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罪と魔法使い  作者: 駄猫
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来客?魔法使い


「ついた…」


 町外れ、かなりキツイ坂を登った森林、そこにそれは建っていた、空港に着いてここに来るまでに見てきた景色はここが日本だと実感させてくれたがこの場所は違った、ゴシック建築の古びた教会、日本の景色とは到底結び付かない異色の建物、そうまるでここだけが日本という国と切り離されているかのように。


「姉様、ここに兄様がいるの?」姉様と呼ばれた少女は、妹の声に振り返る。


空のような蒼い瞳、透き通る白い肌、栗色のボーイッシュなショートヘアーのどこか落ち着いた空気かもしだす少女。


「地図だとここ」


「やったー!!やっと兄様に逢えるんだ!!」


 喜びに目を輝かせる少女、先程の少女と同じ栗色の髪、蒼い瞳、透き通るような白い肌だが、髪型だけが違いこちらはツインテールで先程の少女に似ているがこちらはまだ幼さが感じられる。


「………」


「姉様?」


「なに?」


 無言で教会を見つめる姉にたいし、マリナはインターホンを指差し。


「早く、押してよ」


 妹の呼びかけに反応し姉はゆっくりとインターホンに手を伸ばすがボタンに触れる寸前でその手は止まる。


「どうしたの?」


 マリナは不思議そうに姉の顔を覗く、姉は静かに手を自分の胸にあて妹に向かって呟く。


「…マリナが押して…」


「えっ!?なんでぇ?姉様の方が近いんだから姉様が押してよ〜」


「………」姉は無言でうつむく。


「もしかして姉様…恥ずかしい

の?」姉の頬がうっすらと朱く染まる。


「姉様?今日から一緒に暮らすのに、こんなことで恥ずかしがってどうするの!?」


「で、でも…」両手の人差し指を合わせもじもじと恥ずかしがる。

 。


「はぁ…そんなんじゃ兄様に嫌われちゃうよ」


「そ、それは嫌…」


「ならインターホンくらい自分で押すこと!!」


「わ、わかりました…」姉はゆっくりとインターホンに手を伸ばす。


鼓動が高鳴る、たかがボタンを押すだけ…ただそれだけなのに、いろんな不安が胸を過ぎる、優李はわたし…いやわたし達を覚えているだろうか?、もう好きな人はいるのだろうか?、いたら…いたらわたしは…。


 ぐるぐると頭の中で言葉が回るなか容赦なく指はボタンに触れる。


カチ、ピーンポン


 数十秒後


ギィー


 建て付けが悪いのか酷く不気味な音をたてて扉の半分が開く、中から現れたのは疲れた表情の細身で背の高い執事姿の美青年だった。


「新聞ならいりませんよ…おや…?」


 疲れた表情の執事は二人の少女を見るや少し固まり扉を閉める。


ギィー


 数秒後、再度不気味な音をたて扉が開き現れたのは先程の執事である、だが表情は爽やかな笑顔に変わっている。


「ようこそお美しいお嬢様方、我が主の教会に何か?」


「あ、あの…その…わたし達……もらいに……」姉が何か言っているが…声が小さいうえに震えているため隣にいるマリナにさえ聞き取れない。


「あのう、できればもう少し大きな声でお話ししていただけませんか?」


「あっ、はい…わたし達……もらいに……」姉の声はさらに小さくなる。


「姉様ちょっと避けてね」マリナは姉と執事の間に割り込む。


「こんにちは〜!!わたし、如月マリナです!!こっちはアリス姉様、早速なんですけどわたし達をここで雇って下さい」


 執事は少し考え込む。


「ねぇ…やっぱりいきなりは無理なんじゃ…」アリスは不安げにマリナの耳元で囁く。


「いいですよ」


 アリスは執事の言葉に耳を疑う。


「貴女達を雇いましょう」


「やったね、姉様」


 マリナがアリスに抱き着くなか、アリスはただ呆然とした顔で執事を見ている。


「それではお入り下さい」


 執事はドア大きく開き中へと誘う。


「姉様、入ろう!!」


 アリスはマリナに手を引かれがままに扉をくぐる。


「わぁ〜!!すごい綺麗」


「………」


 二人を迎えたのは幻想的なまでに美しい光景だった。

 一枚の巨大なステンドグラスから七色の光の線がいくつも天井を埋め尽くす、まるでいくつもの虹が空を埋め尽くしたかのような光景にマリナははしゃぎまわりアリス言葉も忘れはみとれた。


「貴女方は運が良い、この光景は天気の良い日に稀にしか観られない物です」


 数秒後、光の線は溶けるよう消え古い汚れた天井が現れる。


「え〜、もう終わり?」マリナは不満げな声をあげる。


「はい、これで終了です」


「じゃあじゃあ次はいつ見れるの?」


「さあ…明日か明後日か、はたまた一年後か、まあそんなことよりこちらへ」マリナの質問に執事は曖昧に答えると右の通路へ進む。


 マリナとアリスは執事の後について行く。


 通路は教会と同じ石造りで天井に等間隔で日窓ついている。

あちこち蜘蛛の巣がはっているのをみると余り掃除はされていない様だ。


キィー


 執事はところどころ錆び付いた鉄製の扉を開く。


「ここから先は足元が暗くなりますのでお気をつけ下さい」


 扉の先は地下へと続く真っ暗な階段、唯一左右に小さな松明が等間隔で暗闇を照らしている。


「姉様、こうゆうの苦手だよね…?」


「だ、大丈夫…」


 アリスは表情こそ変わらないが足が小刻みに震えている。


 学問、運動、料理、茶道、花道…言い出したらきりがないが姉様はそのどれも見事なまでに完璧にこなす完璧超人だ、だが弱点が二つ、一つは先程の様に人とのコミュニケーションをとるのが以上なまでに下手なことそしてもう一つが…閉所恐怖症。


「どうかなさいましたか?」


「な、なんでも…あ、ありません…」アリスの声が細く震える。


「姉様、ファイト!!」マリナはアリスの耳元でそう囁くと執事の後についていく。


「あっ…待って…」アリスは恐るおそるマリナの後に続く。


 その後3分ほど階段を降りると入口によく似た鉄製の扉が現れる。


「着きました」


 執事は扉を開く、明るい陽の光が薄暗い通路を満たす。


「眩しい…」


 マリナとアリスは目を細めながらゆっくりと扉をくぐる。


 目の前に現れたのはま新しい屋敷だった。


「ここに兄様がいるんだね」


「………」


 マリナは姉を見る。


 先程インターホンを前にした時と同じ様にうつむいてもじもじしている。


 その様子にマリナは心の中で呟いた「駄目だこりゃ…」


 そんな二人をよそに「さあ、お屋敷へ参りましょう」執事は屋敷のほうへと歩きだした。




 一方、時間は少し戻る。


 睦月が出ていたばかりの居間で少年が一人。


「い、生きてますか?」


 睦月に倒され気絶した黒い特殊部隊の格好をした人間の一人をつつく。


シュー


「は、はわわわ!?」


 突然つっついた人間から朱い煙が噴き出す、それに連鎖して他の四人からも同色の煙が噴き出す。


「ゲホ、ゴホゴホ…な、何これ…」


 数秒後、朱い煙は徐々に薄くなり空気に溶け込むかのように消えた。


「あ、あれ…?消えちゃった?」


 先程まで気絶し目の前に倒れていたはずの五人が見当たらない…。 キョロキョロと周囲を見回す。


「うん?」


 足元に白い人の形を模した紙が落ちている。


「これって…式神…?」


 先週の日曜日、睦月の授業で教わったことを思い出す。


「わたしたち魔法使いは基本的には心の力、つまり魔力を行使し自然、心など操ることができます、または難しいものになると次元や魔力そのものを操ることも可能です。このなかでも自然はもっとも扱いやすい物の一つです、ちなみにそのなかでも一番扱いやすいのはゴーレムを作り出し使役する魔法です、この魔法は錬金術の応用でもありますがとても扱いやすく簡単な物なら失敗することはありません。基本的には無機物に術式、術者の肉体の一部を埋め込み魔力のパスを繋ぐことで完成します。日本では式神という生き物の形を模った紙に髪の毛を縫い込み魔力で実体のある幻を造り出すという少し高度なものです」


「実体のある幻覚?」


「はい…触れることの出来る幻なのですがこれは理論的に説明するのはとても難しいので後日実物をお見せしたうえで説明をしてさしあげます」

その日はそこまででその授業は終わった…。


 優李はまじまじと観察するが何も知らない自分には本当にこれが式神かわからない。


「ルナにでも聞いてみようかな」


 紙を拾い集め居間を出る。


「にゃ〜」かわいらしい鳴き声と共に額に三日月ハゲの黒猫が優李の足に絡みつく。


「やあ、月千代」優李は三日月

ハゲの黒猫を抱き上げる。


「ルナにご飯は貰ったかい?」


「うにゃ〜ぉ」この鳴き声はYESと言う意味だ。


「そうかそうか、これからルナの部屋に行くけど一緒にいくかい?」


「うにゃ〜ぉ」月千代はさっきと同じ声で鳴く。


「それじゃあ、約束の時間より少し早いけど行こうか」


 この屋敷の北にあたるのが居間である、ルナの部屋は逆の南廊下を進んだ一番奥の右の部屋である。


 優李はルナの部屋の前に到着する。


コンコン


「ルナ、僕だけど入るよ?」


 ドアを開き中に入る。


「いつ来てもやっぱり慣れないなぁ…」


 周りは普通の草木から見たこともない奇妙な草木が生い茂りまるでジャングルのようだ。


「にゃ〜」


「ど、どうした?」


 優李に抱かれ大人しくしていた月千代が突然モゾモゾと暴れだし腕の中から跳び出し綺麗に地面に着地したかとおもったら、そのまま一目散にジャングルに消えて行った。


「はぁ…ここに来るといなくなるんだから」


 いつもここに来ると月千代いなくなる、一度檻に入れて連れて来たこともあったが結果は……檻大破。


 月千代はほっとこうそれよりルナは何処だろう?、鍵が開いてたからいるはずだけど…。


 優李は草木の中に一本だけのびた道に入る、見た感じは獣道だがここに道を作るような大きな動物はいない、ルナや僕や睦月が毎回通ってできた人間の道だ。


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