表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~  作者: 紫 和春


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/51

第49話 別れは突然でした

 九王たちは、ジェンジュン側が用意してくれた小型の人員輸送船に乗り込む。


『現在、戦艦4隻は地上に向けて降下中。予定ポイントまで35分』

『誰か地球の座標系のデータ持ってるヤツいないか?』

『フライホイール始動、バッテリー始動、現在エンジンは15%で稼働中』

『搭乗員の確認を。現在お客さんが乗ったところだ』

『技術部長からのお達しだ。技術員をあと24人派遣する』

『地球の座標系ならあるぞ。今送信する』

『24人の増員だと? 無茶言いよる』


 九王たちが輸送船の席に座り、腰のシートベルトを締める。

 その時、九王が一つ尋ねる。


「岩手に行く前に、途中寄っていきたい場所があるんです」

「寄りたいところ? どこだ?」


 小堀が聞き返す。


「今は……、霞ヶ浦の近くを移動していると思います」

「移動してる……? あぁ、ウッマか」


 状況を理解した小堀が、パイロットへ連絡を取る。


「すまない。岩手に行く前に、ちょっと地上で拾っていきたい仲間がいる」

『仲間ですか? 場合によっては不可能な場合がありますが……』

「だ、そうだ。九王君」

「ほぼ可能なんですよね? ならお願いします」

「すまないが、お願いしたい」

『分かりました。場所は?』

「現在霞ヶ浦近くを移動していると予想される。詳しい場所は……、近くに行った時にこちらから誘導する」

『了解』


 ひとまずこれでウッマと合流することができるだろう。九王は一安心した。

 数分後、輸送船が揺れる。


『こちらパイロット。これより地球へ降下する。飛行予定時間は約1時間』


 そんなアナウンスが流れている間にも、輸送船は格納庫内を移動し、発進場所まで装置(アーム)により誘導される。

 そしてジェンジュンの外装が開き、宇宙空間へとゆっくり送り出される。


『輸送船KFL-0025番、発進します』


 装置(アーム)から切り離され、輸送船は宇宙空間へと漂う。そのままエンジンが始動し、ゆっくりと地球に向けて推進する。


「待っててください、ウッマ……」


 発進から40分ほどが経過する。輸送船はすでに大気圏内へと突入している。大昔のスペースシャトルのように重力に引っ張られることがなく、大気圏での断熱圧縮が発生しない。いわゆる滑空状態で地表へと降りていく。


『えー、現在、旧羽田空港の上空2000メートルを飛行中。暫定予定地点まで、あと10分』

「九王君、そろそろウッマと連絡を取ったほうがいいんじゃないか?」

「そうですね」


 そういって九王は、ウッマとしか繋がらない周波数帯で呼びかける。


『ウッマ、聞こえますか?』

『その声はみこね? やっぱりアレはみこねが呼んできたんだね?』

『戦艦が見えていましたか。そうです。予想より時間がかかると思いましたが、意外とあっさりと呼ぶことができました』

『それはありがたい話だね。それで、みこねは今どこに?』

『今、東京の上空を飛んでいます。ウッマの現在位置を教えてくれれば、そちらに向かいます』

『分かった。共有マップで現在地を共有するね』


 するとウッマから現在地の座標が送られてくる。それを確認した九王は、小堀に声をかける。


「小堀さん、常磐自動車道に沿って北上するように指示してください」

「了解。えーと……」


 小堀が手元にある銀河艦隊仕様の地球地図と照らし合わせて、パイロットに指示を出す。

 そうしてウッマのいる場所まで近づいてくる。


「相手は馬型の機械だ! ホイストの安全確認をしっかりしておけ!」


 回収を担当する隊員が、そのように指示を飛ばす。

 やがてウッマのいる上空までやってきた。眼下には朽ち果てた高速道路と、ウッマがいた。


『目標を確認。ホバリングモードに移行する』


 輸送船がウッマの上空10メートル程度の場所に陣取る。輸送船のドアを解放し、隊員が降下を開始する。

 九王はたまらず、ドアに近づいてウッマを直接視認する。真下にウッマが待っていた。


「ウッマ……」


 その時だった。パイロットが叫ぶ。


『地中から未知のエネルギーを感知! こちらに接近中!』


 九王にも聞こえた。地鳴りの音が。


「地震……!」


 地面がグラグラと揺れ、ウッマは思わず倒れ込みそうになる。降下している隊員も危険と判断し、ホイストを止める。

 地震が発生して十数秒経過した時、ウッマの足元に異変が起きる。地面が裂け、揺れと共に大きくなる。そして不運なことに、その裂け目はウッマのいる場所で起こる。さらにウッマは高速道路の陸橋部にいたため、簡単に足元が崩れて地面へと消える。


「ウッマ!」


 九王は思わず身を乗り出す。しかしそれを隊員に止められる。


「危険です! いったんこの場から離れます!」

「嫌です! ウッマが! ウッマがいなくなってしまいます!」


 しかし無情にも九王は船内へと無理やり入れられ、輸送船はその場から上空へと移動する。

 それから1時間ほど経過して、状況が収まったのを確認したのち、隊員が地上へと降りてウッマの様子を探す。

 しかし残念なことに、ウッマの部品一つすら見つからない。おそらく地面にできた大きな裂け目に落ちたのだろう。隊員は回収を諦めて、輸送船へと戻る。


「ウッマは……? ウッマはどこにいるんですか!?」

「すまない。我々の手ではなんともできないんだ」


 隊員と入れ替わるように、小堀がやってくる。


「もう現地で作業が始まろうとしている。九王君がいないと作業が始められない。ウッマのことは残念だと思うが……」


 小堀が申し訳なく言う。


「……いえ、これは仕方のないことですから」


 九王はロックされたドアの前で手を合わせた。彼女なりの決別を示したのだろう。


「行きましょう。ウッマもそれを望んでいるはずです」

「……分かった」


 こうして、輸送船は岩手へと進路を取る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ