No.2 能力確認
訓練場_
アヤカ「よし、着いたことだしそれじゃあ各々初めてみよっか」
訓練場に到着したことで、早速スキルを確認し合う会が始まった。
タケル「誰から行く?俺からいってもいい?」
視界の端で、さっきからウズウズしていたタケルが食い気味に声をあげる。
リオナ「さっきからウズウズしてたもんね、アンタ。まぁいいんじゃない?」
タケル「よし!そんじゃ早速…」
タケルがみんなの前に立つと、力を溜める姿勢をとり始めた。そして…
タケル「うおおおおおおお!!!」
自身の力を解放するべく、魂からの咆哮を出した。
《シーン…》
…だが、何も起こらず、叫び声が虚しく木霊するのであった。
タケル「…あれ?何も起こんないや」
ユウト「まぁ、ただ叫んでただけだしね」
タケル「いや、『闘気』って言うくらいだから、気合い入れれば出せるんじゃないかと思ったんだけど」
リオナ「もしそうだった場合、アタシの『観測』はどう出したらいいのよ。目ん玉ガン開けばいいの?」
アヤカ「でも実際、どう出したらいいんだろう…」
全員が、スキルの出し方に頭を悩ませる。
シンジ「…オーソドックスなのは、ステータスにあるスキルに触れてみるとか、スキルの名前を言ってみたりとかかな」
自分なりに思い当たる方法を出してみる。
タケル「お、それっぽいな!そんじゃ改めて、『闘気』!」
タケルが叫ぶと、タケルの周りにオレンジ色のオーラが漂い始めた。
タケル「おぉ、出来た!すげぇ、かっけぇ!」
シンジ「どうやら正解だったみたいだな。先程までの会話で出ていなかったのは、発動する意志の有無か…?」
タケル「細かいことはいいじゃねぇーか!お前のおかげだぜ、ありがとなー!」
そう言って、タケルは俺に飛びついてくる。
《ドンッ!ドゴォォン!》
その衝突により、俺の体は吹き飛び奥にあった壁にめり込むのであった。めちゃくちゃ痛い。
アヤカ「シンジっ!」
ユウト「ちょっ、大丈夫!?」
リオナ「ちょっとタケル!あんた何やってんのよ!?」
タケル「わ、悪い!まさかそんなに吹っ飛ぶとは思わなかったんだよ!」
ミヅキ「わ、私のスキルが使えるはずです!『生命干渉』!」
ミヅキがスキルを使うと、眩い緑色の光が俺の体を包み込んだ。そして、体の傷や痛みがすごい勢いで治り始めていき、数秒もすれば完治した。
シンジ「…助かった、ありがとうミヅキ。しかし、この世界での初めてのダメージが友人からの突撃だとは思ってもみなかったよ」
タケル「うっ…本当にすまねぇ…」
シンジ「…まぁいいさ、十中八九スキルの影響だろうからな。『闘気』、その効果は身体能力の向上か」
タケル「おう!気合いの続く間、身体が強くなるんだと。俺にピッタリのスキルだぜ!」
リオナ「あんたの事だし、軽く5時間は持ちそうね」
タケル「さすがにそこまでは無理だ。精々2時間くらいだな」
普通は気合いを2時間持ち続けられるのも十分凄いのだが。
ユウト「そっちも凄いけど、ミヅキちゃんの『生命干渉』も凄いよね。あんだけ吹っ飛ばされても完治できるんだから」
ミヅキ「えへへ…『生命干渉』は治癒能力の中でも最上位のものなんだって。ただその分魔力消費も多いから、使い時には気をつけてって言われたよ」
シンジ「そうなのか、それは悪い事をしてしまった。まぁ、果たして俺のせいなのかは甚だ疑問だが」
タケル「わ、悪かったって…」
シンジ「冗談だよ。さて、次は…」
リオナ「アタシの番だよ。じゃあ早速、『観測』!」
リオナがスキルを発動すると、リオナの目が淡い青の光を帯び始めた。
リオナ「おぉ、これは…」
リオナが呟くと、辺りを見渡し始めた。
リオナ「うん、随分遠くまで見える。城の外にいるパーティーっぽい人達、多分3kmくらい先かな?」
タケル「…3km!?」
リオナ「うん、軽く見ただけでこれだから、もっと集中すれば更に遠くまで見えそうだね」
シンジ「…索敵最強クラスだな」
一般的に人間の視力は、100m先にいる人物を認識出来ればいい方なのだが。単純計算で常人の30倍の視力、更に視える可能性もあるとなるとかなり強力なスキルだ。
リオナ「アタシとしては、もっと戦える感じのスキルだと嬉しかったんだけどね。強いのは分かるが、戦闘においては少し物足りなく感じる」
シンジ「いいや、索敵だって重要な戦力だ。情報の有無は、勝敗に大きく関わる。一方的に認識できるなら、その時点でかなりの有利を取れるはずだ」
リオナ「それはそうなんだけどねぇ…」
どこか納得いかない、と言った様子をリオナは見せる。
シンジ「それに、能力は使い方次第だ。そのスキルを、上手く戦闘で使える可能性もある」
リオナ「…それもそうだね。よし、上手い使い方を後で考えてみるとしようか。シンジ、アンタも協力してくれるかい?」
シンジ「もちろん」
そうして、リオナのスキル確認を終える。
ユウト「じゃあ次は俺かな?『影適正』、一つのスキルってよりかは、影に関連するスキルを幾つか入手出来るタイプみたいだな」
アヤカ「あ、私と同じタイプだ!」
ふむ、関連スキルを獲得できるスキルということか。現時点で、幾つかのスキルを使い分けられるのはかなり便利になるかもしれない。
ユウト「そしたらそうだな…お、これとか良さそう。『影潜航』!」
ユウトがスキルを使うと、地面に潜り姿を消した。いや、正確には地面にあった自分の影に潜ったのだろう。
タケル「すげぇ、一瞬で消えたぞ!おおい、どこ行ったんだー!?」
《にゅっ》
ユウト「ここだよ」
タケル「うわあああああああ!!」
かと思いきや、今度はタケルの影から姿を表し背後をとった。あ、タケルが腰抜かしてる。
シンジ「他人の影にも潜れるのか。それも『影潜航』の力か?」
ユウト「いや、これは『影移動』だね。『影潜航』と組み合わせること前提のスキルっぽい」
シンジ「どれくらいの長さまで行けそうだ?」
ユウト「うーん、精々が15mって所かな?」
シンジ「十分だな。相手を強襲するのにこれ以上無いだろう」
ユウト「え〜不意打ち?俺に出来るかな」
シンジ「特訓あるのみ、だろうな。まぁそれに関しては俺達も同じだが」
少なくとも奇襲にはこれ以上ないスキルだろう。磨けば、下手すればこの中で一番攻撃に長けた力になるかもしれない。
シンジ「そしたら、次は俺が…」
アヤカ「私の番!シンジは最後!」
押しのけられた。
アヤカ「楽しみは最後にとっておかないと!」
何故か俺が最後にされてしまった。絶対『勇者』の方がすごいと思うのだが…。
アヤカ「私も、幾つか特別なスキルがあるみたい。んー、どれにしようかな…」
アヤカはステータスと睨めっこをしながら、スキルを選ぶ。
アヤカ「…よし、『英雄加護』!」
その瞬間、俺たち全員が黄色い光に包まれる。
タケル「うぉ!?なんだこれ!?」
リオナ「…力が湧いてくる。不思議な感覚だね」
アヤカ「ふふ、パーティーメンバー全員を強化するスキルなんだって」
シンジ「他にはどんなスキルが?」
アヤカ「うーん、名前的に多分攻撃っぽいかな?」
バフスキルに戦闘スキル、か。バフの上昇量にもよるが、戦えるバッファーほど強力なものはないと個人的に思う。まさに『勇者』、その名に偽りなしと言ったところか。
アヤカ「さて、そしたらいよいよお待ちかねのシンジのスキル!楽しみだな〜」
アヤカの一言をきっかけに、皆から期待に満ちた視線を向けられる。
シンジ「…期待重くない?お前の『勇者』の方がよっぽど凄いスキルだと思うが…」
アヤカ「そんなことないよ!だってシンジのスキルだよ?絶対凄いスキルだよ!」
期待重くない?
シンジ「…はぁ、まぁとりあえず試してみるか」
意識を集中する。今俺が使おうとしているのは、恐らくこの世界で俺しか持ち得ていないスキルだ。その力は未知数、実態は不可解。安全に使えるかすらも不明ときた。
心体の内に渦巻くのは不安。このスキルは果たして、本当に俺の力となってくれるかどうか。底の見えぬ深淵へと足を踏み入れる気分になる。
…だが、それ以上に感じるのは期待。底の見えぬ深淵、それ即ち未開拓の新天地。これから俺は、そんな不確かなものを駆使してこの世界を攻略する。
シンジ(…ふふ、面白くなってきた)
息を整える。この世界はゲームでは無い、誤った判断をすれば命を絶つ可能性がある。それを防ぐため、俺は『ガチャ』の力を正しく把握しなくてはならない。
その為に、まずは検証だ。
シンジ「『ガチャ』」
スキルの名前を呟く。
変化は起きた。俺の目の前に半透明上のスクリーンが浮かび上がる。
シンジ(…ステータス?)
その形状が余りにステータスに似ていた為一度驚いたが、よく見てみると別物だということがわかる。というか思いっきり『ガチャ』って表示されてる。
アヤカ「…ん?なんも起きない?」
シンジ「え、見えてないのか?今目の前にガチャのスクリーンが出てきたんだが」
アヤカ「…うん、なんも見えないや」
どうやら他者から目視できないようだ。
タケル「てことは俺は引けないのか…」
タケルが残念そうに呟くが、実際これには俺も残念に思う。他者が『ガチャ』を使用できない、即ち自分の魔力でしか引くことが出来ないということ。
『ガチャ』が一体どれ程の魔力を使うかは分からないが、もし自分の魔力が尽きた時に他者の魔力を頼れないということになる。
…最も、『ガチャ』が貴重な魔力を削ってまで使う必要のあるスキルということが前提だが。
シンジ「一先ず引いてみる」
使用方法は…調べるまでもない。スクリーンにこれでもかと大きく、『ガチャ』というボタンがある。これを押せばいいのだろう。
はてさて、鬼が出るか蛇が出るか。俺は『ガチャ』のボタンを押した。
《ポンッ》
俺の目の前に、ひとつの箱が出現する。木製で少し地味な色合いをしているが、所々に着いた装飾品から恐らく宝箱だろうと推測できる。
アヤカ「おぉ、なんか箱が出た!」
どうやらこの宝箱は他者からも見えるようだ。
シンジ「どうやらこれが景品みたいだな。さて、一体何が入っているやら」
宝箱を開けると、そこには一振の剣があった。ごく平凡な鉄製の剣、手に取ってみるが見た目通りの重さが腕にのしかかる。どうやら実物のようだ。
タケル「おぉ、剣出てきた!」
リオナ「なんか特別な効果があったりするの?」
シンジ「特に無さそうだな、普通の剣だ。少なくともレプリカとかでは無さそうだ」
魔力の方は…
MP:40/50
10の消費か。恐らくレベルが上がれば魔力も増えるだろうが、現時点では魔力の5分の1を使って剣1本は少し微妙に思える。当然、まだこの剣がこの世界でどれ程の価値があるのか分からない為正当な評価は下せないが。
シンジ「…ん?」
よく見ると、『ガチャ』のスクリーンに新たな項目が追加されている。そこに記されていたのは『履歴』。触れてみると、そこには先程出た剣の詳細が映っていた。
『鉄の剣』(武器・Eランク)
一般的な鉄製の剣。初心者の冒険者がよく用いる。
シンジ(Eランク?)
…あぁなるほど、レアリティがあるのか。そりゃそうか、ガチャだもんな。つまり俺はハズレ、とまではいかなくとも当たりを引けたわけではなさそうだ。
やはり随分と運要素の強いスキルのようだ。使いこなすのは実質不可能か?そもそも出てくるものの法則性は?剣の説明には『武器』という括りもあった、武器以外のものも出てくるのか?レアリティの存在も気になる。何処までの上限があり、どんな確率で出てくるのか?それに…
シンジ「…」
タケル「あっ、シンジが集中モード入った」
ユウト「こうなったら暫く戻らないからねぇ」
アヤカ「…」ツンツン
リオナ「アヤカ…あんた何してんの?」
アヤカ「シンジってこの状態だと、何しても反応しないんだよね。面白くない?」
ミヅキ「えっと、あんまりいじんない方が良いんじゃ…」
…と、あれこれ考えたところで試行回数を重ねないことには進むものも進まないか。悪い癖だ、一度気になり始めるととことんまで考え込んでしまう。
シンジ「…で、何でアヤカは俺を突ついてるの?」
アヤカ「あ、戻ってきた。おかえり〜」
出来れば質問に答えて欲しかったな。




