↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~  作者: 紫 和春


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/54

第53話 ついに会いました

 気がつけば、九王へ見たことない空間にいた。

 キラキラとした光の粒子が、止まることなく流れ続ける空間。地面は存在せず、まるで無重力のように九王は浮かんでいた。


「ここは……? なんですか……?」


 宙に放り出されたような状態なので、九王は手足をバタつかせる。


(少しは動けるかと思いましたが、そうではないようですね……)


 耳の近くにある加速度センサーが反応してないのを鑑みるに、この空間には「動く」という概念が存在しないようだ。

 今度は光の粒子を掴んでみる。しかし、目の前にあるというのに、それらは粗いCGのように手の中をすり抜けていく。


「掴めない……」


 いよいよ、この空間がなんなのか分からなくなってきた。動こうにも掴もうにも、何一つ出来ない。ただ、光の粒子を観測する(見る)ことしかできなかった。

 その時、目の前の光の粒子が揺らめき、青白い光が形を作り出す。ものの数秒で人型になった。


『はじめまして、九王みこね。ここはあなたの深層意識の中。あなたであっても知覚できない領域だ』

「私が知覚できない領域……? 人工知能を有している私が、ですか?」


 九王が少し驚く。ポカンとした表情の後、思わず口角が上がる。


「そんなわけないですよ。私は自分に入ってくる情報を全て認識できるんですから。そんな領域は存在しません」

『はたして本当にそう言えるのか?』

「と言いますと?」

『あなたには心当たりがあるはずだ。存在しないはずの映像データがあったり、本来は見ることのない夢を見るなどだ』


 そう言われてみれば、確かに人工知能としては異質な記憶( ・・)が存在する。データとして存在しない映像記録。再生してもいないのに睡眠(スリープモード)時に勝手に始まる映像。

 心当たりはあった。


「それは……。そうかもしれませんが……」


 九王は少し狼狽える。


「しかしですよ、あなたに一体私の何が分かると言うんですか? そもそもあなたは一体何者なんですか?」


 九王は自分のことを棚に上げて、人型の正体に迫る。


『私は、あなたが探していたソルレイバーストの発生源、地球人類が集合した統合精神体だ』

「あなたが……」


 キラキラした空間の中で、精神体がこちらを見ていた。いや、顔はのっぺりとしており、眼球などは見当たらないが、何故か視線を感じる。


「……もしそれが本当であれば、私たちはILPAを使って余剰次元に介入(アクセス)することができた、というわけですか?」

『その通りだ。だが、完璧というわけではない』

「完璧ではない?」

『君たちは、あの場所でバーストの波長を使えば介入できると考えていた。しかしそれだけでは不十分だ』


 統合精神体は両手を後ろで組み、少し胸を張る。


「足りなかった……? 何が足りなかったんですか?」


 九王は問いかける。


『それは単純。願い、思い、望み。そういった、人間が発する潜在意識が必要だった』

「願望が必要……?」

『そうだ。あなたは我々を助けたいと願った。我々も同じように、ある願いを叶えてほしかった。お互いに願うことで、私とあなたはこうして邂逅できた』

「それは……、なんともオカルトじみた、スピリチュアルな事象ですね……」


 九王は、どう返していいか分からなかった。


「それで先ほどの発言を聞くに、あなたは私に叶えてほしい願いがある、ということで合っていますか?」

『その認識で問題ない』

「とりあえず、聞くだけ聞きましょう」


 九王は、話だけ聞くことにした。


『我々の願いは一つ。この苦しい世界である余剰次元から脱出し、地球に帰還すること。そのためには我々を受け入れる身体(器)が必要なのだ』

「……なんだか嫌な予感がしてきました」

『そうだ。九王みこね、あなたが我々精神体の器になってほしい』


 九王は大きく溜息を吐く。


「それって私の人格がなくなるヤツですよね? そのあたりはどうなんですか?」

『正直分からない』

「じゃあ絶対に消えますね」

『そうではない。この余剰次元では、あらゆる可能性が発生する。奇跡的に我々とあなたが融合し、新しい統合精神体として九王みこねの身体に定着する可能性。我々があなたを乗っ取り、人格が消滅する可能性。九王みこねの身体が拒絶反応を起こし、我々の器として機能しない可能性。あらゆる選択肢と可能性が存在するのだ』

「大体その三つに絞られるんじゃないですか?」


 九王は軽口を叩く。しかし裏では、実は生き残れる可能性があるのではないかと考えている。つまり、悩んでいるのだ。

 だが、この提案は博打である。勝利と言える選択肢が実際に出てくるとは限らない。


「どうしましょう……」

『かなり悩んでいる、そんなあなたに一つアドバイスを』

「……まぁ、聞きます」

『人間は直感で動くこともある、ということです』


 直感。それは九王も何度か経験し、選択してきた。そして同時に、それは人間らしい行動でもあるということだ。


「……そうですね。博打をするなら、直感は大事ですもんね」


 九王は決断した。


「私の直感は、『器になれ』と言っています」

『ありがとう。では、手を出してほしい』


 精神体に言われるがまま、九王は両手を差し出す。精神体も両手を出し、九王の手を握る。

 その瞬間、周囲にあった光の粒子が二人の間へと急激に収束し出す。その勢いは止まらず、やがて全ての光の粒子が一点に集まり、その空間から光が消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。