変わらない君を見つめて
カーテンから光が差し込んでいる。
そっと時計を見たが、もー少しだけと囁く睡魔。
次、目覚めた時には、もう遅かった。
「あぁぁぁ。やらかしたぁぁぁあ。」
上半身を勢いよく起こすが、また倒れる。
長い針が2を指して、短い針が8をさしている。
【8:10】
「とりあえず用意!!」
急いで支度をして、クロスバイクに乗って大学に向かう。
私は、大学3年の松平麻衣子、21歳である。
【9:17】
教室に入ると、友人たちが座る横に座る。
「おはよう」(小声)
「そろそろちゃんと来ないとやばいんじゃないの?」(小声)
「欠席はしないけど、遅刻でガンガン欠席溜まってる。」(小声)
「バカ」(小声)
この世話好きなショートボブの女の子は、斉藤奈々。
ガラガラ
あ、隼人。
ヘラヘラしながらこっちに来る男は、西川隼人。
「おっはよー!」
「うるさい、黙って入ってきなさい」(小声)
怒る奈々に怒られる隼人、見守る私これが大体のメンバー。
そして、終わりのチャイムが鳴る。
「よーし。1限終わったしさ帰ろうぜー」
「隼人、今日ゼミの先生に呼ばれてるって言ってなかった?」
「あーそーだわ。先帰ってて」
「うん。わかったー、奈々帰ろー!」
「そーだね。隼人バイバイ」
そう言って別れた私たち。
「ちょっとカフェ行かない?」
奈々は最近カフェにはまっている。
カフェというより、ラテアートにハマっている。
「いいよ。今日はどこがいい?」
「駅からちょっと歩くけどいいかな?評判は良いみたいだから期待してて!」
満面の笑みとプレゼントを開ける子どものような顔で私をまっすぐ見つめる。普段はきっちりしたタイプで、油断がなさそうに見えるの奈々だが好きなことになると周りが見えなくて本当に子どもみたいで可愛い。
「いいよいいよ!すっごい楽しみ!」
奈々は、よし!と言わんばかりの満面の笑みでガッツポーズをした。
たわいのない話をして可愛いラテアートのカフェラテを頼み、のんびりした時間を過ごしていたら夕方近くまでなっていた。
【16:28】
「わー!もうこんな時間か!ごめんねこんなにつき合わせちゃって」
「なに言ってんのこっちこそベラベラ喋りすぎちゃったよ」
「あたしらほんとお喋りだよね。こーゆうたわいもない話をしてる時が1番楽しい」
「私も」
と二人顔を見合わせて笑いあった。
「それじゃあ、また明後日ね!」
「うん!」
軽く手を振って、私はお気に入りの白のクロスバイクに乗り込む。
家は、駅から歩いて20分、自転車で10分の所。
マンションの7階に住んでいる、家賃は5万円。
アルバイトはカフェ。
今日はたまたまバイトが休みでゆっくりできる唯一の日。
家に帰ってとりあえず寝ようなんて考えていたら、すぐ家に着いた。
「ふぅ。ただいま」
すぐさまジャージに着替えて、オフモード。
ベッドへダイブ!
左を見ると窓があり、オレンジ色の光がうっすら指している。
お向かいの高級マンションは、人がうっすら見えるほどの距離の為、普段はカーテンを閉めているが、気分転換に窓を開け空気の入れ替えをした。
気持ちのいい風と程よい温もりが体を包み、いつの間にか夢の世界へ行っていた。
目がさめるとそとは真っ暗。
電気をつけて、時計を確認する。
【19:50】
「ちょっと寝すぎたかなー」
なんていいながらベランダに出て風に当たる。
私は星空が好きで、よくベランダに出る。
専用の椅子に座って、車の音が少しうるさいながらも星だけをそっと見て、あぁこの星はいつ死んでしまった星なんだろう。私も早く星になりたい。なんてメルヘンな気持ちになって少し自分で笑ったりしている。
「さぁ、もうお風呂はいってご飯食べよう」
今日も何事もなく1日が終わると思っていた。
何事もなかったわけじゃないよ、寝坊したけど可愛い3Dラテアートに巡り合えて、そのカフェラテが思いの外ドツボで感激した後、奈々が階段で転んである意味私も(笑い)転げて、バイトがないおかげでぐっすり眠れて。素敵な1日だったけど、刺激はなかった。
そこに、スパイスがひとつまみ降り注がれた。
部屋に入ろうとした時、すごい視線を感じ振り返った。すると、高級マンションのベランダに誰かが立っている。別に変なことではないし、本当にこっちを見ているかなんて逆光でわからない。ましてや、本当にベランダにいるのかさえ、わからない。
けれど、なぜか惹きつけられた。
「誰だろう」
今までの私なら、そんなの無視して自分の空間に戻って行ったはずなのに、なぜかその人が気になった。
いつからいたんだろう、なぜいるんだろう。
気になって相手が部屋に入るまで、ずっと見ていた。
誰でもいいじゃないか、こんな高級マンションに住んでいる住人だ、どうせ下にいる人間でも見下ろしていたんだろう。さぁ、さっさとお風呂はいっちゃおう。
と言いながらも、なにかわからないけどドキドキした。また、お風呂から上がったらみてみよう。会えるかもしれない、なんて意味不明な乙女心なんか持っちゃってるわたしは、とっても痛いように感じた。
お風呂から上がり、ドキドキしながらベランダに出たものの、あの部屋の電気は消えていた。
ここで、わたしの燃えるような1日の終わりを示されたように思えた。
もっと何かあるような感じを期待してたのにがっかりだなとへこんでた時。
ピーンポーン
「はい?」
もしかして?なんて期待したわたしが馬鹿だった。
「宅配便です」
ですよね。わかってました。
最近買った服が届いたかなー。
「はーい、すぐ出まーす」
ドアを開けると私服の男性がそこにいた。
「あ、え、誰」
落ち着いて、宅配便ってあれですよね、制服着てますよね?あれ?泥棒!?え!?
「あ、落ち着いて。」
心地よい低音に優しいささやき、私はその声に一瞬で虜になる。
「あ、、、はい」
すらっとしていて、顔も整ってて運動好きそうな顔。そう、強いて言えばサッカーやってそうな爽やかな少年。年齢は、年下かな?
「向かいのマンションの者です」
「あ、あの、は、はい」
基本的にコミュニケーション能力が低い。
いきなり話しかけられると挙動不審になる為、ナンパされても気持ち悪いくらい、おどおどして寄り付かない。良いのか悪いのかわからない。
「ずっと見てました」
「あ、あああ、すいませんんんん」
「え?」
「え?」
顔を見合わせて、一瞬時がとまったように感じた。
「あの、もしかしたら今日、目が合ってたんじゃないかってうずうずしてしまって、体が勝手にお宅に向かって、無意識のうちにインターホン押しちゃって、、あの、、好きです」
「え、は、、、ええええええええええ」
「いや、展開が早い。早いよ。なにこれ、何かの特訓(?)なに、罠(?)なになになになに。」
そこから私は記憶がない。
普段使わない頭を必死にフル回転させた為か、頭が追いつかなくなって、オーバーヒートし、倒れたようだ。我ながらなかなか馬鹿っぽい。
目覚めると、部屋のベッドで寝ていた。
あぁ、夢か。だよな、そんなドラマみたいなことがあってたまるかってんだ!さぁ、起きよ、、、あれ?
右手には、宅配便のお兄さんが、、いや、宅配便のお兄さんじゃないんだった、高級マンションのお兄さんだ。
きれいな顔で小さな寝息をたてながら寝ていた。
綺麗な顔立ちではあるが、とても子供っぽくて可愛らしい寝顔が私の口角を上げる。
「んんっ」
彼が眠そうな声で声を上げる。
「あぁ、あの、」
思わず声が裏返りながら声をかけてみる私。
「あ!!!」
突然起きがった彼。
「大丈夫ですか!いきなり倒れたので、勝手にお邪魔しちゃいました。すいません!!!!」
勢いよく立ち、その場で深々と頭をさげる彼は、本当に律儀で誠実で惹きつけられるものがあった。
「あ、顔をあげてください。」
申し訳なさそうにゆっくりと顔をあげて、軽く微笑みかけた。
「私こそいきなり倒れてすいません。ここまで運んでいただいて有難うございます」
「いえいえ。とんでもないです、俺が変なこと、、、言ってしまったからですよね。すいません」
あ、本当だ。
そういえば、、こく、告白されたんだった。
冗談か夢か現実かどれ。
「あぁ、あの失礼かと存じ上げますが、どこからが夢で現実かはっきりしていないので、もう一度言ってもらってもいいでしょうか?」
私は意地悪なんだろうか、もう一度聞きたい、もう一度、真実か否か知りたくなった。
顔を真っ赤にする彼は、とても可愛らしく胸がきゅっとなった。
「ぁぁ、ですよね。あの、恥ずかしいので、すぐ言っちゃいますね。ずっとみてました、好きです。」
流れるように、すーっと言うので、聞き逃してしまいそうになったが、確かに“彼は好きです”と言った。
「あの、、ずっと、、とは?」
「あなたが引っ越してきてから、ずっとです。すいません、ストーカーみたいで気持ち悪いですよね。すいません。」
彼はすいませんが口癖のようだ。
「そんな前から、、もう3年近くになるんですね。でも、どこから?」
「あ、申し遅れました。千葉正輝25歳です。向かいのマンションの7階に住んでます」
え、25!?童顔すぎるでしょう。
絶対年下だと思ってた。
よかったよ、タメ口でしゃべらなくて本当によかったよ。
「あ、私は松平麻衣子と申します。大学3年の21歳です。宜しくお願いします。」
「4つも離れてるんですね、俺なんておっさんみたいなもんで、気持ち悪いですよね、ごめんなさい。」
僕っ子かと思っていたら、まさかの顔に似合わない俺呼びか、、ギャップ萌えというやつだな。
「いえいえ、千葉さんって若く見えますよね。私てっきり年下かと思いました。すごく可愛いです。」
あ、しまった年下にこんなこと言われても腹立つかな?
「あははははは、よく童顔だと言われるんですよね!」
すごく可愛いか爽やかな笑顔に、うっとりしてしまう私。
「あ、さっきの質問に戻るんですけど、ずっと、、、というのは?」
「あああ。そうでしたね」
また、赤くなる千葉さん。
「松平さん、よくベランダに出て、星をよく見てましたよね?」
「あ、はい、夜空がすきで」
「俺、ベランダに出ることってほとんどないんですが、たまたまつらいことがあった時、ベランダで一服してたんです。本当にたまたまベランダに出たら、向かいのマンションからあなたを見つけたんです。」
とてつもなく恥ずかしく、掛け布団を強く握りしめた。
「最初は、逆光で性別すらわからなかったですし、本当にベランダに出ているのかすらわからなかったんですが、かすかに歌声が聞こえたんです」
うた、、声?
「この歌が、すごく俺の心の中に響いたんですよ。ずっとその歌声を聴きながら、あなたを見てました。顔も名前もわからない、あなたを」
まっすぐ私の方を見て語りかけるように、話を進めていく。
「そこから、つらいことでベランダに出ることは無くなり、あなたを探すためにベランダに出るようになりました。夜だけでなく、休みの日は昼もあなたを探しました。」
「お、お昼もですか!?」
「すいません。気持ち悪いですよね、」
「いえ、そういう意味ではないんです。私、学校がない日はお昼頃起きて、そのままベランダで体操したりうたを歌ったりして、、て、あの、もしかして、、」
「はい。もちろんその姿見てました」
超絶可愛い笑顔で、私を見てきた瞬間、これが眩しいということなんだと確信した。
「昼間は日曜日ぐらいしか休みがないので、日曜日が多かったんですが、あなたの顔をはっきりとは見えませんでしたが、なんとなく見ることができた時は、ドキドキが止まりませんでした。」
はい、私も同じくドキドキが止まりません、
むしろ、もういっそのこと止まりそうです。
「どうしても、、、一目会いたくて、大体の容姿がわかったので、登校しようとしているあなたを何度か見に行ったことがありました」
ん、、ストーカーに近い行為になってきたな。
「でも数回見に行っているうちに、あなたに一目会うだけじゃ止まらず、話したい触れたいと思うようになってきました」
ん、んん?なんかイケメンだけど気持ち悪く感じてきたぞ。
「そして、いてもたってもいられず、こうしてやってきてしまいました。きっと初めて出会った時に、一目惚れをしてしまった様です。」
なんか、本当にストーカーチックというか、ストーカーに近い。怖い。
「と言うのは嘘だよ、バーカ。」
と一気に口調がわかる。
「え、、?」
「お前覚えてねーのかよ、はぁ。名前名乗ったらすぐわかると思ったのに、無反応だから変に話作っちまったじゃねーかよ」
え、え、ええ、、え、だれ。
「おいおい、マジかよ。俺だよ俺。昔デブだったからわかんねーのか。ちばブーって言えばわかるか?」
ちば、、ブー?
「え、もしかして、え!!?」
「やっと思い出したか。」
「う、うそ。ちばブー?え?」
ちばブーとは、小学生の時ご近所さんで同じ学校だったのでよく遊んでいたが、ちばブーが卒業してからは一回も学校がかぶることもなく、徐々に疎遠になっていき、いつの間にか引っ越しをしていたあの、ちばブーか。
「お前をたまたま見た時は、まじで驚いたよ。まさか本当に麻衣子だったとはな。」
「本当に、ちばブー?あんなにデブだったのに、、いまじゃこんなになって」
「あれからさ、俺サッカー部に入って痩せまくったんだよ。そしたら、なかなかモテてさ。まぁ、そこでわかったのは女は顔ってことだったんだなってことだな」
と自慢げに私に話してくる。
「変わりすぎ。怖い。」
「もっとましな褒め方ねーのかよ」
と頭を軽く叩く。
「褒めようと思ってないもんねーーー」
「かわいくねーーーーーー」
と頭をくしゃくしゃとする、ちばぶー。
「んで、ちばブーは何しに来たの?」
「ちばぶーってんのやめろ。正輝さんと呼べ」
「はいはい。正輝はなんでここに来たの?」
「年上に、タメ口の呼び捨てとかどうなってんだよ。まぁ、いいか幼馴染の吉見だ。」
「なんでもいいから、なに?」
「はぁ、相変わらずだな麻衣子は。
俺は、お前に初めて出会った時から好きだったんだよ」
「なんの冗談よ!」
急速に心拍が上昇すると同時に息苦しい。目がかーっと開き、口からはぁはぁと声が出るほど苦しい。
「冗談じゃねーよ。何人かと付き合ったけど、やっぱりお前が忘れられなくてな。」
「なんで、私なのよ!!!」
「しらねーよ!、、、俺じゃダメか?」
少し寂しそうに、私を見つめている。
どんどん自分の陣地に正輝が近づいて、逃げ場がない。
「、、な、なによ。それも嘘でしょ。もーいいよ!冗談なら早く終わらせて、ね?」
「そんなに、俺のこと嫌か?結構、顔はいけてる方だぜ?会社も大手化粧品メーカーに勤めてるし、金もそこそこ持ってる、キャリアだってある。なにがいけない?」
なにがいけないとかじゃない。
わたしも好きだった。本当はずっと好きだった。
なのに、信じられなくて、変わり果てた正輝にドキドキが止まらない。
どんどん近づいてくる正輝の顔。
「嫌なら、避けろよ」
と一言言って唇が重なった。
そっと離すと、正輝の顔は真っ赤っかだった。
「な、何だ。何で避けないんだよ!!!俺のこと嫌なんじゃないのかよ!!!」
「な、なによ!!嫌ならって言ったのはそ、そっちでしよ!!!」
頬が熱くなる。
「え、どういうことだよ」
最後まで言わせようとする正輝。
「だ、だから、嫌なら避けろって言ったのは、、その、そっちだから、」
正輝の顔を見なくてもわかる。
正輝はいまニヤニヤしている。意地悪の正輝の顔をしている。そう、正輝は軽いS
ノーマルに見せかけた、軽いS!!!(笑)
「ふーん?なるほどね。で?」
「、でっでってなによ!」
「俺のこと好きなの?」
「べ、別に。」
「ふーん。」
「なによ。」
「ま、答え出すまで帰らねーよって話。」
「は、、は!?」
くっそ、あっちの流れに巻き込まれてる、、、
「わたし、は、、、」
「わ、た、し、は?」
と顔を近づけてくる。
「ずっと、、、前から、、」
「ずっと前から?」
「その、あんたのこと、、、すきでした。」
満足そうな笑みでわたしを見る正輝。
「よく言えました」
頭をくしゃくしゃと撫でる。
「なぁ、もう一回キスしていいか?」
ドキッ
「な、なにいってのん、、んんん。」
次は濃厚なキス。
身体中がゾクゾクしてたまらない。
なにこれ、、、ダメ。
「ぶwwwwwww」
え?
「とろ〜んとした目して、なに期待してんの?」
「え、、?」
「はぁ〜ああ、満足満足」
「どういうこと?!」
なにこいつ、意味がわからない。
さっきの感じとまるで違う、、まさに手に入れて満足したような顔。
「一発やっちまって帰ろうかと思ったけど、やーめた」
「は!?」
「俺さぁ、釣った魚に餌やらないタイプらしいんだよね」
もう何もかも一瞬で読めた。
この頭の回転の速さは、自分でもすごいなと褒めたいほどだ。
「なるほどね、だから?これで釣れたとでも思ってんの?」
少し顔がこわばる正輝。
「なんだよ。強がってんじゃねーよ」
「どういうつもりが知らないけど、もう勝ち誇った顔して、どうしたの?だっさ」
と馬鹿にしたように笑う私を見て、正樹は顔が真っ赤っかになり舌打ちをした。
「お前のそういうところ、まじで変わらねーな!!大っ嫌いだわ!本当に!!!!」
そう言って、ドタドタと大きな音を立てながら、玄関のドアが閉まる音がした。
「なんなんだよ、、、なんなんだったんだよ」
そう1人で呟いて、ベッドに転がった。
そっと目を閉じて、今日は刺激的どころか、大っ嫌いなミントアイスを食後に食べたような後味の悪い日になったなと、振り返って意識が飛んだ。
さいあく
カーテンを閉めてなかったこともあり、直接顔に光が射す。
「、、んん、まぶ、しい」
とりあえず起きて、後味の悪いまま起き上がる。
なんとも気分の悪い朝だ。
あれは全て夢ならまだ話は別だが、カーテンが開きっぱなしの、玄関の鍵も閉めていない様子を見て、夢じゃないことは確実なんだと自分で納得した。
鍵を閉め、ふと下を見るとキーケースが落ちていた。
ん?
まさか、、正樹の忘れ物?
ってことは家に入れてないんじゃ、、、と一瞬は心配したものの、昨日のなにがしたいのかわからない背景を思い出し、心配するのを一瞬でやめた。
ま、どうせお金持ってるみたいだし、なんとかしてるだろう。そう思い、朝ごはんを食べようとリビングに向かおうとした時、
ドンッ
玄関の方で音がした
「な、なに、、」
恐る恐る、のぞいて見るが特になにもない。
「気のせい、、かな?」
でも、なぜか一度鍵を開けて開けようとした
が、開かない。
「あ、あれ?あれ?壊れてる?」
何度も何度もあけるが、押してもビクともしない。
やばい、出れない、なんで!?
何度も何度も力一杯押すと、急に開いた
「うああ!!!!」
と叫びながらコケるが痛くない、、
「いってぇーー」
としたから声がする。
「ま、さき?」
「、、ねむい、、びっくり、、した、お前か、」
眠そうに半目で私を見る
「なにしてんの!!?」
「うっせーな、家に帰ろうとしたら鍵ねーから!
でも、あんだけ言ってお前にもう一度合わす顔ねーし、どうしたものかと」
「お金あるなら、どっかに泊まりなよ!」
「馬鹿かてめぇーは!金があんなら、こんなところいねーよ!」
確かに、、、、
「俺は鍵とケータイしか持ってきてなかったんだよ!
しかも、キーケースの中に金入ってるしよ!」
見て見ると、一万円が一枚入っていた。
「なに勝手に見てんだよ!返せ!」
と少し怒りながら手を伸ばしてきたが、振り払う。
「それが、私にする態度!?」
「はぁ!?」
「昨日、私にしたこと忘れたわけじゃいでしょ?」
「だからなんだよ」
「あなたがなにをしたかったのか、私には全く理解できない!!!!」
少し泣きそうになる私に少し驚きながらも、真顔に戻り話し始める。
「とりあえず、家入れろ、こんなところで喋ってたら、他の人と鉢合わせんだろ」
たしかに、、でも、、
「なんもしねーよ。興味も全くねーしな」
腹が立つがこのままなにも知らずに帰すわけにもいかないし、謝罪もしていただきたいというのもあり、私が大人になって部屋に入れた。
とりあえず、コーヒーをいれ、2人用のダイニングテーブルに腰掛ける。
「それで?話していただけるのかしら?謝罪も欲しいところだけど」
「たまたま、お前を見つけたのは本当だ。別に、調べ上げたとかじゃない。」
話を続けてと言わんばかりに、頷く私。
「好きだったということも、間違いはないし、途中までは本気だった。お前が嘘さえつかなければ。」
「は?なんのこと?」
「お前は嘘をついた、だから俺はお前を傷付けて、いかないでと言わせたかった、、なのにお前は!」
「ちょちょちょっと、意味がわからない」
「相変わらず、根性座ってるというか、本当昔と変わらないというか」
「なに勝手に無視してくれちゃってんのよ」
「はぁ、、」
「こっちがため息つきたいんですけど!」