だったかもしれん。
しかしのう、わしの中じゃあの話はもう済んだことじゃし、あそこまで感謝されると何とも気恥しくてたまらん。
でも社にギューとされるのはよかったのう⋯⋯
なんか心がぽかぽかしたのじゃ!
「⋯⋯リ、⋯⋯ナリ、ねぇイナリってば」
お〜、いかんいかん。少し考え込んでいたのじゃ。今はブラッシングを楽しまんと。
「ほれ、二尾目もじゃ」
そう言ってわしは二尾目を出す。ふふーん、簡単には終わらせんぞ。何せ九尾目まであるからのう。
「うへぇ」
「うへぇ、とはなんじゃ!うへぇとは!」
「ちょっ!そんな尻尾で叩くなって!ちゃんとするから。それだとブラッシングしにくいってば」
ふん、最初から素直にそうすればいいのじゃ。見上げたときに社の頬が緩んでおったから嫌という訳じゃないのだろうに⋯⋯
本当に嫌そうじゃったらわしも頼まんしの。
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「やっと終わったぁ〜」
うにゅ、もう終わってしまってしもうた⋯⋯
社から櫛を受け取り、蔵へと仕舞う。
「え?今のどうやったの?」
ん?おお、そう言えば社がこれを見るのは初めてじゃな。
元の世界じゃ、わしが蔵から出すまでもなく櫛とかは社が準備しておったからのう。
「これはの、蔵へと仕舞ったのじゃ」
「蔵?」
「そうじゃ。わしら神霊は奉納されたものを自由に取り出せるのじゃよ。その逆もまたしかり。それができんと一々顕現せんと受け取れんことになるからのう」
見せたほうが早いかの?
実際に奉納された刀や米、酒などの食物、あとは金銭などを取り出してみせる。
「あ、そうじゃ、この刀は社が使うといいのじゃ。こちらの世界に日本刀があるとは限らんし、奉納された品じゃから一級品だしのう」
社はそんな大事な物使う訳にはいかないと渋っておったが無理やり受け取らせる。まぁ使うときまでわしが預かっておくことになったが、それぐらいはいいじゃろう。
トントン
「ヤシロ様、お食事の準備が整いました」
む、何やら使いの者のようじゃ。
「ヤシロ様?返事がありませんね。お休み中なのでしょうか?お部屋に入ってもよろしいですか?」
「よ⋯⋯」
よいぞ。といいかけたところで社に口を塞がれる。何をするのじゃ!と社を見ると小声で説明をはじめた。
『イナリがいると相手は知らないからバレるとどうなるかわかんない。
イナリ見た目は獣人だから、この世界で獣人がどういう扱いか分かるまでは人前に出ないほうがいいと思う』
なるほど。そういうことかの。人の世とはめんどくさいのう。
それに召喚されてからは実体があるようじゃから今の状態であれば社のように特殊な眼を持つもの以外にも見えるじゃろう。
『ふむ、ならばこれでどうじゃ』
そう言いわしは子狐へと姿を変える。これならいいじゃろう。
「ヤシロ様、失礼します」
ちょうど狐に変わったときに使いの者が部屋へと入ってきた。
危なかったのじゃ⋯⋯




