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1通のメール

ずいぶんと投稿が遅くなってしまいすみません…っ!


"おはよー"

"おはよう、深来みこ"

"今日も学校かぁ…"

"まぁ、いつも通り元気に…な?"

"そうだね。じゃぁまた後で!"

"うん、また"

ベッドの横の机にある置き時計をちらっと見る。

「やっば」

布団から飛ぶ勢いで出て、立ち上がりながら携帯を置き時計の隣に置く。私は朝、起きた直後に彼氏の霧賀井拓斗きりがいたくととメッセージのやりとりをする。これがないと1日の始まりって感じがしなくて。やり取りをしているとつい時間を忘れてぐだぐだしてしまうから、いつもこんな感じで起き上がっている。支度を済ませ外へ出ると、すでに拓斗が自転車をまたぎ片足をペダルにかけながら空を見て待っていた。音元と書いてある表札を後にして、拓斗のそばに駆け寄る。

「ごめんっ、毎朝こんなんで…」

「いいよいいよ、気にするな。俺は好きで迎えに来てるんだし」

大きなふわふわのキーホルダーがついたスクールバックを無言で預かり、自転車のかごに乗せる。そして、頭をぽんっと優しく叩き、私を後ろに誘導してくれた。勢いよくペダルを漕ぎだし、焦って拓斗の腰に手を回すとそのまま坂道を下って行く。

「俺がちゃんと深来を守るからな」

「んぅ?今なんて?」

自転車に乗っているからか、風の音と混ざって聞きとれない。

「なんでも!!」

「えぇ、言ってよー」

「やだ!」

「けちー」

腰に回した手に力を入れると「うぐっ」と小さな吐息を漏らした。ぎゅいんと急に曲がった先に見えるのは私たちの通う城臣きしん高等学校。他に比べれば小さい校舎。だけれど家が一番近いという理由でここに入学して、もう1年が過ぎた。自転車置き場に向かって歩いていく拓斗の背中を見て、大きくなったと実感する。だけれど、私はどんなふうに成長してきたのか、わからない。

「深来、大丈夫か?ボーっとしてるぞ?」

いつの間にか目の前に立ち、私の顔を覗き込む拓斗がいた。

「…あ、ごめん。思い出そうと思って」

「そんな慌てて思い出すこともないさ。ゆっくりでいい」

「うん。いつもごめん」


そう。私は『記憶喪失』。どうしてこうなったのかも全くわからない。そして、誰一人真実を知っていない。私が覚えているのは、1番最初に見たのが拓斗だったということだけだ。

拓斗が私のことを3カ月前に見つけてくれたのだという。必死に探してくれたんだって。幼なじみだったみたいで、ずっと私のことを気にかけてくれた。体は大丈夫か?とか、たくさん心配してくれた。そうやって話してくれる拓斗に…恋をした。自分では初恋と思っていたが…。

「私ね…拓斗君が好き…なの」

1ヶ月前に伝えた気持ち。

「…知ってるよっ!小学校1年生の時に言われたし」

「え?」

「俺も、好きだ。ずーっと、小学校の時から好きだ。これからも、付き合ってほしい」

「…これから"も"?」

「これも覚えてないか…。…俺ら、付き合ってたんだぞ?」

飛び跳ねそうなくらい嬉しかったのを覚えてる。

本当の初恋までもが同じ相手だとは思わなかった。私は2度も、同じ人を好きになった。拓斗を。

私の運命の相手は拓斗しかいない。…っていってもまだ高校2年生になったばかりだけれど。


「ほら、行くぞ?」

ボーッとしていた私の右手を、力強い拓斗の左手が掴んだ。そしてそのまま思いっきり引っ張られる。

「ちょっと、速いって!」

「えっへん、俺のバスケ部で鍛えた足の速さについてこれるかなー?」

「ついて行けるかぁぁ!!」

そんなこんなで、若干殺されながら自分の教室にたどりついた。2年2組の札が垂れ下がっているドアを足で思いっきり開けた人の後をついていく。…まぁそんなことをするのは拓斗しかいないんだけど。

「深来ーっ!おっはぁー」

遠くの方で威勢のいい声がきこえる。牧下菜々夏まきしたななか。私の1番の友達だ。

菜々夏の席は教室の窓側の一番後ろ。寝るには最適と言える位置で私の席はその斜め前。

いまだに幼稚園の時に使っていたハサミを使っている菜々夏のハサミには「ななか」と平仮名で名前が書かれているからとても可愛い。今はそれを使い何やら切っているようだ。

「おはよ。何してるの?幼稚園のハサミを出して」

机に鞄をどさっと置きながら質問をする。

「もう幼稚園の話しはするなぁ!これが1番使いやすいんだからいいじゃんー。そうそう、これ見て」

そうして取りだされた物をみて、特に衝撃はうけなかった。

「…なに、わた毛?」

「そっ!学校についたらさ、鞄にわた毛がついてたの」

「…それで、ハサミを使ってどうする気?」

「そういえば昔、1人で変な遊びしてたんだよねぇ。わた毛の毛をさ、1本ずつ切って遊んでたの」

「不思議な遊び…何してんのさホント」

「そのおかげで今じゃハサミを使うのがすっごーーく上手くなったけどね」

確かに菜々夏は器用だ。そういえば前に、外で切り絵をやってたら地域の人に注目されてたっけ。

…その前に、なんで外で切り絵なんかやってんの。

「まぁまぁ、話を戻して。そんなことをふと思い出しちゃったんでぇ、今久しぶりにやってみたの♪」

ハサミを楽しげに私の目線の先に振りあげる。危ないって。目の前に現れたハサミの先端部分には、さきほど切られたであろうわた毛の残骸がしっかりとくっついていた。


♪~♪~♪~♪~

どこかで聞いたことのある曲が教室のどこかで微かに聞こえた。それと同時に騒ぎ始める声も聞こえた。

「おっ、噂の彼氏さんからメールっすか?」

「そう。最近すっごいこまめにメールしてきてさ。ちょーうざい」

「彼氏さんなんだからそんなこと言わないの!」

「別にあいつのことなんか好きで付き合い始めた訳じゃないし。ただ顔がかっこいいってだけ。

 つれて歩くだけでさ、周りの女子はみんな羨ましそうな顔で見るの。ちょーいい気分」

「やだぁ、奏李かなりったらひどーい」

クラスのギャルグループのやつらが教室のど真ん中で話している。また変わったのか、彼氏が。

呆れた顔をしながら奏李を見つめる。拓斗の話によると、奏李とも昔は仲がよかったらしい。

それでも、拓斗がきっかけで仲が悪くなったんだとか。…そのもめた内容は教えてくれないけれど。

「は?」

奏李の不思議そうな声が聞こえてびくっとする。それはみんなも同じだったみたいで、周りの視線が奏李に集まった。急に静かになる教室。

「…奏李?どうしたん?」

友達の桃絵が心配そうな顔で見つめている。そういえば桃絵は、菜々夏と同じ名字だったっけな。

「マジあいつふざけんな。変なの送ってきやがって」

「え、見せて見せてー?」

その声と同時にいろんな人たちが桃絵を訴えるような目で見た。みんなの気持ちはそろっていた。

『…読んでくれ』


「えっとぉ…なになにぃ…画像つきじゃん、これ」

桃絵がメールをみながらぼそぼそと呟く。周りは早く声に出して読んでくれよ、という気持ちらしく

顔をゆがめた人までいた。

「んじゃぁ、読っみまーす」

教室中が一気に静まりかえる。そして、誰かがふぅ、と小さく息を吐いた。


「息がデキナイ。

 誰かタスケテ。

 呼吸をシタイ。

 自分でイキタイ。

 空気をクレ。

 首をクレ。

 息が…

 息が…

 呼吸が…

 デキナイ。

 いきなりこんなの回しちゃってゴメンよぉっ!

 でもこれ、ガチだからさぁ…(泣)

 まぁ、回しておいた方が吉ってことだと思うよぉ?

 実際、これで回さなかった石川県の45歳の男性が亡くなったらしい。

 それでも回さないつもり?

 私、今、あなたの家の前にイルカラ。

 いつでも、あなたの背後にイケル。

 あなたの首を

 チョウダイ」

みんなの表情が暗くなり雰囲気までどんよりとする。その雰囲気を裏切るように桃絵は高々に笑った。

「ぷはぁっ!奏李の彼氏ばっかじゃーん!ただのチェーンメールってことに気づかないってさぁ、

小・中学生レベルって感じ?」

「確かにバカじゃんね。こんなの私に回すなっての」

「奏李はどうすんの?それ、回すの?」

「別に回さなくたっていいっしょ?こんなのただのお・あ・そ・び。付き合ってられるかっての」

「そりゃそうだわ♪ってかぁ、周りもみんな怖がらないの!」

桃絵の楽しそうな声を聞き、みんなが安心しだす。

「そりゃそうだよね、チェーンメールなんてホントふざけてるんだし」

「気にしない方がいいね」

そんな声が教室中から聞こえた。それと同時に

「石川県の45歳男性って、今日の朝ニュースでやってたんだけど」

私の席の前にいた男子がぼそっとつぶやいたのを、聞き逃すことはできなかった。

暇な時に書いていきますので投稿はいつになるか…。

ですが、ぜひこれからも読んでいただけたら嬉しいです!

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