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ミステリオタクですが異世界転移しちゃいまして  作者: 阿久井浮衛
Prologue 勇者はN人もいらない

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21/30

episode 21

 それから丸3週間,何事も起きることなくただ時間だけが過ぎて行った。


 エラリーは一応捜査を継続している体裁を取っており,1週間に1度捜査状況の報告を受けている。ただその内容にほとんど進展はなく,そのことが余計に彼女に対する疑いを強めた。


 カクョムの葬儀は遺体の発見から10日後,ツィホゥと合同で執り行われた。場所はレヴァル西部の城門近くの墓地で,俺とナロゥ以外の参列者は特に馴染み深いギルド職員や生前取引の多かった商人など,親交の深い関係者を中心としたささやかな葬儀だった。


 2人の遺体は葬儀後墓所に埋葬され遺産は俺とナロゥで分け合った。ナロゥにも知られないようエラリーが遺品や遺産をくすねていないか聞き込みを行っているが,確たる情報はこれまでのところ得られていない。


 エラリーが真犯人であるという疑いは拭えないもののそれを裏付ける根拠もない,何とも宙ぶらりんな状況だった。


 いっそこの疑いをナロゥには打ち明けようかと迷ったものの,エラリーを憎からず思っているらしい状態で証拠もなく相談しても却って俺に対する不信感を抱かせかねない。勇者を殺害しているのが専横派であれエラリーであれ,今融和派が分断し最も喜ぶのはその真犯人だろう。何としても俺達の連携に亀裂が入る事態だけは避けなければならない。ナロゥを納得させるためには,少なくともエラリーの関与を示唆する情報が必要だ。


 そのためここ最近の俺は魔石を収集がてらの依頼遂行,カクョムとツィホゥ殺害事件の情報収集,そしてエラリーの身辺調査を並行して進めていた。カクョムとツィホゥの遺産を相続したためエラリーへの報酬を俺だけでも全額払えるだけの金銭的余裕はできた。ただ俺とナロゥ2人で支払うため1人辺りの負担が増えたことと,エラリーの身辺調査で人手を雇い予想外の出費が嵩んでいることから,資金調達のため依頼も並行して熟している。


 正直勇者の肉体でも疲労を覚えるほど多忙を極め回復薬(ポーション)の購入量も増えているが,この段になり大きいのがメアリによる魔石購入だ。


 遺産相続という変則的な臨時収入は別として,2つの情報収集とギルドの依頼をかけもちしている現状は,従来通りなら台所事情がかなり厳しかっただろう。魔石買取による余剰分で回復薬(ポーション)を大量購入してもなお黒字が出せているし,だからこそマルチタスクを何とか回すことができている。


 しかし体力・魔力面は回復薬(ポーション)で回復できるが,立て続けに仲間を亡くした直後に重労働を続けるのは精神(メンタル)が削られる。せめて情報収集のどちらかは長引かせず終わらせたいというのが本音だ。


 ナロゥも勇者殺害事件の情報収集には取り組んでいるが,エラリーの報告と併せても進捗は芳しくない。専横派とはギルドで互いに姿を認めることはあっても,可能な限り接触を避ける膠着状態が続いている。進展らしい進展はなく,ただ徒に調査費用と時間を消費する状況に苛立ちを覚える日々が続いていた。


 今日も朝一でギルドに顔を出し,いつものように掲示板に張られた依頼書に目を通す。残念ながら現時点で出されている依頼は最高でもAランクだが,詳細を見る限り遠方へ出向く必要があるものも多そうだ。これなら魔石収集である程度稼げるかもしれない。夕刻まで依頼に時間を割き,その後情報収集の報告を受けるか。


 何となく今日1日のスケジュールを組み立てながら受諾する依頼の選定に入った時だ。


「すいません! 今日チィトさんは――あっ,チィトさん! 北部で火事です!! 招集要請が出ています!!」


 騒々しく扉をこじ開けギルドに飛び込んで来たアイリーンの声に目を向ける。一瞬彼女に依頼していたエラリーの身辺調査の件かと身構えるも,遅ればせに脳が彼女の言葉を理解する。踵を返し足早に出口へ向かう。


「俺以外に要請は?」

「勇者全員に出ていますが現状誰も捕まっていません!! 火災の中心はザマァさんのご自宅なのですが安否不明です!! オレツェさんも火災現場付近に住んでいるはずですが所在が分かりません!!」


 テンセィの自宅が全焼した時と似た状況だ。冷や汗が頬を伝うのを感じる。


 北部エリアには議会と直接契約を締結したサーバーが居住している。それにもかかわらず俺にも招集がかかったのは,それだけ火災の規模が大きいからだろう。だから他の勇者も呼び出されているか尋ねたわけだが,アイリーンの回答は最悪の事態を予感させた。


 専横派の2人が北部エリアに住んでいたことは知らなかったが,自分の家も燃えかねないのに消火活動に取りかからないのは尚更おかしい。ザマァに至っては自宅が燃えているのだ。


 異常事態と言っていい状況だが,精神的には全く動揺していないことを自覚する。代わりに,怖いもの見たさのような,本来直視したくはないものについつい目が向いてしまうような感覚を覚えた。


「……状況は分かった。俺は先に現場へ直行する」


 アイリーンと共に外へ出ると,俺はタラリアを発動し北部エリアへと飛行した。

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