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ミステリオタクですが異世界転移しちゃいまして  作者: 阿久井浮衛
Prologue 勇者はN人もいらない

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27/30

episode 27

「……何とか間に合ったか」


 自宅の応接間兼リビングの片付けを終え,俺は一息吐いた。


 アイリーンの提案を承諾した後,押っ取り刀で帰宅した俺は来客に備えこの部屋の掃除に取りかかった。エラリーの身辺調査に取り掛かって以降自宅はただ寝るだけの場所と化していて,融和派も俺1人になってしまった以上最早来客はあるまいと野放図に散らかしていたのだ。


 アイリーンを初め直接情報収集を依頼した者には緊急時の連絡用に住所を伝えているが,彼女らが実際にここを訪れたことはない。融和派の野郎共相手ならある程度散らかっていても頓着しなかっただろが,メアリやアイリーンが相手だとさすがに気が咎める。ただ思っていた以上に時間を要してしまった。帰宅後即刻片付け始めたというのに,もうそろそろアイリーン達がやって来る頃合いだ。ふと窓の外を見遣るとすっかり暗くなっている。


 もう一度息を吐き,部屋中央に鎮座するローテーブル備え付けの椅子に腰を下ろす。仰向け気味に背凭れに体重を預け,疲労感から閉じた目を両掌で覆う。


 アイリーンが掴んだ情報次第だが,この命をいつ狙われるとも分からないストレスからもうすぐ解放されると思うとこれまでの心労が身に染みた。もちろん議会に訴えるために関連情報の収集はまだ継続する必要があるだろうし,エラリーとの論戦を制し有罪判決を勝ち取るのはまだまだ先のことだろう。


 それでも,右も左も分からないまま全くの手探りで調べ続けるよりも具体的な方向性が定まっている方が精神衛生上望ましいのは明らかだ。一度は諦めた融和派の敵討ちも手の届くところまで来たと言っていい。


 目蓋の裏にカクョム,ツィホゥ,ナロゥの顔が浮かぶ。


「……もう一踏ん張りと行きますか」


 目を開き,反動をつけて勢い良く立ち上がる。空元気でも何でも良い,擦り切れた精神に鞭打ちこの正念場を最後まで乗り切らなければならない。


 一先ず今日消費した分の魔力を補おうと,隣接するダイニングキッチンに向かう。食器棚からタンブラーを,棚上の櫃から回復薬(ポーション)を取り出す。


 カクョムの死後回復薬(ポーション)は直接自分で手に入れたものしか口にしていないし,自宅には常時結界魔法を展開している。


 それでも念には念を入れ,留守中にすり替えられている可能性を潰そうと(アスペクトゥス)(・メティディス)を発動しようとした時だ。


 キィィィィィィィィィィィィィン!!!


 頭を割るような危機感知のアラート音が脳内に響く。そうかと思った瞬間視界が一面業火に包まれた。


「が……ぁ……あ……」


 あまりの痛みに咆哮を上げるも咽喉が焼け焦げ満足に叫ぶことすらできない。蒸発と自動回復を繰り返すせいでまともに機能しない目で何とか火の手の上がっている室内を捉える。


 激痛が全身を駆け巡り,霧散しそうな意識を当て所なく繋ぎ止める。皮膚や真皮が一瞬で蒸発したのか熱さは全く感じない。代わりに気が狂いそうな鋭い痛みが体中に走り続ける。四肢がまだ繋がっているのか自信が持てない。鳴り続けるアラート音が狂騒する痛みに拍車をかける。


 耐え切れず前のめりに倒れ込む。咄嗟に衝撃を和らげようと左肘を床についた拍子に,握っていた回復薬(ポーション)が口に入る。


 魔力が回復するのを感じた途端無我夢中で唱えた。


「タ゛ラ゛リ゛ア゛」


 一瞬の重力から解放される浮遊感の後,体に窓ガラスの破片が突き刺さる痛みを感じた。けれど業火を逃れた結果自動回復による修復が損傷を上回ったらしく,五感が戻ると共に身が引き裂かれる痛みが少しだけ和らぐ。


 中空に放り出された体をどうにか捩ると自宅前の通りに向かって落下しているところだった。目前に迫る舗道を見据え受け身を取る。


「……っ!!!」


 着地した衝撃に思わず呻いたが,業火に身を焼かれていた時ほどの痛みではない。自動回復が順当に機能しているようだ。ネレイデスを簡易発動し未だ体を焦がす炎を鎮火する。


「かはぁっ……はぁーっ,はぁーっ,はぁーっ……」


 最早いつ振りとも思い返せない呼吸を必死に繰り返す。脳が,肺が酸素を欲していた。まだ咽喉が再生し切っていないのか,息を吸い込む度咽そうになりながら喘ぐ。俯せに着地したせいで息がし辛い。


 背後からは轟音を立てて燃え落ちる自宅の断末魔が聞こえた。けたたましい危機感知のアラート音も鳴りを潜めている。一先ず難を逃れたらしい。酸素が供給されようやくまともに頭が動き出す。


 ……この()()は,どう考えたって一連の――


「初手で殺せる計画だったはずだよね。どういうこと? これじゃアイリーンの足止めもあまり意味を成さないじゃない」

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