お金の為ならば、婚約破棄で完璧に当て馬令嬢を演じてみせます!
学園の夜会。
ここで、私の明日からのご飯が決まる。
「ジュリエッタ・マイヤー! お前との婚約を破棄
する!」
「そんな……なぜですか!?」
「俺は真実の愛を見つけた。お前のような顔だけの
女などもういらないのだ」
私……男爵令嬢ジュリエッタ・マイヤー。
婚約破棄を、されたらしい。
「ユリウス様……私を見捨てるというのですか?」
あと今婚約破棄してきた男が伯爵令息ユリウス・
ハルフォード。わがまま甘えん坊で有名。
「ユリウス様、お願いします、おいて行かない
で……私、ユリウス様のことをお慕いしてます
の……」
「今さら遅い。すがりついても無駄だ」
視界が絶望に染まっていく。
その姿を、ユリウスの腕に自身の腕を絡みつけて
いる令嬢があざ笑うように見る。
「ジュリエッタ様は私に負けたのですよ! さっさ
と私達の目の前からいなくなってちょうだい!」
私はうぅ……と声を漏らし、その場に泣き崩れる。
「待ってえぇぇぇ……!」
その叫び声を背に、ユリウスたちは夜会をあとに
した。
「はい、まず当て馬演技代と、オプションとして
『涙』代の合計で11万ゴールドいただきます」
「わかったわ」
……学園の目立たないところで、私はハルフォー
ド伯爵夫人にお代を貰う。
「それにしてもユリウス様って本当わがままです
ね。あの令嬢が美人だから婚約者にしたいって
言った挙句 他の好みの令嬢を見つけたらあれです」
「でもぉ……ユリウスって、どうしても憎めないと
いうかねぇ」
……この伯爵夫人は、紛れもない親バカだ。
ちなみに私は男爵令嬢ジュリエッタ・マイヤー
などではない。
変装スキルでジュリエッタ様に変装したのだ。
本当はただの演技がうまい平民。
「ありがとうねぇ。おかげでユリウスが恥をかかず
にすんだわぁ」
「いえいえ」
私は生活のために、流行りの『婚約破棄』という
ものに乗っかってみることにした。
そもそも令嬢がすがりつくなんてことはしない。
でもそれでは令息が恥をかく。
そこで、私の出番だ!
第一に、婚約破棄は親に許可を取らなければなら
ない。
流石にそれくらいは知っている令息は、親に許可
を取る。
そして婚約破棄を事前に知っている親が、息子が
恥をかかないために私の元へ来る。
そして私は婚約破棄される令嬢に変装して、代わ
りに婚約破棄される。
そんで当て馬令嬢の演技をする。
令息は恥をかかない。令嬢は傷つかない。
親は息子が恥をかかないのに喜ぶ。
私はお金を貰える。
Win-Win-Winというわけだ。
「……終わりましたの?」
「ジュリエッタ様! 来ていたのですか?」
「ええ。少し気になって」
「無事、終わりましたよ!」
自宅に隠れていてと言っていたが……まあ気に
なるよね。
「クルゥゥゥ!」
「! 伝書鳩……?」
鳩が私の腕にとまる。
「これ……王家からの手紙だ!」
鳩の足にある通信筒から、金色の手紙を丁寧に
取り出す。
「なになに……『うちの息子が婚約破棄をしようと
している。通常の値段の倍のお代を出すから、貴方
に当て馬令嬢の演技を頼みたい』だって……?」
貴族との関係が多い友達に私の噂を流してほしい
とは言ったけど、まさか数珠つなぎで王様にまで
届いていたとは……
ボーナスの給料、王家からの信頼……
「喜んでっ!」
これからの生活を、勝手に頭が考えるのだった。




