第12話
「やっと呼びおったか社。待ちくたびれたのじゃ」
イナリの姿を見て感極まり、つい抱きついてしまった。
「あふっ、きゅ、急にどうしたのじゃ?」
「ありがとう、本当にありがとう」
急に抱きつかれ変な声を出していたが気にせず抱きしめたままでいる。
「?
なんかよくわからんがどういたしましてじゃ」
後頭部を撫でるイナリの手は温かく、その手つきはとても優しかった。
徐々に心が落ち着いてくるとイナリを離しそのまま向き合う。
「勾玉の効果を見たんだ。あの時の約束の通り、いままでずっと俺のことを守ってくれてたんだね。本当にありがとう」
「なんじゃ、そんなことか」
「そんなことって⋯⋯」
俺にとっては大事なことなんだけどなぁとつい苦笑いをしてしまう。
「これこれ、そんな顔をするでない。
別にどうでも良いと言ったのではないのじゃよ。社、お主はわしの巫女であろう。なら、わしが加護を与え守るのは当たり前のことなのじゃ。
だからお主がそこまで気にする必要はないのじゃよ」
「いや、でも⋯⋯」
「ああもう!お主もわからずやじゃのう!
わしに取ってお主が必要だったからそうした、それだけのことじゃ!!」
恥ずかしかったのかそれを言うとイナリは顔を赤くしてぷいっと顔を逸らしてしまう。
ああ、俺も単純だな。イナリに必要だと言われただけでこんなに嬉しく思うなんて。
そしてイナリにはやっぱりかなわないなぁと思う。与えられた恩を俺は少しでも返せているのだろうか?
いや時間はまだある、これからも俺はイナリの側に居て少しでも彼女のために生きていければいいなと思うんだ。
「社、何をしておる。早くブラッシングしてたも」
いつの間に移動したのかお狐様はベッドの上に座り、尻尾をパタパタしていた。
自分から頼んでくるなんて珍しいこともあるんだなぁ。いつもは俺が櫛を用意してると近づいてくる程度なのだが。
これが俺と離れていたからとかだと嬉しいんだけど。
「はいはい。今いくよ」
「ほれ」
イナリから櫛を渡され、それで尻尾を梳いていく。
イナリのブラッシングは、そのあとメイドが昼食に呼びにくるまで続いた。




