No.5 訓練
シンジ「…ん」
まだ覚醒しきっていない意識の中、重たい体を何とか起こす。普段から同じ時間に起きているとはいえ、目覚まし時計がならないといまいち寝覚めが悪い。
瞼を開ける。目に映るのは見慣れぬ豪華な部屋。壁や天井、今自分が寝ていたベッドに至るまで自分の部屋のそれとは似ても似つかない。
シンジ「…夢じゃない」
改めて思い知る、俺は異世界に来たのだと。
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アヤカ「あ、シンジ!おはよう」
朝の軽い運動がてら、少し城内を見回っているとアヤカと鉢合わせた。
シンジ「おう、おはよう。随分早起きなんじゃないか?」
アヤカ「私はいっつもこれくらいに起きてるもん。そう言うシンジだって、人のこと言えないんじゃないの?」
シンジ「俺も普段これくらいに起きてるんだよ。今は軽い運動がてら城内を見てる」
アヤカ「私と一緒だ!ねぇどうせなら一緒に見て回ろうよ、一人でちょっと寂しかったし」
シンジ「そうするか」
アヤカを加え、城内の見回りを再開する。
アヤカ「今日は訓練に参加するんだよね。どんなことやるのかな?」
シンジ「考えられるのは、剣術・魔術・体術ってところだな。騎士団ってことを考えると剣術が特に濃厚か?」
アヤカ「ふっふっふ、私は『勇者』スキルの中に剣っぽいやつがあるから剣術が来ても安心だね」
シンジ「…俺、無能力に近いんだけど」
『ガチャ』をどう剣術に活かせと?というか『ガチャ』で出来る特訓って何がある?
…まぁ、最悪『身体強化』のスキルが使えるだろうが。しかし使い切りのスキルをそんなすぐに消費してもいいのだろうか?いや、検証の為に寧ろ早く使ってみるべきか?むむむ…
アヤカ「ふふふ」
シンジ「…ん、どうしたアヤカ?なんか面白いことでもあったか?」
アヤカ「それはシンジの方でしょ?今のシンジ、すっごく楽しそうだったよ」
シンジ「…顔に出てたか?」
アヤカ「うん、こう、『ニヤァ』って感じ。見る人からしたら怪しく見えそう」
ポーカーフェイスを覚えよう、俺はそう誓った。
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訓練所__
あの後、他のパーティーメンバーを加えて訓練所へと向かってきた。辺りを見渡せば目に映るのは訓練中の兵士達、それから俺たちと同じく訓練を受けに来た生徒達の姿だ。パッと見た感じ、殆どの生徒が参加しているように見える。
タケル「訓練か〜。一体どんなことするんだろうな?」
ユウト「そればっかりは実際にその時にならないとなんとも、って所じゃない?出来れば、自分のスキルを活かせる訓練だと嬉しいけどね」
そんな話をしていると、大柄な一人の男が訓練所へと足を踏み入れてきた。それに合わせて訓練をしていた兵士たちが、一斉にその男へと向き直り敬礼する。
「おはようございます、ガルディウス騎士団長!」
ガルディ「おう、おはようさん」
兵士たちが一糸乱れぬ声を上げ、それに対し男が軽く返す。男はそのまま、俺たち召喚者の元へと足を進めてきた。
ガルディ「あんたらが陛下の言っていた召喚者か。俺はガルディウス、ガルディウス・ヴァルクレイン。この『白銀騎士団』で騎士団長をやらせてもらっている。今日からあんたらの訓練も務めていくから、どうぞよろしく」
ガルディウスが自己紹介を終えると、後ろにいる兵士たちへと呼びかけ散開させる。
ガルディ「そんじゃ早速、あんたらの訓練を始める。…と言っても、全員を俺一人で見れる訳じゃねぇから、うちの騎士団から何人か連れてきた。数人ずつに分けて担当してもらうから、各自自分の担当する奴の指示に従うように」
その言葉に合わせて、ガルディウスの背後から五人程同じ衣装に身を包んだ人達が現れる。
ガルディ「カイル・レーヴェン、うちの頼れる凄腕剣士くん。クソ真面目なのが玉に瑕だが、まぁ仲良くしてやってくれ」
カイル「ご紹介に預かりました、カイル・レーヴェンです。剣術を担当させて頂きますので、どうぞよろしくお願い致します」
ガルディ「エリオス・クラウゼン、陰気引きこもり魔術師。基本ツンツンしてるが、根はいい奴だから優しくしてやってくれ」
エリオス「…エリオスよ、魔術師やってるわ。魔法のお披露目がてら、そこの気品のない男にぶっぱなすからよく見ておきなさい」
ガルディ「それは勘弁してくれ。次にグレン・バルド、熱血武闘家。ただひたすら熱い奴だから、彼の担当になる人はまぁ…頑張れ」
グレン「グレン・バルドだ!ひたすらぶつかり合って、強くなっていこうぜ!よろしく頼む!」
ガルディ「リゼット・アルシア、マイペース無口従魔師。しっかり教えてくれるかは分からんが、腕は確かだから根気強く聞いてやってくれ」
リゼット「…リゼット。よろしく」
ガルディ「最後にセラフィナ・ルーメリア、しっかり者お姉さん系僧侶。普段は優しいが、キレると怖いから怒らせないように」
セラフィ「セラフィナ・ルーメリアです。皆さんにちゃんと教えられるように、頑張りますね」
ガルディ「以上だ。先にこちらで誰を担当するかの組み分けをある程度決めてきたから、それぞれ呼ばれたところに纏まってくれ」
ガルディウス騎士団長による独特な紹介が終わった後、騎士団メンバーはそれぞれ自分の担当する召喚者の名前を呼び始めた。
タケル「お!俺はグレンさんのとこだ!」
リオナ「…暑苦しさが倍増しそうね。アタシはエリオスさんね」
ユウト「俺はカイルさんか…剣術でどうスキルを使ったもんかな?」
ミヅキ「私はセラフィナさん…お、怒らせないようにしなきゃ!」
うちのパーティーメンバーも続々と呼ばれているようだ。
アヤカ「私はまだだけど、多分カイルさんのとこかな?」
シンジ「だな。…しかし、俺は一体誰のところになるんだ?」
ガルディ「シンジ、アヤカ。お前ら二人は俺とだ」
「「へ?」」
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状況を整理しよう。それぞれ騎士団メンバーの元に、召喚者が割り振られ終わった。多少人数の差はあるが、スキルや魔力量を考慮してのものだろう。
俺が誰に担当されるかの疑問は確かにあった。『ガチャ』は現状無限の可能性ではあるが、それ故何を伸ばすのかに大変悩むスキルだ。
しかし、しかしだ。
ガルディ「んじゃあ、始めるぞ〜」
何で俺の担当が騎士団長、それもアヤカとの二人だけなんだよ!?
いやまぁ、分かる。分かるよ?よく分かんないスキルだし、とりあえず階級が上の人が担当するみたいな流れは分かるよ?でもさ?今んとこの俺って、アイテム持ってるだけのほぼ一般人よ?
後なんでアヤカが一緒なのでしょうか?アヤカはカイルさんの担当になると思ってましたよ?まるで俺の『ガチャ』が『勇者』と同等のスキルって言ってるみたいじゃないですかやだー。
シンジ「…その、何で俺とアヤカを?特にアヤカは、カイルさんの担当でいいのでは」
ガルディ「単純に俺が興味を持っただけだ。どれ程の実力か分からない『勇者』、実力どころか詳細すら分からねぇ『ガチャ』。とりあえず俺にどれだけ通用するのかで確かめてみようと思ってな」
シンジ「はぁ…」
さっきの時点で薄々気づいてたが、この人まぁまぁ適当だな?どれくらい強いのか分からないが、今の所気怠げなおっちゃんって感じの印象しか受けない。
ガルディ「よし、早速やるぞぉ〜。まずはアヤカ、とりあえず木剣で一発でいいから俺に攻撃を当ててみろ」
ガルディウスは互いの木剣を取り出し、片方をアヤカに渡す。
アヤカ「…え、一発だけ?」
ガルディ「うん、一発だけ」
アヤカ「簡単じゃないですか?」
ガルディ「いいからいいから」
アヤカ「…分かりました!やぁあああ!」
《カァン!》
アヤカが思い切り木剣を振りかぶり、ガルディウスに振り下ろす。それをガルディウスは涼しい顔で受け止め、後ろに流す。
アヤカ「うわっ!…っとと」
ガルディ「おいおい、戦場では一息つく余裕なんてないぞ?」
アヤカは剣撃を受け流された勢いで、体をよろけさせる。何とか体制を立て直すがその隙をガルディウスは見逃さず、背中にトンっと木剣を当てる。
ガルディ「はい、まず一回死んだな」
アヤカ「...むぅ」
余裕そうなガルディウスに対し、アヤカはかなり不満そうだ。だが俺はどうせこうなるだろうと予測していた。なんせ俺たち召喚者はただの学生、相手は経験豊富な騎士団長だ。動きも剣筋も、ガルディウスからすれば読みやすいことこの上ないだろう。
一発当てる、たったそれだけのためにアヤカはスキルも含めて全力を出す必要があるだろう。無論、攻撃スキルを持たない俺が同じ条件を出された時には詰みである。
ガルディ「分かったろ、俺はスキルなしで攻撃できるほど楽な相手じゃないぞ?」
アヤカ「...みたいですね。それじゃあ使いますけど、ケガしないでくださいね!」
ガルディ「は、出来るもんならやってみろ」
アヤカ「『光速踏破』!」
___次の瞬間、アヤカが消えた。
その次に俺が目にした光景は、いつの間にかガルディウスへと攻撃していたアヤカとその攻撃を防いでいたガルディウスの姿だった。
アヤカ「ウソ!?」
ガルディ「...いやはや、危なかったわ。まさか食らいかけるとは」
アヤカ「いやいや、なんでこれに反応できるんですか!?」
ガルディ「だって反応できたんだもの」
シンジ(つ、ついていけねぇ...)
いまだにアヤカのスキル発動から付いて行けていない俺をよそに、あの二人は言い争いを続ける。
『光速踏破』か、まぁ読んで字のごとく光の速さで動けるのだろう。さすがに距離制限はあるだろうが、反応できない時点で相手に使われたら詰みだな。アヤカを敵に回してはいけない、はっきりと心に刻もう。
よし、整理はついた。それじゃさっそく会話に___
ガルディ「それじゃ次はシンジな」
アヤカ「がんばれー!」
あれ、置いてかれてる...




