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オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~  作者: 紫 和春


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第45話 交渉を進めました

 九王と小堀が乗ったシャトルと、シンとシュートリヒが乗ったシャトル。2隻のシャトルがジェンジュンから送られてきた誘導軌道に従い、自動で動いていた。

 シャトルはそのままジェンジュンの左舷側に接近し、ある開口部に向かって飛翔する。


「こうしてみてみると、かなり大きいですね……」

「宇宙だと遠近法が使えないからな。ジェンジュンは全長2kmくらいの小型艦艇に分類される。惑星探査になると、このくらいが一番使いやすいからな」

「地球基準ですと、ものすごく大きいんですけどね」


 そんな話をしながら、九王たちはしばしの宇宙航海を楽しむ。いや、楽しむしかなかったと言うべきか。

 20分ほどかけて開口部に接近し、そして進入していく。内部ではシャトルに接続するための降着装置(アーム)が稼働しており、それがシャトルの降着装置を確保(キャッチ)する。

 そのままアームに動かされるまま移動し、そして19番格納庫へと到着した。

 シャトルのコックピットに、それを覆いかぶせることのできるエアロック型ボーディング・ブリッジが密着する。そのまま空気が注入され、1気圧へと加圧された。

 小堀はボーディング・ブリッジ内部のエアロックがグリーン(正常)になったのを確認して、コックピットのハッチを開ける。

 その瞬間、艦内側のハッチが開き、そこから小銃を構えた保安部員が数人突入してくる。そのまま九王と小堀に銃口を向けた。


「まぁ、こうなるよな」


 そういって小堀は両手を上げる。九王も自分の置かれている状況を察して手を上げた。


「小堀宝治だな? そっちは地球残存人類遺産か」

「あぁ、そうだ」

「貴様らは艦長命令で警戒対象にされている。悪いが、銃口を向けた(このままの)状態で移動してもらおう」

「仕方のないことなのは承知している。お互い仕事だからな」


 そういって小堀は、パソコンと自分の荷物を持ってシャトルから降りる。無重力であるため、足で床を蹴ってふわふわと移動する。その後ろを九王が追いかける。

 銃口を向けられながらボーディング・ブリッジを進んでいくと、途中の分岐路でシンとシュートリヒに会う。彼らも同じように銃口を向けられていた。


「こっちだ。早くしろ」


 先頭を進む保安部員に催促され、九王たちは格納庫を出る。するとここにもエアロックが存在した。


「グラビテーション・ドアロック。もしくは重力交換室とも言う。ここで0Gから1Gに変化する」

「そこ! 静かにしろ!」


 小堀が九王に解説した所を、保安部員に注意される。

 重力交換室に入り、保安部員がスイッチをいくつか操作する。すると上下の概念が部屋の壁に表示される。すると、「下」と書かれた壁に向かって重力がかかっていく。各人が体の向きを変え、直立できるようにする。

 ほんの数分で、1Gの重力が床にかかるようになった。これで直立できる。

 目の前の扉が開き、ジェンジュンの艦内へと入った。中は艦とは思えないほどに広々としている。

 そのまま通路を進んでいく。かなりの時間歩いて、ようやく目的地に到着したようだ。


「艦長殿がここでお待ちになられている。粗相のないようにしろ」


 保安部員に睨まれながら、先頭の保安部員から部屋へと入る。


「失礼します。スパイ容疑者とその一行を連れてきました」


 そういって九王たちは部屋に入る。そこは部屋というよりかは会議室のようだった。会議室の奥に巨大なモニターがあり、その前に初老の男性が座っていた。


「君たちが戦艦を要求している一行だね?」

「はい。私が大元を提案した九王みこねです」

「どうも。先ほども自己紹介したが、私が艦長のローレンだ。まぁまぁ、座ってくれ」


 ローレン艦長に促され、九王たちは長テーブルに並べられた椅子に座る。

 九王たちが座ってもなお、保安部員は九王たちの後頭部に銃口を突きつけている。


「それでは、もう一度要求と対価を聞こう」

「はい。私、九王みこねの体とソルレイバーストの情報を差し出す代わりに、戦艦を数隻貸していただきたいのです」

「もし対価が足りないようなら、保管されている俺のオリジナルの肉体も差し出すことはできる」


 九王の発言に、小堀が付け加える。


「まぁ、君たちの身体については後で考える。それ以上に尋ねたいことがあるんだ」


 ローレン艦長は手を組んで、九王たちを真っすぐ見る。


「君たちが先ほど提示したソルレイバーストに関する報告書、あの内容は本当のことかね?」

「はい、全て本当です」


 九王は嘘を吐いた。報告書の内容全てが真実ではない。大部分は九王の直感であり、残りはシュートリヒが九王の主張に沿うように適宜修正している。真実なのは、ソルレイバーストが何らかの方法で現宇宙に干渉してきていることだけだ。


「そうか……。我々の観測範囲内から、ソルレイバーストは予測不能な現象だと結論付けているが、そのあたりはどうなんだね?」

「私たちも直接制御することは不可能です。しかし間接的ならば、ソルレイバーストを誘発する方法があります」

「なんと、そんな方法があるのか……」


 ローレン艦長は少し驚き、腕を組む。


「うーむ。地球残存人類遺産と思って甘く見ていたが、どうやらそうではないようだな……」

「そう思っていただけてなによりです。そして先の主張を逆説的に言えば、この方法をしなければソルレイバーストの回数は減るということも付け加えておきます」

「うむぅ……」


 ローレン艦長は納得している様子だ。だが同時に眉をひそめているようだ。


「しかし、報告書にも書かれていたが、その方法というのは心霊現象を観測することなのだろう?」

「えぇ、その通りです」

「心霊現象が発生しなければ、ソルレイバーストは発生せず、真空崩壊が起こる可能性も下がる……。なんとも奇妙な主張だが、受け入れるほかあるまい」


 ローレン艦長は、手を机に置いて、少し体を乗り出す。


「それで、バーストを無力化する方法はないのかね? 我々が知りたいのはそこなのだが」

「その方法は報告書に記載していませんでしたね。簡単に言えば、地球上にある加速器を使用して余剰次元への扉をこじ開けるという方法です」


 九王は、本格的な交渉が始まる予感がした。

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