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罪と魔法使い  作者: 駄猫
3/4

騒がし朝の魔法使い

食後、睦月のいれた紅茶を飲みながら一息ついていると。


「おい小僧、今日暇か?」


 ルナが紅茶に角砂糖入れながら質問してきた。


「別に暇だけど」


「なら後でわしの部屋に来い、拒否は許さん」


 そう言うと紅茶を一口で飲み干し、返事も聞かずに居間を出て行ってしまった。


「えっ!?ちょっとルナ……まったく、強引なんだから」


 まあ、ルナが強引なのは今に始まったことではないが。


 再び紅茶を飲み始める。


「やっぱり睦月のいれた紅茶はうまいな」


 睦月は皿を洗いながら顔だけこちらに向け。


「快徒様に喜んでいただければなによりです。ちなみに今日いれたのはフランボワーズと言う木苺の甘酸っぱい香りが特徴的な紅茶です」


 そう言うと皿洗いが終わったのか、手を拭き、俺と向かい合う様に座ると自分のカップに紅茶を注ぐ。


「落ち着きますねぇ」


 睦月は紅茶の香を静かに味わっている。


「嗚呼、至福の時だな」


 睦月と俺はうっとりとしながら紅茶の甘酸っぱい香に浸ると。


ガシャン、パリ、パリン


 突然、静寂を切り裂きガラスが割れる音が居間に響く。


「な、なんだ!?」


 居間の中庭に繋がるガラス戸が割れ黒い固まりが五つ飛び込んできた。


「手を上げろ」


 突然真ん中の一人がこちらに銃を向けお決まりの言葉を口にする、見たところ映画で見た特殊部隊によく似た格好だ、声の低さから見て男だろうか。


 唖然としながら手を上げる睦月と俺。


「あのう、何か御用でしょうか?」


 睦月は落ち着いた口調で銃を向ける男に話しかける。


「我々は主の命令により白陽快徒を捕獲、束縛します」


「なるほど、快徒様が狙いですか」


 睦月が突然、話していた男の後ろに現れる。

「なに!?」


 突然現れた睦月に五人の視線が釘づけになったその瞬間、俺は睦月に教わった歩法で真ん中の男に一瞬で間合いを詰め、鳩尾に肘を撃ち込む。


「グハッ」


 腹を抱え込むように男がうずくまる。


「小僧、貴様!!」


 右にいた二人の男が俺に銃を向けた瞬間、睦月の蹴りが二人を薙ぎ払い壁に叩きつける、それとほぼ同時に俺は左の二人の脚を蹴り払う、脚を蹴り払われ倒れた二人の男は起き上がろうとした瞬間、睦月と俺の蹴りを顔面に喰らい再度倒れた。


「ふうー、流石睦月、鮮やかだねぇ」


 立ち上がり周囲を見回す、全員気を失っているみたいだ。


「いえいえ、快徒様こそ先程の踏み込みお見事でした」


 睦月は乱れた髪とネクタイを整える。


「我が家の執事をものの十秒で戦闘不能にするなんて、流石快徒様ですわ」


 女の声に驚き中庭に眼を向けた瞬間、俺の首に何かが巻き付く、それと同時に何か柔らかい物が口を塞ぐ。


「むがぁ!?」


 そのまま俺はバランスを崩しその場に倒れた。


「快徒様会いたかったですわ」


 茶髪のみつあみに空のような青い瞳、懐かしい少女がそこにいた。


「もひかひへまひな?」


「快徒様覚えていらしてくださったのね、そうですマリナ、如月マリナです!!」


 俺の首に抱き着く手に力がこもる。


「まひな、くるひい」


 少女の豊かな胸が俺の呼吸を止める。


「まあ、すみません」


 マリナは慌てて快徒から離れる。


「ぷはぁー…、死ぬかと思った…」


 大きく深呼吸をする。


「快徒様、大丈夫ですか?」


 睦月が心配そうに俺を見ていた。


「すみません快徒様、私あんまり嬉しかったもので」


 マリナはしょんぼりとしながら頬を朱く染める。


「いや…別になんともないから…それよりなんでマリナが?」


「えっ!?快徒様、何も聞いてませんの?」


 口に手をあて驚くマリナ。


「俺は何も聞いてないけど、睦月は何か聞いてるか?」


「いえ…私は何も」


「おかしいですわね…クロムウェルから連絡があったはずなんですが…まあいいですわ、何も知らないなら私から説明いたします」


 マリナは大きく深呼吸をする。


「白陽快徒様、私は貴方のガーディアンになるために来ました」


 その場の空気が止まる、その時俺がどんな顔をしていたか俺にはわからない…ただあの冷静な睦月が驚き目を円くした顔を写真で撮っておくべきだったと思ったのはもっと後のことだ。


「ま、マリナが俺のガーディアン!?」




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