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オカルト・アポカリプス~人類なき後の地球における心霊現象の発生について~  作者: 紫 和春


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第39話 謎が見えました

 シュートリヒは拳銃を腰に戻し、タブレットを取り出す。


「それで? ソルレイバーストのデータが欲しいのか?」

「えぇ。小堀さんが受け取ったデータよりも詳しいものが欲しいです」

「俺がいて正解だったな。俺は地上におけるソルレイバーストの観測を優先的に調査するように指示されたんだ。生データだが、誰よりもソルレイバーストに関する数値を持っている」


 そういってシュートリヒは、タブレットの画面にデータを表示する。生データなだけあって、表計算ソフトに数字だけが書かれた、目が痛くなるようなデータである。


「必要ならグラフくらいは書くが……」

「いえ、必要ありません。その代わり、私にタブレットを貸してください」


 シュートリヒは九王にタブレットを渡す。

 そして九王は、その生データを視覚を使って自身へ取り込んでいく。


「データを映像で取り込んでいるのか」

「ファイル形式が違って取り込めない、なんてことが起きないようにする処置だね」


 小堀の言葉に、ウッマが解説を挟む。


「表の意味は読み取れるな?」

「もちろんです。ちなみにこのデータはいつのものですか?」

「今表示させているのは23日前のものだ。ソルレイバーストが高頻度に発生していた時期になる」

「それだと、ちょうど私たちが心霊現象を観測していた期間と一致していますね」


 シュートリヒに質問する九王。先ほどまで敵対関係にあったとは思えないほどの順応ぶりである。


「この数値、宇宙からのデータですか?」

「いや、俺が地上で観測した。場所は特定できないが、バーストが発生した時の各種数値を取得できる小型の検出器を持参している。そのデータがこれだ」


 九王はタブレットから目をそらさずに、シュートリヒの話を聞く。


「しかし、衛星軌道上にいる母艦からの情報と統合しても、ソルレイバーストが地球重力圏で発生しているのか、地球大気圏で発生しているのか分からない。そしてこのバーストのエネルギーがどこから供給されているのかさっぱりだ」


 その時になると、九王はこの生データを読み取り終わった。


「データの回収が終わりました。波形を計算します」


 そのまま九王は口を開けて、中からユニバーサル端子を引き出す。そしてそれをシュートリヒのタブレットに差し込む。


「あっおい、データの形式分からないんじゃないのかよ?」

「今から解析します。すぐに終わりますよ」


 そんなことを言っている間に、画面に波形が表示される。かなりの高周波振動をしている。


「周波数は一定で2.554ピコメートル。40ミリ秒から900ミリ秒という短い時間でのバーストが頻発しているようです」


 九王が作った計算結果を、小堀、ウッマ、シン、シュートリヒが囲んで見る。


「これは……」

「こうして見てみると、何か爆発のようにも見えるね」

「なんか、モールス信号にも思えるような波形だ」

「仮にモールス信号だとして、意味のある言葉になっているのか?」

「いえ、なっていません」


 九王がきっぱりと否定する。


「じゃあ何もないじゃないか。どうするんだ九王君?」

「ありがたいことに、データを取得してそのヒントが見えました」


 そういって九王は、波形データの座標を少しいじる。

 振幅である縦軸を拡大し、波長である横軸を極端に狭くする。


「ここ、見て下さい。振幅に差があるのが分かりますか?」

「……ん? 何かあるか?」

「いや、確かにあるね。すごい小さい差だけど」


 シンがそのように指摘する。


「さらに補正します」


 九王が波形データに別の線を付け加える。すると、波形の頂点に別の波形が登場する。


「これは……」

「簡単に言えば振幅変調です。ラジオ放送で言うAMラジオです」

「つまり……、何かしらの情報が存在しているのか?」


 小堀が九王に尋ねる。


「その通りです。かなり高精度な分解が必要になりますが、何かしらの信号をキャッチすることができると思います」

「わぁ、割と原始的な方法を使っているな。そこまでして何を伝えたいんだろう?」

「そもそも、そんな方法でしかコミュニケーションを取れない状態ってのはどうなんだ?」


 シンやシュートリヒは色々と考えるが、この波形からはその真意までを読み取ることは出来ない。


「ひとまず、これをフーリエ変換してみます。ラジオと同じ変調をしているのなら、すぐに音声へ変換できると思うのですが……」


 そういって九王は再度計算を行う。


「でもAMラジオで使われている変調方法って、ガンマ線くらいの周波数には対応していないと思うんだけど?」

「だが、俺たちの利用している通信方法の中では一番原始的だ。それに技術レベルで考えれば、このくらいの変換は容易にできるだろう」


 ウッマの疑問に小堀が答える。

 地球人類の技術は現在存在しないのも同然であり、スペーサーは地球人類滅亡時よりも進んだ技術を持っている。そんな状況では、この方式はより原始的な方法に近いと言えるだろう。


「皆さん、復調が完了しました。波形を見る限りでは、おそらく音声だと思うのですが、一応心して聞いてください」


 九王がタブレットからユニバーサル端子を引き抜き、そのように言う。タブレット内には、音声データが作成されていた。


「では、再生します」


 そういってデータを起動する。

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