1話 私の幼なじみ
今回は少女系のお話を考えました
おそらく不定期の更新になると思います
「は~……今日は家に帰りたくないな~」
私はため息をつく
「満里奈の場合は”今日は”じゃなくて”今日も”でしょ?」
私に指摘をする友人の泉。
「また親とケンカしたの?」
もう一人の友人、友香が尋ねた
「まぁそんなとこ……」
本当は違うんだけどここは頷いておく
そんな会話して歩いていると
「あ! あれ天原くんじゃない!!」
遠くには学校のアイドル的存在天原司がいた。
どうやら呼び出されているみたいだ。
「きっとまた告白されるんじゃない」
そう彼は1にも2にもカッコイイ。
なにしろ入学式のときは教師を含め6割の女性を一目ぼれさせた男だ。
おまけに成績はいつも学年トップ、2年生にして東大を受験すればダントツ1位は間違いないと言われている。
しかもスポーツも万能で先日のインターハイではテニスのシングルス2連覇、中学時代から数えると5連覇、ダブルス準優勝、団体優勝と好成績をたたき出している。
性格も人を引き込む明るくて、誰とでも仲良くなれるまさに完璧人間。そんな彼を女性は放っておくわけがない。
現に呼び出されている様子だし……
「そうだ! どうなるか見てみようよ」
明らかに興味本位で友香は提案する
はて今度はどんな人お目にかかったのであろうか?
と思うけれども実際に見ようとは思わなかった。
のだが流れで告白の行方を遠くで見守ることになった。
そして1人の女性がやってきた。
それはもうものすごい美女で同じ女でも見惚れるぐらいの。
もし天原司がOKすればとてもお似合いのカップルになる。
なのでむかつくことがあっても決して文句が言えない。
そして告白タイム(?)が始まった。
しばらく一言二言話すと涙を流してその美女は走っていった。
時間にすると2,3分ぐらい。
あ……フラれたそう確信した。
期間や気持ちを含めてどのくらい想っていたかわからないけど3分で終わってしまう恋というのもあっけないものだ
「フラれたみたいだね」
あっさり終わった告白タイムが空虚に感じでキツネにつままれたようだった
「そうみたいだね」
私は呆然と答えた
放課後
私たちはいつも行くカフェに集っていた
話題はもちろん目撃したこと
「天原君また女の子振っちゃったね?」
友香が先陣を切った
「しかもあの内田美沙緒をね」
泉も続く
私はこの手の話題にはあまり入りたくない。恋愛系統の話にはついていけないし、特に天原司という男が関わっているとなるとなおさらだ。しかし結構盛り上がっているので仕方なく参加する
「内田美沙緒って?」
素朴な疑問をなげかけた
「内田美沙緒知らないの?!!!」
かなり驚く友香
「え……? そんなに有名なの?」
やはりこういう話はわからない……
「内田美沙緒。うちの高校のアイドル的存在よ。男子の彼女にしたい女の子1位よ。ひいてはほかの学校にも彼女のファンクラブがあるという噂よ」
そんなにすごい人なんだ? 確かにものすごく綺麗だったけど……
「あの子を振るなんて普通の男子では考えられないことなんだから!!」
力説する友香
「ということは恋愛ごとに興味がないか、ソッチ系なのか、もしくは……」
泉が推論し、友香は前のめりになる
「もしくは?」
そして息を呑む
「もう心に決めた人がいる……かだね」
最後の選択肢を告げる
「でどう思う? 満里奈?」
いきなり話を振られあわてる私
「どうって?」
「さっきの選択肢よ? 何番目だと思う?」
私は彼の答えは知っているだが言わない
「やっぱり恋愛ごとにきょうみがないんじゃないかな? ああいう人は次元が違うから考えてること全然わかんないよ」
そう苦笑いする。
まぁある意味だけど……
それからいろいろ話し、それぞれに帰路につく
そこから私の戦いが始まる……
「ただいま」
自宅に到着。
すると今からドタドタドタという足音を響かせて一人の男が迫ってくる
そして彼は
「まりな~!!!」
と抱きつき頬をすりすりする
これが4,5歳の男の子であればまだ可愛げがある
「痛い痛い痛い!! ちょっと離れて!! もう高校生にもなってそんなことしないの!!!」
いつものように叱る私
しかしこの男はれっきとした高校生である
「え~いいじゃん。だって満里奈がなかなか帰ってこないから寂しかったんだもん」
目を潤ませる。とてもかわいい……反則だ。こういうとき、その端整な顔立ちを恨めしく思う
ふりきり
「もうとにかく離れてよ~司~」
疲れた体に体格のいい男子はさすがに堪える
「こら!! 司君を無碍にしないの! こんな男の子そうそういないんだから」
お母さんいわく自分に好意を持っているんだからもっと丁寧に接しなさいとのこと。
どうやらお父さんもお母さんも将来の義息子と思っているようだ
確かに司は私にべったりだ。だけどお母さんが言っている好意とはちょっと違う気がする
それから一緒にご飯を食べる。お隣同士なのでお互い親がいない時はこういうことをする。
なので日常茶飯事だったりする
「そういやまた告白されてたね? 司。 振ってたみたいだったけど」
昼間の話題に触れる私
「あれ? 知ってたんだ? 当たり前じゃない!! だって僕は満里奈一筋だもん」
自信満々に恥ずかしいことを言うのでこっちが恥ずかしくなる
「そう……」
まるで小さい子供と話している感覚だ
「だって言ったじゃない『将来僕は満里奈のお婿さんになる』って」
満面の笑みでそういう司に
「そっか」
私はため息を半分混えてそう返した
そうこれが私が家に帰りたくない原因。--天原司だ。
司とはお隣同士の幼なじみ。家族同然にお互い育ってきた。学校のアイドルと幼なじみなんてみんなが憧れる設定だろう
しかし私と司はそんな関係ではない。まるで保護者と子ども。
私に異様に甘えるのだ。
マザーコンプレックスならぬ幼なじみコンプレックスである。
これがあの学校のアイドルと呼ばれる天原司と同じ人だとは想像つかないだろう。
もちろんこんな光景見せられない。なので学校では極力近づかないようにしている。
だから二人の関係は家族しか知らないし学校ではしられていない。まぁしられないようにやっているんだけどね
その今までの努力は水の泡に散ってしまう時が来ようとは私は夢にも思っていなかった
翌日、友香と泉が遊びに来てくれた。司はというと今日は部活でまだ帰ってきていない。なので安心して3人でたくさんお話をした。
そして友香と泉が帰る間際
「おじゃましました。また来るから」
「おじゃましました! またいっぱい話そうね」
私も二人の見送りをしようと玄関を開けた瞬間
「満里奈~!!!」
聞き覚えのある声が。そしていつもの感触。
「え!!?」
「!?」
その瞬間周りの空気が凍りついた
どうですか? こんな幼なじみ。こんな男の子が僕の理想ですwww
僕には到底無理ですがねwww